閑話その四よ!
「あれで宜しかったのですか?」
龍人の国、その玉座に子供が座っている。その前に立つ龍王は、口を開いた。
「まあ、良いんじゃないかな。フィニスちゃんを口説けるとは思ってなかったし、シャミ君は予想以上だったよ。モルスレジナちゃんも良い仕事するよね。」
「それが解りませぬ。何故人間ごときに……。」
「龍王ちゃん。龍族全体に言えるけど、多種族をおとしめるのは悪い癖だよ?僕はそういう風に君たちを創って無いはずなんだけどね。」
「しかしながら、彼奴らの歴史を鑑みるに、些か無軌道に過ぎます。」
そう反論する。叱責は覚悟の上だ。彼には到底人間種族達を自分たちと同等に扱うなど出来なかった。
「まあまあ、そう言わないでよ。人は真に自由に創ったからね。役目を与えた君たちには申し訳ないと思ってるんだ。そんな君たちからすれば、人は無作法に見えるよね。だからといって、見下す理由にはならないんだよ?
でもまあ、そこまで君たちを縛る事も無いから、今のところそのままで良いかな。」
「ご高配、痛み入ります。」
「でもねぇ……。今回の事は、どうにも許せる気分にならないんだよねぇ……。」
その一言で、玉座が物理的に凍る。
その場に居る龍人達が一斉に震え始めた。
「……何卒、何卒同族達にお慈悲を賜りますよう、この命にかけて請い願います……。」
龍王は跪き、頭を床に擦り付けんばかりに垂れる。
「……。解るかな?混沌に中心を創られると、とてもとても厄介なんだ。新しい実存が世俗的な感情で生まれたら、他の存在との摺り合わせがとてもとてもとても難しくなるんだよ。そりゃ、高尚な実存が生まれるのは好ましいけど、それだって世俗的なものだしね。
それを君たちは蔑ろにしかけたんだよ。
……。ま、今回は許すって言ったし、これ以上蒸し返すのも、気の毒だね。」
玉座の氷は一瞬にして存在を無くし、龍人達の気持ちも、自身に関係なく平常に戻った。
それを感じて、さらに子供への畏怖を深くする。
玉座に居る存在は、すべてを意のままに出来るのだと、痛感させらる。
「無礼を承知で上奏致します。あの女狐とヴィロフォルティなる人族はそれほどまでに大神の御意志をかけるもの達なのですか?」
「そうだね。君たちが嫉妬するのも解るよ。実はフィニスちゃんに一回、いや、今回で二回目か。フラれちゃったんだよね。
あの子はもう、上位存在と言っても良い、良い子に育ったよ。そりゃお転婆だけど、それは僕たちも同じだしね。
あの子の存在率が大きすぎて、世界が不安定になるんだよね。だから早々にこっちに来て欲しいんだ。要は世界の不文律で縛っちゃいたいんだよ。無軌道に色々するから、あの娘。
シャミくんに関しては、君たちにも秘密だよ。君たちに対して秘密を作るのは良くないけど、こればかりは、ね。ごめんね。」
「謝罪など、我々には不要にございます!我々は大神の御意志に従うものです!」
「君たちのその忠誠は、ほんとに有り難いよ。でも、僕のお人形じゃ無いんだから、フィニスちゃんみたいに、もっと自由に生きて良いんだよ?不文律を破らない限りはね。」
そういたずらに言い、軽く笑う。
それを好ましく思うのは、創られた故かはたまた自身の思いか、龍人達には解らなかった。
「それじゃあ、本当に還ろうかな。あ、最後に龍王ちゃん?」
「如何なされましたか?我が主よ。」
そこで子供の雰囲気が一変する。
今までの気配が、まるで嘘のように消え去り、膝をつかざるを得ない重厚感が皆を襲う。
「龍王よ。其方の魂、我に捧げてはくれぬか?」
「……元より龍王と成ったその時より、我が身は、我が魂は主のものでございます。」
「すまぬ。すまぬ。我が子を生け贄にするかの如きこの身の不徳を恨んでくれ。それを以て、今回の騒動は収まるであろう。」
「一つお願いがございます。」
「如何様にも。」
「我が魂はどうなるでしょう?」
「愛しい我が子よ。最愛成る種よ。その魂は次代へと紡がれる。龍の本分、破壊と創造を司る事になる。」
「身に余る光栄でございます。」
「おぬしの天寿を全うさせてやれない、この我が身を呪っておくれ。恨んでおくれ。」
「我が主よ。我が魂を捧げる事が我が天寿。怨讐など持ち様がございませぬ。」
「……。そうか。では我は往く。我の愛し子よ。幾末永く息災であれ。」
その言葉と莫大な神気を残し、子供は消え失せた。否、最初からそこに居なかった。
龍王はその玉座に座り、神気を纏う。それはあまりにも暖かく、自然、涙がこぼれた。
「宰相。次代の王を決めねばならぬ。より気高く、より聡い者を選ぶが良い。そして王は我が種皆で決めるのだ。お前達が王を戴冠するのだ。」
「王よ……。宜しいのですか……?」
「我は礎となる。我が主から選ばれたのだ。これ以上の誉れをお前は知っているか?」
宰相は何も言えなかった。言う言葉が見当たらなかった。
龍王は自然と考える。
確かに理不尽だ。生け贄となれなど、理不尽極まりない。己が生はこの為かと恨み言でも言うべきであろうか。
しかし残された神気には、ただ、我が子を思う愛おしさしか無かった。
これが大神の思惑であったとしても、それを拒む理由が、彼には思いつかなかった。
「あの女狐めは言ったな。最後は我であると。成れば魂のすべてで以て、相対するとしよう。例え敗れる事が解りきっていようと、我が全霊で以て、相手しよう。」
そう独りごちれば、玉座より立ち上がり、宣言する。
『我が同胞よ!偉大なる我が種族よ!これより次代の王の選定を始める!!その力は勿論、より深い叡智と何より慈しみを持つ者こそが、次の王に相応しい!!』
はっきりとした覚悟と意思を秘めて、今代の龍王は言う。
『この時より選王の儀を始める!!』
そう叫び、彼は玉座を降りた。
その姿に龍人達は深く頭を垂れ、歩き去る彼を送る。
「さて、宰相。かなり鈍っているのでな。とびきりの猛者を見繕ってくれ。」
そう言い残し、彼は王の間を去った。
読者の皆様神様仏様。
私です。
ゴールデンなんちゃらです。
ですので閑話です。
分からないですよね。私にも分かりません。
くすくす。
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