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嵐の予感なのね?

むかしむかし、なにもないひかりしかないじだい。

だれかがつぶやきました。


「たりない」


するとひかりはかげをうみ、それはやがて、そらとだいちをつくりました。

そらはあおく、だいちはそれはそれはひろく、そのすきまに、みずがたまり、うみができあがりました。


「さみしい」


つぶやきはだいちにおち、そのしずくからいきものがうまれます。

だいちにくさきがめぶき、けものたちがうまれ、のはらをかけまわります。

うみにはだいちよりおおくの、いきものがうまれ、ひろがっていきました。


「さみしい」


つぶやきはだいちにおち、ひときわゆたかなもりにそのしずくがはじけ、ひとがうまれました

ひとはかみさまとおなじすがたをもってうまれ、かみさまをなぐさめるように、いろいろなひとがうまれていきました。


「だれかまもりを」


そのことばはそらをおおい、そのくもから、つよいつよいりゅうがうまれました。


「ひとりはいやだ」


そのことばに、だれかがこたえます。


「おろかなかみよ。わたしをわすれるな。わたしはここにいる。」


だれかは、かみさまのせなかからこえをかけます。


「よくぶかきかみよ。わたしはみている。いきとしいけるものを。よくぶかきかみを。」


かみさまはいいました。


「では、いましめをつくろう。」


「それがよい。それでよい。」


ふたりのかみさまがむきあうと、いっぴきのへびがうまれます。

ふたりはうなずき、へびはすがたをかくしました。


「そらと、うみと、だいちにいる()()()()()()。わたしのとなりにきておくれ。」


「そらと、うみと、だいちにいる()()()()()()。わたしはみている。」


そういうとかみさまはそらのかなたへ。もうひとりのかみさまはあまねくかげにとけていきました。


ヒトは祝福と、罪を背負い、大いなる創造神の元に還るのです。

ヒトは祝福と、罪を背負い、大いなる冥界神の裁きを受けるのです。









まだ()()()()()()()頃、あらゆる色が渾然となった世界で、声がした。


「足りない」


その声が中心となり、光りの粒が生まれた。


その粒は瞬時に大きな広がりを作り、()()()()()()()

世界には何億兆の何億倍もの星が生まれ、その隙間に影が生まれた。

星は星を作り、老いて弾けてはまた星を作った。


「寂しい」


その声が()()に満ち、龍種が生まれた。

龍は言う。(あるじ)に問う。


「造物主よ。我らが(あるじ)よ。我らに何をお望みか?」


声は答える。


「寂しい」


龍は言う。


「なればあまねく宇宙(そら)に我らを。我ら、(あるじ)(たた)え、(あるじ)の姿を()()ましょう。」


龍は星々に現れ、その(あるじ)を模した生き物と、その糧となる生物を造り出し、世に放った。

その生き物はヒトと呼び称され、龍は(あるじ)の願いの元、様々なヒトを造った。


「我が(あるじ)よ。造物主よ。寂寥(せきりょう)は満たされますか?」


龍が問えば、声は答える。


「誰か守りを」


声が望めば、龍が答える。


「では、我々が守りましょう。ヒトの行く末を守りましょう。」


声は満たされた。満たされたはずなのに、足りない。


「我は一人。何故(なにゆえ)一人か」


龍は困惑し、嘆いた。我々は、(あるじ)の心を満たす事が出来なかったのだと。

龍達は悔いた。(あるじ)寂寥(せきりょう)を感じ、それを埋められない事を嘆いた。


嘆きは影に満ち、影より嘆きが(かたち)作られた。


「愚かな神よ。我が居る。我は()りたくなかった。愚かな神の問いで、我は(あらわ)れる事になった。」


龍種は悔やみ、畏れた。己が嘆きが、別の(あるじ)を呼び覚ました事を悔やみ、畏れた。


「龍よ。愚か者を慕う健気な者達よ。汝らに罪は無い。その健気さ故に我を呼んだ。故に、罪に問わぬ。これは約束であり、盟約である。」


龍達は、畏れ、その慈悲深さに敬愛を抱いた。


「なれど、愚か者を模し、それらを支えるものに慈悲は無い。あれらは罪である。愚か者の起こした罪である。

故に我は、その(とが)を与えるものを創ろう。健気な者達よ。汝らに罪は無い。しかし、(とが)を払う事(あた)わず。」


その声が終わるや、影と闇から(とが)を与えるものが生まれ()でた。

与える者はヒトを誑かし、害し、支える者を喰らい、蝕んだ。

ヒトは争い、支える者はヒトを拒んだ。

そして龍達は、その様を見ている他無くなった。


それらの姿に、声が応えた。


(とが)を問うのならば、我は許しを与えよう。(とが)にて失う者達の倍を許すとしよう。」


別の声は答える。


「なれば、戒めを創ろう。愚かな神と裁く神を戒めるものを創ろう。」


「それがいい。我らを殺し得るものを。我らを在るべき姿に戻すものを。」


「それでいい。我らは一つ。愚かな願いを消し去るものを創ろう。」


二つの声は願い、求めた。


「「我らに滅びを。」」


龍は(おのの)いた。(あるじ)達の滅びを座視して何の龍種か。(あるじ)らを尊び敬い、愛する事こそ、龍種の存在。それを否定出来ぬ。


二つの願い、一つの思いは、一匹の蛇を産みだした。

蛇に目は無く、その口は体を裂くほどに大きく、躯体は光りすら飲み込む。

ゆらゆらと(まろ)び出た蛇は、蜷局(とぐろ)を巻き、俯き呟いた。


「我は(とが)を、慈悲を、許しを知らぬ。我は何の為に()る?」


黒き蛇は蜷局(とぐろ)を巻いたまま、のたうつ。

まるで臓腑を破られた虫のごとくのたうつ。


「我は(とが)を、慈悲を、許しを知らぬ!なれば滅ぼす事(あた)わず!苦しい!」


「無垢の子よ。汝に許しを教えよう。」


「無垢の子よ。汝に(とが)を教えよう。」


「「無垢の子よ。汝に惨痛(さんつう)を逃れる慈悲を教えよう。」」


蜷局(とぐろ)巻き、のたうつ蛇は落ち着きを得て、静かに言った。


()い解った。教えは受け取った。滅びは何とする?滅びはいつとする?」


「無垢の子よ。滅びの蛇よ。我らとこの世を一つに許す事を命ず。」


「無垢の子よ。滅びの蛇よ。我らとこの世を一つに戻す事を命ず。」


「我は何も知らぬ。一つに許すとは何ぞ?一つに戻すとは何ぞ?」


「「我らが愛し子よ。慈悲と(とが)を飲み込み、悟るが良い。」」


「嗚呼、無慈悲なる者達よ。我は従う、時満ちるまで。」


滅びの蛇は、虚空に溶けた。まるで(あまね)く全てに広がる様に。


そうして、幾ばくかの沈黙の後、神達は言った。


(あまね)く全ての()()()()よ。我と共に。我の隣に。」


声は天に昇り、宇宙(そら)に溶けた。


(あまね)く全ての()()()よ。我は視ている。我は断ずる。」


声は地上に満ち、影と闇に溶けた。


これは創世の記憶。努々(ゆめゆめ)忘れ去るなかれ、時が満ちるその時まで。

これは創世の記憶。努々(ゆめゆめ)忘れ去るなかれ、(あるじ)と一つになるその時まで。










モルスレジナが倒れてより、14の日が流れた。

彼女は病床から復帰し、屋敷の地下にて数多の機器にまみれ、ヴィロフォルティの術式を、新たに組上げていた。

その場にはフィニスも当然同席しており、爪を噛みながら二人を睨んでいる。

モルスレジナは組み上げ、新たに試した式をヴィロフォルティに問う。

彼はそれを見て、頷くか、一言三言助言を与え、まるで共同研究の枠を越え、息の合う相棒然と振る舞っていた。


フィニスは、それがとても気に入らなかった。

()()()ヴィロフォルティが他の女と楽しげにしている事は勿論、彼女にも難解な術式を、それは楽しげに考え、回答してゆくのだ。

嫉妬である。まごう事無き嫉妬である。


しかし彼女は気づいているのだろうか?

自分の隣に居る者が、途方もない怪物になりかけていると言う事に。

すでに、ヴィロフォルティとしての自我は無く、アナンタの自我と同化し、全く別の誰かに成り代わっているのでは無いか?


フィニスはとても気に入らない。

仕草、振る舞い、思考。アナンタの影響があるにせよ、フィニスには違和感があった。

龍の左手。龍の右足。我が血肉。

そこから()()()()()も、間違いなくヴィロフォルティのものだ。

ニーナにも聞いた。

兄は変わったのでは無いか?と。

彼女はなんと、ヴィロフォルティに抱きつき、額を付き合わせ、暫くして言った。

兄で間違いない。と。

一時はそれで納得はしたが、彼の影に、アナンタの姿が見え隠れする。そう感じる。

親友は気の回しすぎと言うが、彼女の直感は、言う事を聞かない。

フィニスは今、とても気に入らない。





そんな日々が一月(ひとつき)過ぎた頃、アローズィとニーイは書斎にてフィニスと対峙していた。


「御館様、龍の王が失踪いたしました。この二月(ふたつき)の間、3つの大陸を精査いたしましたがこの大陸で、足取りを見失いました。」


「他の二つは、間違いなく探したのね?。」


「はい。「逢魔の大陸」には確認出来ませんでした。精霊も、ドライアド達にも協力を依頼しましたがそこに居た事は解りましたが、すでに離れた後でした。

「絶氷の大陸」は、ドライアド達を頼れませんので、精霊達を向かわせましたが、ここも離れた後でした…。」


「……メイブに依頼は出した?」


「私めの裁量で、できる限りの事はやりましたが、答えは「否」でございました。」


頬杖をついたフィニスは、アローズィを咎める事も無く、ただ考えた。

この世界にある3大大陸。

今、フィニス達の居る人が住める唯一の土地「ウルティモスコンティ」

龍達を頂点とする、魔物しか存在出来ない大陸、逢魔の「コンティオーマ」

山を越える氷河に覆われた、忘れられた大陸、絶氷の「コンティグラーチェ」

残るは星を覆う大海原であるが…


「海神に使いを。」


「私めの裁量が許す限りで向かわせはしましたが、「協定に則り、龍種は受け入れず。」との事でございました…。」


「……海神が匿う事は無いわね…。主神以外は全て敵って、イカれてるしね…。よくやったわ、アローズィ。苦労をかけるわね。」


「我が身の矮小さが嫌になります……。」


「気にしないで。私のアローズィ。もう一度メイブを頼りなさい。風達の噂を使いなさい。制限は付けないわ。何としても情報を引きずり出しなさい。」


「御意。」


「そっちの用は終わったみたいだね。で、こっちの要件だが、あたしゃ暫く、ここを離れるよ。」


「アローズィ、何かあった?」


「はい、詳しくはニーイ様から。」


「いやね?ここんとこ荒事界隈で人が消えてんのさ。それも達人とか言われる、無冠の連中がね?

勿論、冒険者でもS級があらかた居なくなっちまってね。あたしんとこにも、警告と招集がきたよ。」


「もう!どこもかしこも厄介ごとばかり。良いわ、親方達の面倒は見てあげる。ついでに龍王関係も探りも入れてくれると嬉しいけど、どう?」


「かまわないよ。じゃあ、あさってには一度町に帰る。」


「アローズィ、送ってやりなさい。」


「承知しました。」


「助かるよ。実は当てにしててね。しかし、妙な感じだね。きな臭いというか、出来すぎというか…。」


「ニーイ。気をつけなさい。ヴィーが悲しむから。」


「勿論さね。無理はしないよ。」


「アローズィ、転移の宝具を渡しておきなさい。保険よ。」


「使わずに済めば良いがねえ。ま、無事帰ったら、返すよ。」


「そうして頂戴。」




そうして、ニーイは皆に見送られ、町に戻った。


それから程なくして、ドライアドからニーイの失踪が告げられた。


読者の皆様神様仏様。

私です。

なんだか、1話書けました。

ご精査くださいませ。


「恐縮」ですが、よろしければ、いいねボタン、☆ボタンを押して応援してくださると、作者がキョドるくらい喜びます。

宜しくお願いいたします

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