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カミツキ!  作者: .png
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其の九

―――ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン・・・ごほっ、ごほっ。

昼休みも終わりに近づいた時放送が流れた。

しかし最後に咳き込むような声が聞こえたのは気のせいだ。うん、気のせいだ。先日もチャイムが・・・あれは空耳だったな、うん。


『え〜、二年三組、清浦景君。至急、生徒会室に来てください。

 二年三組、清浦景君。至急、生徒会室へ来てください。』


呼び出された・・・今日活動するのか。今日の午後の授業は出れないかもな。




  カミツキ! 其の九 「生徒会と反生徒会組織」




「景君、来てくれたか。よかった。」


そう生徒会室で言ったのは現生徒会長の渡瀬康祐先輩だ。

俺は結構生徒会の手伝いを何故かさせられているのでこうやってたまに呼び出されている。


「で、今日は何の用ですか?」


「今日はあいつらが動き出しそうらしいんだ。

 うちの諜報人員が捕まえた情報だから信頼もできると思うぞ。」


「またですか・・・」


あいつらって言うのは“反青山高校生徒会組織リトルニューク”っていう組織のことだ。

その目的は生徒会を潰し生徒会に成り代わって学校の指揮を執ろうという組織らしい。でも実際は生徒会選挙に出ても当選しない人が生徒会を妬んで作った組織らしい。

過去にももう数十回は衝突が起きている。


「で、今日はどんなことをすればいいですか?」


過去には前線に出たり裏で情報操作をしていたりもした。


「弓使えるか?今生徒会に準備はしてあるが。」


「ということは前線ですか?」


「いや、今日は後方支援だ。後ろから適当に打っていてくれればいい。」


この衝突・・・闘争はもはやプチ戦争だ。

毎回負傷者は出ているし、死者が出たことはないが重傷者が出たこともあるらしい。


「じゃあ、今日の戦闘場所はどこで?」


「恐らく中庭だな。あそこには小さな林もあるし何しろ諜報人員からの情報だ。」


この学校の中庭は校庭ほどの広さがあるから体育の授業が行われたりもする。と言うかもはや校庭状態にありちょっとした林もあって会長も言うとおり隠れるのにはもってこいなのだ。

でも、毎回思うけど諜報人員ってなんだよ。スパイ活動が学校内で行われてるのか?


「それじゃあ弓とかはそこにあるから屋上に行ってくれるか?」


「分かりました。」




俺は弓の扱いには長けていると思う。なんせ昔から凛のところの道場で習っていたからである。あそこは柔道もやってるが柔道は凛の父親が弓道は凛の母親が教えている。

そんな俺だから生徒会にも頼りにされているのだろう。しかし・・・


「こんなところから狙えるのか?」


今、居るのは学校の四階建て校舎の屋上。要するに五階ぐらいの高さから狙うということだ。それも当たらないぐらいギリギリに。


「景ならできるでしょ。」


屋上で待っていたのは同じく弓を持った凛だった。


「できるって・・・結構風も強いしこれぐらい遠いと流石にきついと思うぞ。」


「でも、景ならできるでしょ。私より巧いんだし。」


確かに凛よりは巧いとは思う。だって俺は弓道しかやってないからな。


「で、矢はどこにあるんだ?俺は矢だけ貰ってないが。」


「ここにあるわよ。」


凛の指差した先にあったのは、ゆうに百本はあるであろう矢。


「これ全部使っていいのか?」


「あ、これは景のね。私のはこっちにあるから。」


そこにはまた矢があった。

それにしても矢って意外と高いんだぞ、安いやつでも六本で一万円を越えた気がする。それを百本って金があるんだな。


「そろそろかしらね。

 景、準備して。」


「ん、分かった。」


そういいさっさと準備をする。

・・・といってもそんなにすることもないんだが。

そんなことを考えながら望遠鏡を覗き見る、四階建ての校舎の屋上からなんだから、もしも草むらに相手が隠れていたら肉眼では見えないから当然だろう。


「景、いたわ。」


「どこだ?」


凛がいち早く見つけたらしい。

矢を番えながら凛に訊く。


「そこのカエデの木、一番東のやつね。

 その下の草むらの中に隠れてるわ。」


「一発入れてみるか?」


勿論、射ち込むということである。


「ちょっと待ってね。

 ・・・あ、会長ですか?」


凛は会長と無線で連絡をし合っている。

その間俺は草むらを確認しておく、逃げられたら困るからな。


「・・・分かりました。

 景、一発射ち込んでいいって会長が言ってたわ。」


「オッケー、一回射ち込んでみる。」


そう言って俺は静かに狙いを定める。風は微風。これぐらいならちょうど相手を脅すぐらいにはちょうどいいだろう。

・・・よし、今だ。


バシュっと矢が風を切る小気味良い音がする。

そして幾らか草むらの葉を切り地面へと突き刺さる。


「----!」


声は聞こえないが隠れていた反生徒会組織のやつが驚いて声を上げた。

その瞬間校舎から生徒会側の前線部隊が飛び出した。

・・・さて、衝突せんそうの始まりだ。




二つの組織がぶつかり合っている。

この衝突はもはやこの学校の行事みたいなもので、誰も気にせずに授業を受けていることだろう。


「なあ、凛。今、射ち込んだら生徒会側にも当たらないか?」


「それもそうよね。」


てなことで今は観戦中。そういえば戦国時代の戦は農民達にとってはいい娯楽だったらしいね。


「あ、あれ会長じゃない?」


「ええ、会長よ。前線に出てるけど。」


危険ではないのだろうか・・・まあいいや怪我も無いようだし。


「でも景、暇じゃないかしら?」


「暇なんだよなぁ・・・

 ちょっくら射ち込むか?」


「それもいいわね。下手したらこっちの人に当たるけど。」


怖いことを言うなよ。実際あるかもしれないが。

すると・・・


―――ガキンッ


すぐ横に矢が飛んできた。

ふと反対側の校舎(この学校は校舎が二つありその間が中庭になっている)にリトルニュークの弓道部隊がいた。


「凛、やるか?」


「やるわよ、勿論。」


そういうと矢をすばやく番え相手の弓に狙いを定める。

対岸との距離は約六十m。当たるかは分からんが、こうしないと相手を無力化できない。

先ほどより狙いが定まらない。それもそうだ。あれだけ小さなものを狙っているんだ、当たる確率のほうが低い。


―――バシュ・・・・・

 ―――バキッ!


成功。矢は寸分狂わず相手の弓に当たった。

一人弓を無くし無力化させることができた。


「さすがじゃない。」


そういう凛は・・・相手に当ててる。一人腕を押さえて蹲ってるし・・・。


―――ヒュン


ん、頬に何かの感触・・・血か。相手の矢が掠ったな。

これはやり返すしかない。

そう思いまた矢を番えた。





終わった・・・。

こっちは矢が半分以上なくなったがそんなに大きな怪我もせず相手を無力化できた。

結果としては弓に当たったのはあの後一度だけ。後は相手を怪我させて終わった。連絡をしたら生徒会の部隊が向こう側に行ったようで弓を失った二人がこっちに向かっているときに後ろから押さえつけ、この戦いは終わった。

ふと下を見るとどうやらそっちの戦いも終わったようだった。





「二人とも、ありがとう。」


そう渡瀬先輩は開口一番に言った。


「この埋め合わせは・・・何がいいかな?

 今回はリスクが高かっただろう。」


「んじゃ、ひとつ。

 明日休んでいいですか?勿論出席扱いで。」


「お安い御用だ。凛さんは?」


「今日のバイト料を貰うわ。」


「うん、分かった。会計に頼んでみるさ。

 これだけでいいか?」


俺達二人は肯定の意を示した。


「今日はありがとう。

 あと、今日はもう帰ってもらっていいぞ。疲れただろう。

 景君にはこれ、治療費だ。」


「え、いいですよ。」


「いいってもってけ。」


頬のことだろう。たいしたことでもないのに。


「では、お言葉に甘えて。」


「よし、もってけ。」


「それじゃあ、さようなら。」


そういって生徒会室を後にした。

早く帰るってアマにはメールでも入れればいいか。

せっかく帰るんだから今日はケーキでも焼いてみようかな。

追憶の方をどうにかしないと・・・。

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