表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/72

半分本気よ!

 四人の背にかけられた声の主は、フィニスだった。

傍らにはニーナも一緒にいる。


「そこの三人は初めましてね。あたしがフィニスよ。」


傲岸不遜な笑顔で、皆を見下ろす。覇気と龍気を漂わせてはいるが、龍王の居城で見せていたそれとは全く異なっていた。

そのままでは、只の龍人としか見えない。いや、ヒトの姿をしている分、余計にそうは見えない。

困惑している三人を横目にヴィロフォルティの隣に立つ。


「この姿じゃ変かしら?」


自分の出で立ちを気にするフィニスにヴィロフォルティは言った。


「多分、雰囲気を押さえすぎてるんだよ。」


「いやいやちょっと待っておくれよ。どう見てもヒトが龍気を纏ってるだけにしか見えないんだけど、本当にあのフィニスなのかい?」


堪らずニーイが口を出す。


「別嬪さんなのは解るが、ピンとこんのう。悪いが龍人化して貰えんか?」


フィニスは暫し考えた後、皆に外に出るよう促した。


「ここじゃ狭すぎるわ。それに一人うずうずしてるのがいるしね。」


そう言うと彼女は、ヴィロフォルティ達を連れて作業場を出た。


 外に出るとフィニスは、幾重にも結界を張り、最後に一言唱えた。


「龍滅魔法、断絶牢獄。」


辺りを見回し、出来を確かめるフィニス。多少は納得がいったのか、腕を組み皆を見る。


「これで少しはましかしら?今から龍人化するけど、半分だけ本気になってあげる。ヴィロフォルティとニーナは大丈夫だと思うけど、気をしっかり持ちなさい。」


ヴィロフォルティはニーナの肩を抱き、引き寄せる。三人は身構えた。


「始めるわよ。」


言うなり龍気が辺りに溢れかえる。

衣装を破り捨て、全裸になったフィニスの体に変化が現れる。


まるで龍気が可視化したかのように白い帯となって、フィニスの体を包む。

纏わり付くように白い帯が体に触れる度、そこに龍の鱗が現れる。それらは彼女の四肢を包み、異形の鎧の様な形状を作り出す。

帯は体全体を包み込み、やがて四散するとそこに、龍人とも異形ともつかぬ姿が現れた。


 体のフォルムはそのままに、ヒトの姿から2倍近くに膨れ上がった姿。

指先は五指全てにナイフ状の爪があり、出し入れをして感触を確かめている。

足の鉤爪は大きく深く、大地を穿ち、特に顕著な変化はその尾に有った。

優に身長を超える長い尾の先には、幾つものナイフと槍を組み合わせたような形状をしている。

それはゆらゆらと動き、まるでそれ単体で獲物を探しているかのようだ。

異形を思わせるその頭部は、龍人の特徴の一つである角がなく、突起のない鎧兜を思わせる、ぬめりとした形状。その口元には牙がずらりと並んでいる。

漆黒に陽光を反射させるその巨体が動く度、質量を持ったかのような龍気が、辺りを震わせる。


 ヴィロフォルティとニーナはその姿に見惚れ、フィロは目を剥き固まり、ダニスは腰を抜かしたように座り込んでいる。

ニーイは知らず知らず、斧を構え身体強化を行い、臨戦態勢だ。


 龍人と化したフィニスはニーイの方に顔を向け、軽く指先で誘う。

瞬間、ニーイはフィニスに肉薄しており、振りかぶった戦斧をその頭部に叩き付ける。

しかして戦斧はその尾に弾かれ、ニーイは衝撃をそのままに、体を入れ替える。

地に足を付ければ、弾かれたように再度近づき、戦斧を振るう。

その度に尾はそれを弾き、いなし、切っ先を近づけさせない。


「身体強化!極!」


ニーイがそう叫べばその姿は揺らぎ、打撃音だけが辺りに満ちる。

フィニスは尾だけではなく、腕も使い、見えない影をやり過ごす。

そこから一歩も動く事なく、ニーイの猛攻を受ける。轟音が辺りを満たす。


「獲った!!」


ニーイの言葉とともに、フィニスのその首に戦斧が切り込まれた。

しかして、その切っ先はフィニスの鱗に阻まれ、傷一つ付ける事が出来ないでいた。


 身体強化が切れたからか、ニーイの体から力が抜け、フィニスの巨体から墜ちそうになる彼女を、フィニスは優しく受け止め、地に降ろす。

早く、浅く、激しい呼吸を繰り返すニーイにフィニスは膝をつき、声を掛けた。


『今のはすごく良かったわ。得物が違えば、違った結果になっていたかもね。』


「馬鹿弟子の、仇をと、思ったんだ、けどね。得物も、そうだけど、格が、違うね。」


そう言うと、呼吸を整える。数回も繰り返せば、呼吸は落ち着き、ニーイは目の前の龍人に言う。


「事ある毎に、あんたは優しいとヴィーは言っていたが、ありがとうよ。最後の一太刀は、わざとだろ?」


『ヴィーを育ててくれた事と、練り上げきった技への褒美よ。ヒトの身では最上の結果ね。』


「全く・・・・・。馬鹿弟子も大それた事を考えたもんだ。」


『龍の形態なら、あなたでもあたしに傷を負わせる事は出来るわ。』


「本気を出させない時点で、あたしらの負けだよ。龍人とは何度かやり合ったけど、手も足も出ないなんて、あんただけだ。」


『技だけでは、得物だけではあたしの命に届かないわ。一番あたしの命に近づいたのはアローズィだけよ。』


ニーイは肩をすくめ、立ち上がるとダニスの方に向かった。そうして彼に手を貸し、立ち上げるとダニスとフェロに言った。


「あの大剣では、フィニスに届かない。新造しな。それから馬鹿旦那。あたしの斧も同じように作くっとくれ?負けっぱなしは性に合わない。」


二人は先の戦いに当てられたのか、声が出せない。口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返す。


 ヴィロフォルティとニーイはフィニスに近づき、ニーイはフィニスに飛びついた。

それを片手で抱き上げるとニーイは堰を切ったようにまくし立てた。


「お姉様!すごいです!格好良いです!強いです!」


フィニスははしゃぐニーイの髪を撫でつけた。


『あなたもそのうち、龍人化出来るようになるかもね。』


ニーナを降ろすとヴィロフォルティの方に顔を向け、手招きする。


『そろそろ時間がないわ。結界がもたない。最後にヴィー。殺す気でかかってきなさい。一分よ。』


そう言われ、即座に身体強化を使う。瞬時にフェロの側に行き大剣を手に取る。

そして龍化。


大剣を正眼に構えると、ニーイがフェロをひったくる様に連れて行く。

大剣を振りかぶり、破裂音をさせるのと、彼がフィニスの前に立つのは同時だった。

振り下ろした剣の重さの慣性を、移動に使ったのだ。勿論、身体強化のおかげもある。

ただ、その刃はフィニスの尾で、剣の腹を叩かれ彼女に届く事は無い。

それでもヴィロフォルティは剣筋を崩す事無く、大剣を横に構え腕を添え、刃をその尾に立て、撫で切る。

火花が激しく飛び、フィニスの尾は押される。

そこに彼女の膝がヴィロフォルティの腹を襲う。


「身体強化極!」


彼の体がぶれるのと、フィニスの回し蹴りが轟音を立てるのは、同時だった。

見れば彼は彼女の横に居り、彼女の鉤爪が大剣の刃に食い込もうとしている。

更に彼の体がぶれ、彼女はその反対側に手刀を見舞う。そして尾の追撃も彼を襲う。

姿を現した彼は手刀を逆手に持った剣の腹で止め、尾を片手で掴んでいた。


「龍滅術!三式!刻!」


逆手に持った剣を肘で支えると、その形で突きの連続。

端から見れば、力の入れようのないその構えだが、剣の重さとその技量で無数の大剣が生まれた。

フィニスはそれを爪でいなし、彼の掴んでいる尾を一層強く振る。

彼は尾や、型に固執する事無く、尾を手放し、半歩下がり瞬時に大剣を正手に持ち替える。


「龍滅術八式!剔!」


更に突き。


今度は、体重が乗っている為か、彼女は爪では無く、手でそれをいなした。

いなすだけで無く、尾や足も使ってヴィロフォルティを襲う。

彼は突きの点を、急所では無く関節に絞って放っている。しかも突いたその先で、剣を抉るように回している。

フィニスの体から火花が飛び、良く見れば鱗に深い傷が出来ている。

対するヴィロフォルティも体中から血を流していた。しかし彼には、それは織り込み済みの事だった。

関節や、急所さえやられなければそれでいい。


ヴィロフォルティの剣の猛攻に、少し焦れたのか、フィニスの体がブレる。

瞬間、ヴィロフォルティは前に飛び出し、後ろを向き正眼に構えた。

彼のいた場所にはフィニスの尾と、手刀が繰り出されており、数瞬でも遅れれば、それらは彼の体を貫いていただろう。


「龍滅術零式!虚!」


鍔の辺りに魔方陣が描かれる。


更にフィニスの体がぶれる。そして、その姿が消えた。

ヴィロフォルティはその場に立ち、大剣を盾にするかのように振る。

徐々にその剣筋は見えなくなり、甲高い金属音がし始める。併せて赤い霧が、彼の周りに生まれる。

魔方陣はフィニスの猛攻に集中が出来ないのか、それとも彼の術が拙いのか、なかなか完成しない。


そして一際響く轟音。


彼の体は、数百歩ほど吹き飛ばされ、地面を転がっていく。

転がりながらも、轟音は続き、フィニスの姿は見えない。

転がり、止まった先で彼は飛び上がり、破裂音と共に大剣を振る。

魔方陣は完成されており、大剣の刃は赤く輝いていた。


『まあまあ、ね。』


大剣が宙に止まると、フィニスの姿が現れる。

剣は片手で、しかも指でその刃を掴まれ、ヴィロフォルティごと宙に縫い止めている。

そして彼の腹にはフィニスの尾が突き刺さっていた。


読者の皆様神様仏様。

私です。


 ようやっと更新出来ました。

フィニスの戦闘はとてもスムーズに書けました。

多分、フィニスが焦れてるんだと思います。

でももう少し説明回が続くんじゃよ・・・。ごめんよ邪龍様。


 さてもブクマして下さる皆様。

評価していただいた皆様。

ちらとでも見て下さる皆様。

本当に、本当に、ありがとうございます。

皆様のアクセスが、本作の支えでございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ