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カミツキ!  作者: .png
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其の八

・・・8:05

こう枕元の時計に書いてある・・・・・


「やばいッ!寝過ごした!!」


コンマ一秒フラットで飛び起きた。


「おい、アマ起きろ!遅刻する!!」


アマの返事は聞かずに俺は準備を始めた。




  カミツキ! 其の八 「東方のバルカン」




「ほい、朝ごはんだけは軽く作ったから急げ。」


「ん、ありがと。」


ん〜、今日は弁当は作れないか。学食か・・・購買か。

―――現在時刻 8:12

もうこんな時間か。急いで朝ごはんを食べなきゃな。




「景〜。先行ってるね!」


「いって来い!」


アマが先に準備が終わって家を出たのが8:16。俺は間に合うか?


「よし、準備終わった。出るか。」


やっと家を出て学校へ向かう。現在時刻は8:18、ギリギリ間に合うか?

学校に向かいながら考える・・・学校へ普段歩いて20分ぐらいだ。走ればギリギリだな。よし、もう少し早く走るか。


アマの後姿が見えてきた。俺のほうが足が速いということだ。


「アマ、急げ!」


「あ、早ッ!」


「頑張れ。」


学校が見えてきた。あと少しだ。


「よし、行くぞ!」


「わわっ」


アマの手を掴みラストスパート、後ろでアマが何か騒いでいるが気にしない。

ん、門が閉まり始めている。急がなくては・・・


もう半分と無い門の隙間に飛び込む。門を閉めていた生徒指導の教師が苦い顔をしていたので少し優越感に浸りながら学校の時計を確認。8:27、ギリギリだ。


「よし、あと少しだな。」


靴を履き替え、階段を駆け上る。アマもそれに倣い急いで教室へと向かう。

ドアを開け席に着く、幸い席がドア付近の席だったのですぐに席に着くことができた。


そのすぐ後チャイムが鳴って伊藤先生が定刻通り教室に現れる。


「おーい、ホームルームはじめるぞ〜。」


相変わらず無気力な声、ちなみに無気力で有名な帰宅部の顧問はこの先生だったりする。

そんな声でHRは始まった。









―――キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン?

何かチャイムの語尾が疑問系になっていたのは空耳であってほしいと願いながら俺は昼休みを迎えた。

・・・さて、今俺は最悪の選択を迫られている。そう、今朝寝坊をしたために弁当が作れなかったのだ。

で、弁当を持っていないものがすることはこの学校では二つある。

1、学食へ行く

2、購買へ行く

この二つだ。しかしこの二つ、両方とも大変危険である。

まず学食。

ここの料理は味付けが大変濃ゆい。そう濃すぎるのだ。

こってりとか言うレベルではない、こってりの五乗・・・いや十乗・・・二十乗はあるかもな。

しかし濃いだけではない薄味もある。しかしそれもさっぱり・・・違うなさっぱりのこれまた二十乗はあるだろう。要するに不味いのだ。だがこれが好きという人もいるらしい、分からん味覚だ。

次は購買。

この学校の購買は料理ができずに一人暮らしをしている者(主に男子)が集まる。

商品には特に問題は無いのだがその者・・・いや獰猛な獣の戦場が購買に出現する。

先日アマがそこを通ることができたのは奇跡・・・じゃないな。


「じゃあ景、私は学食行くからね〜。」


そう言って足早にアマは友人と物好きの巣屈がくしょくへと行ってしまった。ということはあの子は物好きかな?

でも、俺はどうするか・・・去年一度言ったことがあるがあれはおおよそ食べられるものではなかった。しょうがない、購買へ行くとするか。

周りを見渡すと勇がいた、よし。準備もオッケーだな。


「勇、今日購買か?」


「ん、そうだがどうした?

 そうか、今日遅かったな。弁当が無いのか。いいぜ一緒に言ってやる。」


話が早くて助かる。


「じゃあ行くか?」


「おう、早く行こうぜぇ!!」


このとき勇はまだ自分の身に降りかかることを知らなかったのであった、まる。





『おい、そこどけ!』


『このやろっ!』


『氏ね、この!』


『やらないか?』


そんな声の聞こえる購買、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

最後の台詞が聞こえたところをふと見るとそこだけ薔薇が咲き誇っていた、様な気がする。見なければよかった。


「勇、行けるか?」


「え、行けるってそういうこと?」


勇がわずかに狼狽する。今がチャンス。


「それ行け!」


勇の背中を押して人垣の中に投げつける。そのせいで人垣にわずかな隙間が生まれた。


「それっ」


勇に近づきまた背中を押す。するとなんということでしょうまたもや道が生まれました。


それを繰り返すこと数十回・・・


「やっと、着いた。」


ほぼ無傷で購買前にたどり着いた。

どうやら今日は一番乗りだったようで幸い商品も豊富にある。


「これとこれを下さい。」


その中から商品を選びおばさんに差し出す。


「はい、ありがとね〜。」


購買のおばさんはまるで俺たちの裏で起きている出来事が見えていないような笑顔でそう答える。


「んじゃ、俺はこれ三つで。」


ボロボロになりつつも購買へとたどり着いた勇は謎の“お酢味醂醤油パン”なるものを買うようだ。旨いのか?


「毎回それだね、はい。」


毎回買っているのか・・・しかしこのおばさん笑顔を絶やさないな。


「それじゃあ出口はこっちね。」


どうやらこの購買、専用の出口があるらしい。すごいな。

ふと裏を向くと弓道部連中や剣道部連中などは各々それぞれの道具を持ち出して戦っていた。間違えるな戦っていたのだ。

それにしても弓矢は危険だろ。


「あんたたちは早く教室に帰ったほうがいいよ。」


おばさんはそう俺たちに忠告をしながら飛んできた矢を手で払いのけていた。・・・アンタ何者だよ。




教室に戻り買ったパンにかぶりつく。なかなか美味しいな、今度パン焼き機でも買ってみようか。

ふと勇のほうを向くとなんともいえない表情をして“お酢味醂醤油パン”を食べていた・・・、信じられない。


「うわ〜、なにあの蕎麦〜。味がしなかった〜。」


そんなことを言いながらアマが帰ってきた。やはりあの味は口に合わなかったらしい。


「やっぱ興味本位で学食行かずに、景と購買行けばよかったよ〜。」


アマはまだ嘆いている。そんなアマを宥めながら(隣の席だからしょうがない)ふと思った。

アマ連れて購買に行けばモーゼの十戒状態になって物を楽に買えるな、と。

作者はノーマルな男子です。

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