其の壱拾
注:キリスト教徒の方は読まないほうがいいです。
読んでも怒らないで下さい。
「あー、忌々しい。」
俺とアマが下k・・・いや部活活動中に、アマが電飾に飾られた商店を見てそう言った。
「ん、どうしたんだ?」
「どうもこうも何がX'masよ。
ただの異教の神でしょ。ここは日本、仏教、神教の国よ、忌々しい。」
ようするにクリスマスが気に食わないらしい。
カミツキ! 其の壱拾 「神と神と神」
「ねえ、おかしいと思わない?」
「ん、まあおかしいよな。それはいつも思ってた。」
俺のうちは実は神教徒だ。勿論、日本のだぞ。
しかも打ちはそういう宗教的のことに厳しく、クリスマスなんてもっての他だった。
「やっぱり分かる?」
「俺の家がそういう家だったからな。
それにしても仏教はいいのか?」
先ほどの言葉でそれらしいことを言っていたのを思い出し、ふと訊いてみた。
「まあね、仏さんとは意外と話が弾むんだよね。
あと、多神教のよしみで結構なかのいいとこもあるけど一神教だけは別だね。」
「へぇ、そうなんだ。」
「本当、忌々しい。」
「まあ、帰ろうか。」
家に帰ると玄関の前に一人の男がいた。
灰色の髪の毛をした男・・・頭に耳がある気がするけど気にしないでおこう。
「あ、フェンじゃない。」
「よう、天照。遅いじゃねえか。」
誰、このお兄さん。絶対、人じゃないよな、耳が頭の上にあるし。
「ところでこいつは誰だ?」
「あ、景だよ。今は一応ここに住んでるの。」
「ふむ、そうか。俺はフェンリル。北欧神話で有名な狼だな。」
「は、はぁ。
まあ部屋に入ってください。」
「ふむ、ありがとう。」
今度はフェンリル・・・そのうち交友関係の大半が人外になりそうで怖いな。
リビングでフェンリルさんが口を開いた。
「そうだ天照、顕現したって訊いたからいいに来たんだが今年はキリストのやつ日本に来るらしい。」
え、来るんだ。
「そうね、ずいぶん久しぶりじゃない。
今年こそ決着をつけてやるわ。」
ずいぶん物騒な気がするのだが気のせいだろうか。
「ああ。あと月読はいるか?」
「いるわよ。
連れて来る?」
「頼む。」
「わかったわ。
景、ちょっと連れてきてくれる?」
「俺?」
「そう、連れてきてね。」
「はいはい。」
きっと何を言っても無駄だろう。さっさと呼びに行くか。
鉄製の階段は歩いていてなる音は案外好きな俺はその音を聞きながら階段を下っていく。
「月子さんいますか?」
管理人室のインターホンは壊れているらしい。なので声を上げるしかない。
鉄製の扉は叩いても痛いだけだからな。
「ん、あ、景君か。どうした?」
「実はフェンリルさんが来ていて。」
それだけ言うと彼女は確りと言いたい事に気がついたようだ。
「ふむ、そういえばそんな時期だ。いま君の部屋にいるかな?」
「はい。」
「分かった。失礼するぞ。」
彼女は俺の部屋にくることに決めたようだ。
こういうと彼女はさっさと俺の部屋に行ってしまった。
俺もここにいる必要なんて無いので彼女の後に続く。
「フェンリル、久しぶりだな。」
「そうだな、一年ぶりか。」
ということは月読さんは去年は顕現していたのか。
「で、今年は日本に来るのか?」
「恐らくな。まだしばらく後だと思うがまず間違いなく日本だろう。」
「そうか・・・」
そんなことを話していると・・・
「兄さん!!ゴフッ・・・」
バンッ!とドアが勢いよく開きあまりの勢いでそのドアが戻りお客さんがそれに当たって悶絶していた。
倒れていたのは一人の女性、その手には彼女の背の丈はあるであろう巨大な鎌、物騒な女性だ。でもきっと人じゃないだろうな。
「ハッ、倒れてる場合じゃなかった。
兄さん、浮気ですか!?」
急に起き上がりフェンリルさんのほうを向き叫んだ女性・・・何なんだろうな。
「ヘル、いきなり来て何のつもりだ。」
「だって、私というものがありながら浮気している兄さんを放って置けますか!」
「ヘル、お前は何か勘違いをしている・・・。」
「していません!」
何この痴話喧嘩。
「とにかく。とにかくです。兄さん帰りますよ!」
「え、ちょ・・・」
バンッ!とドアが閉まった。
階段を降りるカン、カン、という音・・・今、悲鳴と一際大きな音がしたのは、落ちたな。
「姉、そろそろ私も帰る。」
「ん、じゃーねー。」
そういって月読さんも帰っていった。
「なあ、アマ。ひとつ聞くが何故、フェンリルさんが生きているんだ?」
「妹のヘルさんが生き返らせたらしいんだけど詳しいことはわかんない。」
「ふぅん、なるほどね。」
それにしても、キリスト・・・やっぱりキリスト教のかな。物騒なことにならなければいいけど。