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閑話その三よ!

「ニーナとお兄ちゃん、どっちが強いの?」


 それはアーの何気ない一言で始まった。

 

 ヴィロフォルティがアローズィと共に、訓練と称した拷問を受けている間、フィニスの執務室ではアーとウーム、そしてニーナが茶菓子を食べていた。

そこでアーは、ふと思ってしまったのだ。


 ヴィロフォルティは人の身でありながら、フィニスの血肉を授かった。

今の彼はそこらの龍族なら、単体で()()出来る能力を持っている。

殺すのならば簡単だ。彼はその技術を習得している。


 ニーナは復活の手段として、フィニスの血肉から蘇った。膂力はエンシェントドラゴンを一殴りで無力化出来る。

その気になれば、素手で龍人すら屠れるだろう。


授かった者と蘇った者。

変質した者と血肉を受け継いだ者。


はたしてどちらがフィニスの血統に連なるのか。その強さを色濃く受け継ぐのはどちらなのか。


 と、まあ難しく言ってはいるが、アーは単純に気になったのだ。

再会時に平手で装備込みのヴィロフォルティを張り飛ばす膂力は、ドラゴンの血を疼かせたから。


「アーは無茶を言う。お兄さんはニーナと勝負なんてしない。」


「そうだよねー。でもウームは気にならない?」


「気にしても意味が無い。お兄さんがそれを望まない。」


「むー!!ウームは面白くない!!」


 むくれるアーにウームは取り付く島もない。腕を組んで睨むアーに静かに紅茶を飲むウーム。


 ウームとて興味は有る。だがそれを確かめようとするのは、ヴィロフォルティの妹への溺愛ぶりから無理だと思っているのだ。


「それにお兄さんは不老不死だよ?持久戦になれば、お兄さんが勝つ。どちらにしても勝負にならない。」


「……あ、それもそっか。あー!!気になるー!そうだよ!急所をやられたら負けにしたら!?」


「だから…、お兄さんはニーナに手を上げないから勝負にならないって…。」


「そっかー……。きになるぅー!気になる気になる気になるー!!フィニス様ー!!どっちが強いんですかー!!」


 とうとうフィニスに答えを聞き始めるアー。

ウームは溜息をつくが、それはそれで気にはなるのだ。ちらちらとアーとフィニスに視線を送っている。

当のフィニスは羊皮紙とわら半紙の束から顔を上げ、三人を見た。


 キラキラした眼をしたアー。無関心を装いながら、気にしているウーム。そしてニーナと言えば、お菓子を、それは幸せそうに食べていた。


 その光景は、フィニスの心を温かくする。同時に自分にも、こんな感情があるのかと、少し驚いた。


「お前はどう思うの?アー。」


「あたしですか?ん~。お兄ちゃんは無茶苦茶強いけど、あの痛い剣を持ってるからだと思うんだ。でもニーナはフィニス様の分身みたいなものでしょ?フィニス様と同じ事が出来ると思うんだ。

でもお兄ちゃんもフィニス様の血を分けて貰ってるし…わぁ~!!わかんない!!」


「ニーナの力はフィニス様の力。でも、ニーナにはそれを十分に発揮出来る素養が無い。お兄さんはニーナに無い、戦う技術がある。それにヒトの技と奸智は侮れない。ニーナにはそれが足りない。」


 そこで初めて、幸せなお菓子空間から脱したニーナが話しに加わった。


「あたしはお兄ちゃんと、そういうことはしたくないな。それにお兄ちゃんはもっと凄いんだよ。」


「僕の予測通りだけれど、もっと凄いというのは、納得出来ない。」


「えー!ニーナの方が凄いはずだよ!あ~でも、なんとなく解るような気がするかな~。」


アーは腕を組み、考える。

まあ、考えている振りなのだが。


「お兄ちゃんはね。やると決めたら、何だってしようとするんだよ。どんなに時間が掛かっても、どんなに難しくても、必ずしようとするんだ。出来なかったことが多いけどね。」


 そう言ってカップを両手で持ち、くぴくぴと喉を潤す。

その様子を見ていたフィニスは、答えを言った。

実際には、もう少し皆のやりとりを見ていたい気はするが、ニーナの言葉が全てだろう。


「今の時点で、勝者はニーナよ。ヴィロフォルティには、まだ足りない物がある。

アー、ウーム。あたし達龍族が理不尽と呼ばれる意味は?」


「……絶対勝てない力は無敵って事?」


「お兄さんはフィニス様の血肉を持ってはいるけど、まだヒトの業に縛られている。ニーナはそもそもフィニス様そのものだよ?その気になれば、フィニス様の理不尽さと同じ事が出来るはずなんだ。」


「そう。ヴィーにはまだ、ヒトの枷が外れてない。ニーナはそもそもヒトを超えて復活しているからね。今のままでは、ヴィーはニーナを超えられない。」


「じゃあ、お兄ちゃんは弱いの?」


「今は、まだ。ね。」


「うんんん?それじゃあ、お兄ちゃんはフィニス様の旦那様になれないって事なの?」

 

 いきなりの発言である。

フィニスは暫し固まった。まさかそう繋げてくるとは思わなかったのである。


「だってだってフィニス様は自分より強い奴が好きなんでしょ?だったら旦那様になれないじゃん?」


慌てて言いつくろうが、言い訳になっていない言い訳であわあわするアー。


「アーは失礼すぎる。お兄さんはフィニス様の夫になる。それは間違いない。只時間が……。」


そこまで言って、自分も失言したことに気づくウーム。


「お兄ちゃんはお姉様の旦那様になります!。間違いないです!。」


あわあわと助け船を出すニーナ。


 三者三様の慌てざまに毒気を抜かれたフィニスは、苦笑した。

何とも可愛い三人だ。


 言いようのない気持ちが、フィニスの中に溢れる。それに自分にも、こんな感情があるのは、とても嬉しい。


「みんな、こちらに来て。」


 フィニスは椅子を立ち、三人を呼んだ。

皆はおずおずとフィニスに近寄るが、どこか遠慮と怯えが見える。

それがまた、フィニスをして温かい気持ちにさせる。


これが愛おしさか。


自分の気持ちにようよう気づいたフィニスは、三人を攫うように抱きしめた。

突然の抱擁に戸惑う三人だが、気づけば笑顔でフィニスに抱きついていた。


「皆良い子に育ったわ。大好きよ!」


その言葉に三人は笑みを深くする。


「あたしもフィニス様大好き!!」


「……僕も負けてない。」


「お姉様は世界一です!大好きです!」


 世辞では無い、幼子の素直な気持ち。

それはとても新鮮で、彼女の目尻には今まで浮かんだことの無い、熱い何かが溢れる。


「皆、あたしは幸せよ。」


 そう言うと三人に向き合い、答えを言った。


「アーの質問の答えはね、ヴィーはいずれ、あたしを超えて強くなる。素敵な旦那様になるのよ!」


 その答えに、アーは飛び上がって驚き、ウームはしたり顔で頷く。

ニーナはそれは幸せそうに、再度、フィニスに抱きついた。


「もう一度言うわ。みんな。あたしは幸せよ!大好き!」


読者の皆様神様仏様。

明けました。おめでとうございました。

私です。


久々の更新は閑話にしました。

いま、いろいろ書き溜めているところなのですよ。

毎日見てくれる方。有り難うございます。

アクセスを確認して、来てくれているのを見ると、ありがたい気持ちがいっぱいです。

初めて見てくれる、読者の方々。アクセス数が増えていると嬉しいと共に何故?と思ってしまう作者は小心者です。

さてもさても、こんな風にお話は進むのです。

ほのぼの少なめでお送りしておりますが、一段落付いたら、本編でもほのぼのしていきたいです。

これからも長のお付き合いの程、何卒宜しくお願い致します。

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