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乗ってやるわよ!

 館にドワーフの三人が訪れた。ニーナも一緒だ。

迎え出たのは執事服の男性。彼は恭しく3人に礼をした。


「お出向き頂き誠にありがとうございます。ニーナ様、フェロ様、ニーイ様、ダニス様。代理のセルベにございます。」


「嬢ちゃんはどうした?あの子と呑む酒を楽しみにしてきたんじゃが。」


三人の中でも、一際老いたドワーフ、フェロが言う。


「ただ今、アローズィ様は重要なお務めを為されております。フェロ様にはお詫びとしてあの方より、格別にご用意したしました品がございまして、是非ともご堪能頂きたいとの事でございます。」


「なら良いわい。」


「師匠・・・呑み友達に会いに連れてきたのかよ・・・。」


「阿呆。それは儂の用件じゃ。お前にはしっかりやって貰いたい事があるわい。じゃからお前は暫く断酒せい。女も禁止じゃ。」


「それはあんまりじゃ無いか!?師匠!?女はともかく!」


「ダニス。あたしじゃ満足出来ないってかい?」


「ニーイさん?満足って何ですか?」


途端に顔が赤くなる二人。その様子にフェロが呵々と笑う。


「全く、し様も無い若造達じゃ。ニーナや、そのくらいにしときなさい。」


「よく分からないけど、分かりました。」


セルベは一歩身を引くと、4人に手招きをした。


「ニーナ様はフィニス様がお待ちです。お三方は、私についてきて頂けますよう。ヴィロフォルティ様がお待ちです。」




「お姉様。ニーナです。」

 重厚なドアを前に、ニーナは問いかける。

「入って頂戴。」

その重厚な扉をなんとか開き、体一人分位開けたところで、ニーナは体をねじ込ませた。


 そこにはフィニスが執務椅子に座っており、いつもと変わらぬ笑顔を見せている。

じかし、ニーナにはそこに違和感を感じた。

いつも自信に満ち、不遜な顔で微笑む彼女。それがニーナの知っている笑顔だった。


今日のフィニスには、それが無かった。


「お姉様。如何なさいましたか?」


「ニーナ。こっちに来て?」


ゆるりと手招きをするフィニス。ニーナはゆっくり彼女の元に歩む。何かあるのだろうか。

いつものフィニスではない。


「お加減が悪いのですか?」


執務机を回り込み近づいてみれば、フィニスは膝をポンポンと叩き、座るよう促す。


「いつも通りよ?たまには抱っこさせて?」


そう言われても、彼女の膝に座るのは憚られる。何とも言えない顔で、フィニスを見るニーナ。


 フィニスは躊躇うニーナの脇に手を入れ、抱きかかえると、無理やり膝の上に座らせた。


「村はどう?」

ニーナの両の腕を優しく握り、フィニスが問うた。


「お爺ちゃんやみんなは、良くしてくれてます。あたしでも手伝える事が一杯有って、とても嬉しいです。」


「アーやウーム達は上手くやれてる?」


髪の匂いを嗅ぎながら、フィニスは言う。


「村の人たちは、二人を怖がったりしてません。二人も楽しそうです。・・・・・・お姉様?変ですよ?」


暫しの沈黙の後、フィニスは言う。


「ヴィーの呪いがどんな物か、解ったわ。ニーナ?もう時間が無いの。あなたはヴィーとこの世界と、どちらを選ぶ?」


「・・・よく分かりません。お兄ちゃんに何かあったのですか?」


「このままだとヴィーは世界を滅ぼすわ。消滅させて、魂を輪廻の輪に戻すか、世界の滅びを受け入れるか。どちらを選ぶ?」


暫しの思考の後、ニーナは言う。


「あたしは、お姉様とモルスレジナ様を信じます。お兄ちゃんを信じます。お姉様は、そんな事はさせないと思います。お兄ちゃんは、生きるのを諦めないと思います。」


「でも、世界が滅ぶわ。」


ニーナは顔をフィニスに向け、笑った。


「お兄ちゃんは、そんな事しません。絶対、お姉様を信じると思います。お姉様はお兄ちゃんを殺したりしません。」


フィニスは困ったような、嬉しいような、泣きそうな顔をしながら、ニーナに言った。


「本当に・・・あなたには参るわ。・・・あたしも覚悟が決まったわ。」


ニーナを降ろすと、しゃがみ込み、その目を見て宣言する。


「もう事が動き出してるの。もしもの時には、ヴィーと心中するわ。あなた達を死なせるもんですか。」


ニーナは躊躇いながらも、フィニスの頭を抱きしめた。

それは拙くも優しく、フィニスを包んだ。


「でもお姉様?その時は、あたしも一緒に殺してください。あたし達は家族です。」




 館の地下では、膨大な魔道装置に囲まれ、支援を受けながら二人は術式の球体と格闘していた。

モルスレジナの顔からは表情が消え、アローズィも目に隈を作り、焦燥しきっていた。


「どこまでもどこまでも、忌々しい式で御座いますねぇ・・・。さすが神の御業と言うとこですか。」


作業に切りをつけて、アローズィは茶を用意する。

モルスレジナに差し出すと、それを受け取り、彼女は言う。


「ホットワインが欲しいところね・・・寝ちゃうけど。」


「焼酒でも一滴垂らせば、気持ちも安らぎそうで御座いますね。寝てしまいますが。」


くるくると回る術式を見ながら、二人はそう言ったまま、沈黙する。

個々の術式は解析が終わっている。素のままの相互作用も把握出来ている。

しかし、一度変化が起こるとその規則性は崩れ、相互作用も把握出来ないほど変化する。


「変化の規則性に、何か心当たりは無い?」


疲れた声でモルスレジナが言う。


「魔族の暗号でも、この様な性悪な変化は御座いません。大神は慈愛を司ると聞きますが、大嘘では?」


「全くよ!こんな悪意の塊、見た事無いわ。」


「何が何でも、相手を傷つけるよう仕組まれて御座いますね。」


そこから沈黙が続く。

少し経つと、モルスレジナは目を瞑り、船をこぎ出した。


 アローズィは考える。

慈愛の神を怒らせると、こうまで悪意が満ちる物か。執拗に相手を苦しめる真似をする物だろうか。


彼女は神を信じない。この世に神がいる事は解っているが、頼ろうと思わない。

彼女の世界が龍族に壊された時も、神は何もしなかった。

永い時間をかけ、彼女は龍殺しとなった。それでも神は何もしなかった。

彼女は戯れと称し、人を焼く龍人を殺して回った。

彼女は戯れと称し、親の前で幼龍を焼いた。

それでも神は、何もしなかった。


 彼女を救ったのは、他ならぬ一頭の龍だった。

容易く自分を屠れるくせに、それをせず、幾日にもわたり死闘を続けた。

力尽き、満身創痍の自分に、己も傷だらけの体で寄り添い、話をした。

そうして彼女は、その龍、アビウスカエデスに使える事に決めたのだ。


 疲れからか、昔の事を思い出しながら、自身もうつらうつらしている時に、引っかかる物があった。

直感といって良いそれは、術式の球体を見つめる毎に、確信になっていく。

モルスレジナを見れば、彼女もまた、球体を見つめている。


「ねえ、アローズィは神を信じる?」


「私は、神を信じません。あの存在が何もしない事を信じております。ですが・・・。」


「そうよねぇ。()が何かする事なんて、碌な事じゃ無いわ。でもねぇ・・・。」


二人は黙り込む。


「ヴィーの相手が来るのは何時?」


「早ければ、明後日に来る事でしょう。」


「もう手遅れね・・・。アローズィ?この術式は神罰の術式よね。」


「左様で御座いますね。」


「そもそも神の御業を、術式化出来るのは変じゃない?」


「・・・・・・。私めもそう思い始めて御座いました。」


「そう・・・。同時にそう思うのね・・・。気に入らないし癪だけど、乗らないと事が大きくなるわね。」


モルスレジナは深く大きくため息をつくと、魔道装置の操作盤に手を触れた。


「アローズィ。()()()()()()()()()から手を付けましょう。()()()()()()()()は出来る?」


「多少であれば可能です。ドライアドにメイブと話を付けさせましょう。」


「出来るのね・・・。なんだか()の掌で転がされている気分で嫌だわ。」


「全く業腹で御座います。憤懣やる方ないですが、御館様とヴィー様の為です。」


モルスレジナは球体と向き合い、アローズィはドライアドを呼び出し指示を出すと、二人で意見を戦わせ始めた。




 館にしつらえられた作業場で、フェロとダニスは大剣を見ていた。

音で異常を探り、手触りで歪みを確認する。

ニーイは斧で、ヴィロフォルティは無手で組み手をしており、その成長を確かめている。

一通り感触を確かめた後、ニーイはヴィロフォルティに言った。


「あたしが教えられることはもう何も無いね。正直、こっちが弟子入りしたいくらいだ。」


斧を背に納め、何か吹っ切れた様子だった。


「ニーイ師匠、そんな事ないよ。剣以外でも、知らない事だらけだ。それにアローズィには手も足も出ない。龍人は強い。僕はまだまだなんだ。」


ヴィロフォルティは微笑みながらニーイにそう言う。

彼女は呆れたように肩をすくめ、ヴィロフォルティの側を離れた。

入れ替わる様にフィロとダニスがやってくる。フィロは大剣を肩に担いでいた。


「坊主。剣に異常はないぞい。只、かなり満足はしているがな。」


「ヴィー。この大剣はこれで完成してる。手を入れる余地はもうないぞ。」


そう言う二人にヴィロフォルティは困った顔で答えた。


「最近、剣の声が遠いんだ。アローズィやフィニス相手だと仕方ないけど、龍人相手の時に本当に、微妙に、剣が軽すぎるんだ。」


なんとか不具合を説明しようとするが、微妙に伝わらなくて困り果てる。

ほんの些細な事なのだが、力の入れ方や、型の所作に違和感が出るのだ。


「飾り重しでも付けるかのう。」


フィロはそう言って茶化すが、彼は困った顔をするだけだ。


「すまん。忘れてくれ。しかしそうなると、いよいよ新造せんとならんのう。じゃが、その剣で敵わん相手となると、想像が出来ん。ダニス、ニーイ。お主らはどうじゃ?」


ダニスは首を振る。ニーイは少し考えた後、言った。


「正直、龍人相手が想像の限界だよ。あの馬鹿弟子が生きてりゃねぇ。伝説の邪龍とやり合ったんだ。良いネタをくれたろうに。」


懐かしむように、少し寂しげな顔をするニーイ。


「じゃあ、その伝説とやらを見て貰おうかしら?」


三人の背に、声がかけられた。


読者の皆様神様仏様。

私です。


 なんだか説明回が大杉な気がして仕方有りません。

早いとこヴィーの見せ場を書きたいとは思いますが

どうにも上手く動いてくれないのです。

......引き延ばしとかじゃないですよ?

ホントダヨ(꒪ཫ꒪; )

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