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招かれざる客よ!

「こんにちは。そろそろ顔を出しても良いかい?」


 そんな声をかけられた。

見れば屋敷の段差に、あぐらをかき、一人のくたびれた男が座っている。

上半身は裸で、下は布地の余る大きなズボンを纏い腰に帯剣していた。


「あんまり大事になってたから、声かけそびれてな。それに厄介な()もいたし、勘弁してくれ。」


飄々とその男は悪びれた風も無く言う。

敵意は無い。が、この騒動と混乱の中、結界すら張られている屋敷にどう入り込んできたのか。


「モルスレジナ。ニーナを連れて屋敷へ。アローズィ。お客様よ。」


フィニスはそう言うが、最大限警戒している声音だった。


「お客様というか、手合わせに来たんだ。死合いだよ。そこの女龍人がフィニスさんかい?その覇気と威容、良いねぇ。最高だな。」


「お客様。まずは先触れを頂きませんと、主人が困ります。御用なら、私が承りませば、まずは剣を手放してくださいますか。」


 剣を腰にアローズィが前に出る。


「良いねぇ。お嬢さんも良いねぇ。その剣は刀かい?奇遇だねぇ、俺も刀使いなんだよ。だから、その殺気は仕舞っちゃくれねぇか?」


「お戯れを。招かれざる御仁に対処致しますのは、私めの務めでもありますので。」


「解ったから。こっそりお邪魔したのは悪かったと思ってる。でも、()()が居るとは思わなかったんだよ。俺まで出てきたら、事が大きくなりそうだったもんで、つい、な。ほら。」


 男は刀を外し左脇に遠く置いた。そして両手を挙げて、笑ってみせる。


()()のお客様のお相手は、今はお断りしてございます。また後日にお越し下さいませ。」


殺気と警戒を解かないアローズィ。その手は刀の柄に手を添えられている。この見知らぬ男から龍人の気配がするのはともかく、得物がどこに置いてあろうと、男はそれを使う事が出来るだろう。そう思えたからだ。


 そこにヴィロフォルティが進み出た。フィニスは止めようかと迷ったが、彼の好きにさせてやる事にした。アローズィは彼が進み出るのを止めようとするが、男の動きが気になり手が出せず、不測の事態に備える事にした。

そしてヴィロフォルティは言う。


「おじさん。あなたの相手は、僕だよ。」


「ほお!坊主か!ありゃあ見事な龍人化だった!……ん?坊主は人か……いや、綺麗に混ざってんなぁ。こりゃすげぇ!!初めて見た。こんな綺麗な混ざり方してるんなら、さぞかし強いんだろう?その剣もかなり痛んじゃいるが、業モンだな!坊主とも死合いてぇなぁ!!」


「見ての通り、僕は大剣使いだ。でもこんな有様で死合って満足できる?」


「ははっ!知恵もまわる!坊主!気に入った!!是非とも死合ってくれ。で、だ。そこのお嬢さんは話を聞いてくれなさそうだから、坊主に頼む。死合いの日まで、ちっと養っちゃくれねぇか?寝る場所と飯さえもらえりゃ、軒下でも良い。どうだ?」


片手で腹を押さえ、拝み倒すその様はなんとも滑稽だが、それに惑わされる皆では無かった。

しかしヴィロフォルティはフィニスの方を見た。


「……ふう。仕方ないわね……。条件付きよ。3食ベッド付きでヴィーの指南をして貰うわ。」


「死合う相手から、剣を教わろうってか?姐さんも言うねぇ……。ははっ!面白そうだ。坊主はどうだ?俺に剣を教えさせちゃくれねぇか?その大剣の代わりの準備もいるだろう?」


「おじさんの剣筋が僕に合うかは解らない。でも、おじさんの雰囲気は師匠達と同じか、それ以上だ。是非教えてほしい。フィニス?良いかな?」


「ヴィーがそう言うなら、良いわ。アローズィ、メイド達に案内させて。」


「助かる!!もう3月(みつき)以上まともな飯にありついてねぇんだ。人の作る飯は最高だからな!!」


「焼いて塩かけるくらい出来ないの!?」


「ああ?俺は料理ってのが解らなくてな?何をどうしたらあんなうまいもんが作れるのか。人ってのはあなどれんわ!」


 呵々と笑う男に、アローズィは毒気を抜かれたのか刀を納め、指を鳴らす。

屋敷からメイドの一人がやってきて、彼女のそばに侍る。


「お客様。突然の来訪にてたいした部屋は用意できませんが、この子に案内させます。こちらへ。」


「すまんすまん。恩に着る。坊主もありがとうな!姐さんとはいつ死合いさせてくれるか?」


「ヴィー次第よ。」


「そうか。じゃあ坊主、存分に鍛えてやっから、覚悟しとけ。」


底抜けに明るく言い、メイドについて行く男。

(いぶか)しげに見送るアローズィに、フィニスはため息を一つ。


「ヴィー。モルスレジナのところに行くわよ。あなたの変化を確認しておかないとね。アローズィ。あの男のことは、今はまだ警戒しなくて良いわ。人化を解かない龍人に刀、覚えがあるわ。」


「ご存じなのですか?」


「剣術馬鹿の龍人がいてね。それを思い出したわ。」


 フィニスはヴィロフォルティの側に近づき、大剣ごとその体を抱き上げる。

彼は顔を赤くするものの、特に抵抗もせずなすがままにされる。


「疲れたでしょ?このまま連れて行ってあげる。剣は後でダニス達に見せましょう。そろそろ新しい剣も出来上がる頃よ。」





 その日の館は、3カ所で大騒ぎがあった。

食堂では人化を解かない龍人の男が、いつぞやのヴィロフォルティのごとく食べ漁り、普段声を荒げる事の無いアローズィが、怒鳴り散らした場面があった。

ただ、男は出される料理その全てに惜しみない賛辞を送り、メイドや料理人からはそれなりの評価を受けたようだ。


 もう一つは離れに設えた工房で、ダニスが悲鳴を上げ膝を折り、フェロが館に居るヴィロフォルティに事の次第を問い詰めんと押しかけた。その光景をニーイが大笑いし、癇癪を起こした二人と屋敷の玄関前で大喧嘩した。


 そして最後が館の地階にある工房だった。

すっかり様変わりした魔方陣を見たモルスレジナが悲鳴に近い叫びを上げ、フィニス達を驚かせ、奇声を上げながら魔方陣の周りで踊り狂い、制御卓に行っては、その結果にまた奇声を上げた。

呆れ果てながらフィニスはヴィロフォルティを繭に入れ、奇声を上げてはしゃぎ回るモルスレジナを魔法で椅子に拘束する。

当の彼女は抗議すらせず、そのまま制御卓の前で()()()()()を見ながら唸りだした。


 龍人の来襲に異界の者達との戦い。大神と龍王の来訪にヴィロフォルティの変化。

そんな世界を変えるかもしれない出来事の後には、只々、普通の営みが待っていた。





 それから幾日かして、()に入れられているヴィロフォルティは、3人の美女に見つめられていた。

一人は礼拝服のような服を着込み、以外と胸部と臀部の主張が激しいモルスレジナ。

一人は体のラインがはっきりとした執事服に身を包み、男装の麗人かと思いきや、女性らしい部位の主張もしっかりとされているアローズィ。

最後の一人は、まるで夜会にでも行くかの如く、それでいて扇情的に胸部と背中の開いたドレスを着込んだフィニス。脚部のスリットは、ふしだらなまでに切れ込んでいる。


 そんな3人に見つめられ、それなりに年頃のヴィロフォルティが何も感じないわけも無く、両の腕で前を押さえ、足を折り曲げできるだけ見られないようにしていた。


「なんでみんなそんな格好なの!?」


「あら?あたしはいつも通りよ?それより二人は何でそんなに体の線が出てるのよ。」


「御館様、私めはいつも通りでございます。」


「ん~。ここの食事はおいしくて太ってきたかもね~。」


「「絶対嘘よ!!(です!!)」」


「フィニスが一番いやらしいよ!!」


 ヴィロフォルティにダメ出しを喰らうが、そんな事は意に介さず、さらにアピールをするフィニス。

二人は寄り合い、何か恨めしそうにフィニスを見ながら話し合っている。


「どお?ヴィー。さすがにあたしの方が綺麗でしょ?()()()しちゃうでしょ?」


「ねえアローズィ?フィニスの体は自由に変えられるの?」


「いいえ。元の龍の体が基本になり、それが人化の時にそれに相応しい体となるのです。ですが……。」


「反則よね!」「反則ですね!」


その言葉にさらに胸を張るフィニス。豊満すぎるその胸部は限界まで反らされ、見えてはいけない薄桜色の何かが見えてしまいそうだ。


「フィニスのばかぁ!!見えちゃう見えちゃう!!」


ヴィロフォルティは目をつむる事しか出来ない。背を向けたくても、()の中では体を自由に動かせないのだ。

水の中に居るようで、両の手足を使わないと安定しない。しかし、この手足だけは死守せねばならない。あられも無い姿を見られる事だけは避けなければならないのだ。

そして目を閉じれば、皆の話し声がより明瞭に聞こえてくる。衣擦れの音が聞こえてくる。

下手をすれば吐息すら聞こえてくるのだ。それまでにこの体は、変化していた。


「ヴィーのお尻綺麗……。」


「ねぇねぇ!こっちこっち!」


「わぁ!ヴィーのお尻の3241宇hリウ!」「御館様。それだけはいけません!」


女三人で姦しいとは、傭兵団の団長の言葉だったか。

もはや諦観の念さえ浮かべて、ヴィロフォルティは()をたゆたう。

一体何故こうなったのか。

そもそもの話は、自分の変化を確認するという事とだった。無理な龍人化と()()()()よりの帰還がどう影響しているか解らないから。と。

いつも以上に扇情的なフィニスに連れられて来てみれば、あれよあれよと服を脱がされ、()に押し込められた。

それから何故かアローズィまでやって来てこの騒ぎだ。

いっそこのまま眠ってしまおうかとも思うが、この三人を前にしてそんな事をすれば、事態はさらに悪化するだろう。今、ここから出されるわけには行かないのだ。彼の羞恥心的に。

手詰まりだ。


 その時、右に左に、前に後ろに動きまくる気配を感じながら、彼にはひときわ重い気配を持つ者が、この地階にやってくるのが解った。


「フィニス!」


「なぁに?ヴィー。」


彼の裸体にメロメロで、言葉を聞いてくれそうに無い。


 そこにくたびれた男が、龍人がやって来た。


「うおっ!?淫魔が三人も居やがる!どうなってんだこの屋敷。」

読者の皆様神様仏様。

私です。


ゴールデンなんちゃらです。終わりましたが。

私の仕事は通常通り。


後、ページ下にある星かいいねをクリックしてもらえると

私が泣いて喜ぶか、落ち込むかします。

お好きな時に、お好きな個数をクリックしてくださいませ。

ブクマなんてしてもらえたら、挙動不審になります。事案です。

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