番外編其の壱
「ねえ景。携帯買いにいこ。」
私は同居人の少年、清浦景に聞いてみた。
「ん、持ってなかったのか?」
「持ってないよ。」
持っているわけが無い。この姿で顕現したのは数か月ぐらい前なんだしそもそも顕現なんてここ数百年してなかったし。
最後に顕現したのはいつだったかな、う〜んなんか将軍様が動物を友愛しろってお触れを出したころだった気がする。
まあいつでもいいか。
カミツキ! 番外編其の壱 「彼はなんだかんだで優しい人」
「でも買うにしても保護者はどうするんだ?」
「保護者か〜。」
それは失念していた。確かに保護者の承認がないと駄目だったかな。一応顕現体は高校生なんだしね。
「どうするんだ?」
確かにお父さんを呼べばいいかもしれないけどちょっと面倒だしね・・・。
あ、そうだ。
「月読に頼む。」
「え、月読さんにか?」
「うん。もう一度顕現してもらえばいい訳よ。」
実際は少し難しいかもしれない。
「まあ頼んでみてくるね。」
私はそう言って早速部屋から出て行く。実行は早いほうがいいからね。
そして管理人室の前。早速ドアを叩く。すると
「はーい。ってどうしたの姉?」
私は月読にさっきの話を話した。
その話を聞いた月読は
「ん、いいよ。」
二つ返事で承諾をしてくれた。良い妹を持ったなぁ。
「んじゃ、ちょっと顕現しなおしてくるから待っててね。」
そういうと月読は外に行った。このあたりで顕現しなおせるところ・・・ひとつだけある。たしか月読を祀ってる神社があった気がする。
恐らくそこに行ったんだろうね。さて、私も景のところで報告してこなくちゃ。
階段を上がり(景の部屋は二階にあるからね)景の部屋へと行く。
「景ー、良いって。」
「ん、そうか。で、俺は付いていったほうが良いのか?」
意外と面倒見はいいみたい。もちろん着いてきてもらうつもりだったけどね。
「うん、たぶん月読もお店の場所は知らないと思うから。」
「ふーん、なるほど。」
どうやら付いてきてくれるようだ。もともと暇してたんだから良い暇つぶしになるのかも。
「もう少し待てば月読が来ると思うから、それまで待っててね。」
「おう、分かった。」
さて、私は服でも選ぶかな。
――ピンポーン
来客を知らせるチャイム、月読かな。
「はーい、今行きます。」
「やあ、姉。」
月読・・・だよね。こんな顕現体は今まで見たこと無いなぁ。
格好は30代ぐらいの女性だけどどこか若い感じがする・・・白い髪もどこへやらいまはしっかりとした黒髪だ。
「で、姉準備は良い?」
「うん、いいよ。」
「あと、お店の場所わかんないんだけどさ。」
それは問題ない。案内人がいるから。
「だいじょーぶ、景〜、行くよ〜!」
「分かった〜。」
景が出てきた。どうせ景の描写なんてしても面白くないから省略。
「案内お願いね。」
「ああ。
それと、どちらさまで?」
月読は分かんないだろうね。
「月読、小宮月子だよ。」
「へ、月読さん?」
「正解。じゃ、案内頼むよ。」
「はい。」
きっと景はこう思ってるんだろうな、“神様だしな。”ってね。
さて、買いに行こうっと。
結局私は赤い携帯にした。ちなみに景は黒い携帯、それに銀の線が描かれていてなかなかかっこいい携帯だ。
景は私が携帯を選んでいた間、なにやらパソコンのほうに行っていて帰ってきたときにはなにやら大きな箱を持っていた。どうやら一台新しく買ってきたらしい。
月読はお店に来たその足で神社へと顕現しなおすために戻っていった。帰りの道順は覚えたらしい。
その夜。
「おーい、アマ来てー。」
私が部屋で新しい携帯を弄っているとリビングのほうから景の呼ぶ声がした。
「わかったー、今行くねー。」
何だろう、特にこれといった用事もない気がするが行ってみた。
するとそこには買ってきたパソコンを設置している景がいた。彼は機械に強いらしい、こういう事もすべて一人でこなせるらしいし。
「アマ、一応自分のユーザー作っとくか、パソコン使うだろ?」
「うん、でもやり方が分かんないよ。」
パソコンなんて触れたことも無かった、今までは景の部屋にしかなかったようだし。第一、私が前、顕現したときは動物友愛のころだったからそんなものも無かった。
「手伝ってやるから。そうすればお前も使えるだろ。」
「うん、ありがと。」
なんだかんだで彼は面倒見もいいし、機転も利く。彼は結構優しいんだと思った一日だった。
ご覧の通り天音視点です。初めてだなぁ・・・
こんなこと言ってるけどけっしてフラグはたちませんからねっ!