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蹂躙するわよ!

 ある日を境に、人魔双方の領域から、魔物が消えた。

正しくは、人の生活圏に居た魔物達はその姿をどこかに隠した。そして動物達もまた、その姿を消した。

人々はそれを訝しみ、賢い者は厄災の兆候を感じ、身を潜めた。

人魔の支配階級や為政者は、それぞれの伝手から情報を受け取り、備えた。


 そした龍がやって来た。

龍達はわがもの顔で大空を占有し、都市や村を襲った。

襲ったと言うよりは、何かを探しているように見えた。ただ、その巨体は居るだけで破壊を招き、また、運の悪い場所は、その龍に蹂躙された。

ただ蹂躙されたと言っても、致命的に破壊されたわけではなく、何かしらの目的があるように見える。

主に大規模な建物や、目立つ商会などが標的にされているようだ。

人魔の国々の王都等は商会の破壊しか行わず、王城やその他目立つ建物の被害は少なかった。

一部例外はあった。

とある交易都市と、フロントライン。魔領の町が手当たり次第に破壊された。

交易都市は各ギルドや鍛冶屋などが建ち並ぶ区画が破壊された。人々はダンジョンに避難し、人的被害は抑えられた。

フロントラインと魔領の町は商会のある区画を中心に蹂躙され、瓦礫と化した。

フロントラインの近くにある屋敷は破壊し尽くされた。

フロントラインからも見えた山桜は無残にもブレスで焼かれ、台地は廃墟と化した。

人的な被害は少なかったものの、人々はこの厄災に恐怖した。

数こそ少なくなったものの龍達は空を占有し続け、生き物達は、この厄災を恐れた。



 魔領の寒村から、さらに奥にある森の中に、ひときわ大きな館があった。

空から見ても、巨大な木々に見え隠れし、容易に発見できない。その上、軽い隠蔽魔法まで施されている。


 その屋敷の中で、フィニスは立木の小枝を植えた、鉢を大事そうに抱えていた。

その鉢の隅には、まだ幼く見える精霊がちょこんと座っていた。

小枝はアローズィの錬金薬とドライアドの精霊魔法で、根付きはしたが、予断は許さなかった。

そしてその精霊は、ドライアドと意思疎通ができなかった。気持ち的な何かは伝わりはするのだが、まるで異国の者同士が会話できない。そんな風体だった。


「アローズィ、桜を燃やした愚か者は確認できて?」


「片目一本角の赤龍だったので、逐一、追跡して御座います。」


「・・・・・・そいつをここに誘導なさい。アローズィ、そいつを使って”龍殺し”のなんたるかをヴィーに教えなさい。穏便に済ますつもりだったけど、自業自得だけど、そいつだけは許さないわ・・・。」


「承知いたしました。使える手管はすべてヴィー様に見て頂く事とします。」


フィニスは鉢を目線に掲げると、何やら異国の言葉で精霊に話しかける。

すると精霊はその言葉が分かるのか、身振り手振りでフィニスに話しかけた。彼女は幾度も頷き、言葉を紡ぐ。

精霊はほろほろと涙を流し、小枝に抱きつき、眠りについた。


「今のはこの桜の国の言葉よ。ドライアド、あなたはこの子にこちらの言葉を教えてやって頂戴。あたしの大事な物を害した罪を償わせてやる。アローズィ、簡単に殺してはだめよ。」


「心得ております。年月の積み重ねをこうも容易く踏みにじる者に、アローズィは容赦しません。」


深く礼をするアローズィ。


「ヴィー様がお戻りになるまでの間に、下拵えを済ませておきます。御館様、装備を整えることをお許しください。」


フィニスが頷けば、アローズィは踵を返し、部屋から出た。



 それから数日後、装備の点検を終え、ヴィロフォルティが館に帰ってきた。

いつもは出迎えるはずのアローズィの姿はなく、代わりにメイド長が出迎えた。

そうして彼は館の裏にある広場に連れていかれる。


 そこにはドレス姿のフィニスと黒のローブを纏い、帯剣した戦装束のアローズィの姿があった。

彼は二人に近づくと声をかけた。


「一体どうしたの?二人とも。」


「ヴィー。今からあなたには、”龍殺し”とはどういうものかを見てもらうわ。」


フィニスは答え、いつもの雰囲気とは違うアローズィは、ヴィロフォルティに向き合い、告げた。


「今暫くの間、わたしは”龍殺しのアローズィ”となります。ヴィロフォルティには龍を殺すとはいかなる物かを見て、学んでもらいます。一時たりとも気を抜かないように。一挙手一投足全てに気を配りなさい。」


いつもと違う物言い、苛烈な雰囲気。

それはヴィロフォルティの見知ったアローズィとは、全く異なる物だった。

彼はその雰囲気や気配に覚えがあった。

死地に向かう戦士そのものだ。

その目は空を見上げ、何者かを待っているように見えた。


ヴィロフォルティの体に悪寒が走る。何かが来る。

アローズィを見やれば、すでに片刃の剣を斜に構えている。そこに高空から光りが一閃。ゆるりと剣を動かせば閃光はあらぬ方向に曲げられ、やがてその発光源に返される。


「ヴィロフォルティ。これが一の型”応報”です。槍を受け流す感覚に似ています。遠方よりの一閃や至近距離でのそれに対応させるのです。」


そういえば、次は上段に構える。


「二の型”音霧”。」


何かが上空を通過し、その後から音と衝撃が襲う。その軌道の後ろにある木々は舞い上がり、()()()()

アローズィは、それを断ち切った。

元々広範囲にわたる音の衝撃の波が、アローズィを起点としてさらに扇状に広がる。


「次に奴はブレスか、急角度からの音の壁をぶつけるつもりです。」


アローズィはそう言うと、腰を落とし半身に構え、その周りに風が渦巻く。


「三の型”鷹堕とし”を使います。ヴィロフォルティは龍気を使って行いなさい。わたしは風の精霊を使って代用します。」


高空から赤い影が猛烈な勢いで突進してくる。

アローズィを取り巻く風は、剣に集まり、それを下段から振り上げる。竜巻じみた風が巻き起こり、上空に消える。


「ここからは魔力操作と同じ。最適な時期に、今の風をぶつけるのです。」


赤い影がその形を露わにしたところで、彼女は剣を上段から振り下ろす。

すると、赤い龍が降下中に体を崩す。体を上に上げるが、降下は止まらず、そのまま地面に叩きつけられる。


「空を飛ぶには、空気の助けが必要です。いまのは上昇するための空気の流れを下に流したのです。」


赤い影はそのまま地面を転がり、森の木々をなぎ倒し、止まった。


「対巨人、対ドラゴンの戦い方は学びましたね?基本は同じですが、普通こうだろうという考えは捨てなさい。」


そう言うとつかつかと墜ちた龍の方に歩み出す。


「ヴィロフォルティ、ついてきなさい。」


彼が遅れてその後をついて行くと、赤い龍はブレスを放とうとする。

その寸前で、アローズィは()()を投擲した。

それは銀色の軌跡を描きながら、その口に吸い込まれ、ブレスは口の中で四散した。


「龍のブレスもそうですが、何かをしようとする時、必ず初動という物があります。その者が動きやすいリズムと呼ぶ物です。それを半歩ないしは一歩先んずることで、制する事が出来ます。」


ヴィロフォルティは頷く。師匠達から叩き込まれたことだが、その体の性能故に、最近、忘れがちになっていたことだった。


「ヴィロフォルティ。あなたは強くなりすぎた。故に自分が弱いことを忘れています。あの龍はあなたです。如何に自分が無様かを目に焼き付けなさい。」


赤い龍は墜落の衝撃で、未だ自由に体を動かせないのか再生を待ちながら、もがいている。

アローズィが近づいてきているのに気づくと、魔方陣を四枚展開する。


「魔法で足止めして、ブレスを使うようですね。」


それぞれの陣から各属性が展開され、アローズィを襲う。

ただ、発動には時間差があり、その隙を突いて彼女は攻撃を躱す。

端から見る彼女は、それはふらついている様にも見え、ステップを踏んでいる様にも見えた。

ヴィロフォルティは、彼女の動きを真似するが、そのいくつかは剣で払わねばならなかった。


「只ついて来るだけではなく、もっと考えなさい。さて、龍の巨体はそれほど恐ろしくありません。巨体が持つ重さは脅威ですが、その程度です。」


そう言いながら進むアローズィ。


「例えば、(あぎと)。」


言葉と同時に、赤い龍の口がアローズィに迫る。

ヴィロフォルティは反射的に飛び退る。

彼女は何も感じることはなく、目の前に来たその牙に軽く手を触れる。

体を浮かせて腕の長さの分だけ、距離をとりながら押され続ける。


「極至近距離からの噛み付きなどは、このように躱せます。巨龍の姿は出来ることが限られるのです。」


ぽんと体を押し、牙から間合いをとれば、剣がその牙を一閃する。

激痛からか巨大な咆哮を上げ、首が仰け反る。


「そうしてここの首筋がポイントです。この筋を断たれると顎と首の動きが阻害されます。それは体のどの部位でも同じです。良く見て覚えなさい。」


そう言い下顎付近を一閃する。すると龍の動きは一際鈍くなる。

尚も数カ所に刃が通る。


「龍の鱗は刃を通さないと言われますが、工夫すればこの様に。」


後ろに飛び、ヴィロフォルティの隣に位置どりそう告げるアローズィ。


「この剣には細工がしてあります。龍の体組織の動きを阻害するのです。この術式は後で伝えます。必ずモノにするように。」


痛み故か、はたまた憤りからか、龍は悶え苦しみその姿が縮み始める。


「さて、ここからが龍殺しの本番です。あれはこれから人化を始めます。通常はこの前に畳み掛けるのですが、今はあなたの教育を優先します。」


まるで森の獣を狩ることを指導するかのような物腰のアローズィ。

ヴィロフォルティは、彼女に畏怖と恐怖を抱いた。


 彼は龍の姿を見た時、恐怖した。それは初めて戦場に放り出された時以来だった。

今彼は大剣を振るい、その体術も遙か高みにある。

それを持ってしても、敵うかどうか迷わせる何かが、龍にはあった。

なのに彼女はその龍を教材か何かのように扱う。


「ヴィロフォルティ。恐れるのは最もです。それはすべての生物が持つ根源的な恐怖。ですが慣れてしまえば、そんなモノは取るに足らないのです。相手は龍。ですが、極論すれば血を流す只の生き物。血が流れていれば、殺せる相手なのです。」


そう言っている間にも、龍は人化が進み、背中に羽を生やした人影に変わる。

その姿はヴィロフォルティの三倍を超え、正に龍人へと変わる。


「そうだ。試しに戦ってみなさい。その剣ならば、あの程度のモノなら刃が通るでしょう。」


自分は一歩下がり、ヴィロフォルティの背を押す。

彼は躊躇う。果たして自分の技術が、腕が、通用するのか?


「このままではニーナを蹂躙されますよ?わたしがそれを助けるとでも?」


無情に告げるその言葉に、ヴィロフォルティの中で何かが切り替わった。

瞬時に龍化し、無意識に身体強化もかけている。

その足で地面を抉り取りながら、前に駆け出す。龍人は一際大きな咆哮をあげ、ヴィロフォルティへと突進する。


 突きの構えをとりながら、彼は龍人の振り下ろす腕を剣の陰に隠れていなす。そして刃を当て、撫で切る。

が、それは火花をあげ、そのうろこに傷を付けるのみとなった。


「違う!刃の立て方がまるでなっていない!何を学んできた!?」


アローズィの叱責が飛ぶ。同時に龍人の尾が、彼を襲う。

破裂音を伴う彼の斬撃はその尾を断ち切ることが出来ず、尾の半ばで刃が止まる。

龍人は裏拳を見舞い、彼はその威力に吹き飛ばされる。

とっさにかばった腕がひしゃげ、肋骨や内臓も持って行かれた。


「まずは一死。無様な相手に無様な戦い方。なんともひどい有様ですね、ヴィロフォルティ。」


腕の骨は再生に時間がかかるが、筋肉は瞬時に再生する。

いつものやり方で腕を使えるようにし、龍人に正眼で相対する。


拳を握り構えをとる龍人に彼は困惑した。

その隙を突かれ、正拳が目の前に繰り出される。咄嗟にその懐に入るが、龍人の二の手が彼を襲う。

剣でそれを防ぐが、轟音とともに彼は突き飛ばされる。

次いでブレスが襲い来る。

ヴィロフォルティは同じくブレスを放つ。それは拮抗しているように見えるが、彼の方がやや押されていた。

それに気づいた彼はブレスから一閃へと切り替える。

それは龍人のブレスを貫くが、難なく躱され、足払いが来る。

思わず後ろに躱すが、その次に龍の尾が彼を強かに打ち付け、吹き飛ばす。


「次いで二死。これ以上無様な戦いを見るのは飽きました。ヴィロフォルティ、下がりなさい。」


吹き上がる殺気に龍人は狙いをアローズィに変え、ヴィロフォルティはそれに慄く。

アローズィは剣を片手に斜に構え、対する龍人はまるで無手で剣を相手にするかのような構えをとる。


「ヴィロフォルティ。あなたの駄目な所はまず体の入れ方からしてなっていません。」


そう言うなり体を縦に剣をその陰に隠し、一足で間合いを詰める。

繰り出される剣を、龍人は払い除けようとするが、その腕は横に切り払われていた。

ついでもう片手を二の腕から切り落とす。

後は止めというところで、アローズィは間合いをとる。


「ヴィロフォルティは対人戦は苦手でしたか?この様に型も動きも三流の相手に何をしているのです?」


いつものアローズィとは信じられない侮蔑の言葉が投げかけられる。


「たかが姿形が人に似ているだけで、その体たらく。()()()には失望しました。」


アローズィに切られた部位の再生に時間がかかるのか、龍人はさらに間合いを取り、こちらを伺う。

彼女は再生を待っているかのように、何もしない。


「龍人とはいえ、ただの人型。やりようはいくらでもあるでしょう。おまえの駄目なところはこういう些細な変化に対応が遅いところです。不死の体に頼りすぎて、動きが非常に宜しくない。」


彼女は蔑んだ目でヴィロフォルティを見る。


「いっそのこと、無様な姿をさらす毎に、妹を打擲してしまいますか。それならおまえも身が入るでしょう。」


その言に彼は激怒する。するが、アローズィの殺気は彼に身動きを許さない。

龍人は切り落とされた片腕を再生している。油断なくアローズィだけを警戒していた。


「あの様におまえは相手にもされていない。人魔最強が聞いて呆れる。これが終われば、一から叩き直してやります。その節穴でこれからの様子をしっかり見て覚えなさい。おまえでも解るようにゆっくりと相手しやる。」


そういう彼女が一歩進むたびに、龍人はにじり下がる。


「龍滅魔法、断絶牢獄。」


結界がヴィロフォルティを含めた皆を取り囲む。

龍人は明らかに狼狽え始めた。


「見なさいヴィロフォルティ。おまえはあんな無様な相手に手も足も出なかった。あまつさえ2回も死んだ。」


彼女は歩みを止めない。


「これからアレを教材にして、おまえがいかに無様か、とくと説明してあげます。」



 それからのアローズィは苛烈で、残酷で、容赦がなかった。

初めの頃こそ龍人はアローズィに向かってきたが、その動きや型を逐一解説され、手足を切られ切り飛ばされては回復させられ、ヴィロフォルティと相手をさせた。

上手く相手できなければ、容赦無くヴィロフォルティの心臓を剣で貫き、その回復速度はいつもの倍は遅く、その間、彼は苦痛に苛まれた。

そうしているうちに龍人は心を折られ、怯え始めた。

二人から逃げ出し、その爪で結界を掻き毟るが、それはびくともしなかった。

アローズィは方針を変え、その龍人を魔法で磔にすると、ヴィロフォルティに龍人とはを説明を始めた。



「龍殺しのアローズィ?ヴィーはどうかしら?」


「今回の事で、ご自身が如何に無力かを知らしめることは出来ました。ですが並以下の龍人でしたら、退けることは出来ます。」


「ということは?」


「龍化と不死性で助けられてはいますが、その技は未だ未熟。」


()()()()()()()ことは伝えた?」


「それは、まだ早う御座います。今のままで並以上の相手が出来なければ、宝の持ち腐れです。」


「先は長そうね・・・。ヴィーは耐えられそう?」


「ヴィー様でしたら、耐えられるかと。できるだけ早く、仕上げてご覧に入れます。」


「アローズィ。随分と昔のあなたに戻ってきたわね。後でニーナ達の所に行ってらっしゃい。」


「・・・・・・。承知致しまして御座います。やはり、心が荒みますね・・・。」


「苦労をかけるわね。」


「そのお言葉だけで、アローズィめは胸が一杯で御座います。」


「ヴィーの様子は?」


「落ち込んではおられますが、心は折れておられません。問題は無いかと。」


「あの愚か者は?」


「都合良く、良い素材と食材となりました。ヴィー様には今日の罰として、食して頂いております。」


「えげつないわね、あなた・・・。まあ、強化に使えるから良しとしましょう。」




 その頃、ヴィロフォルティは考えていた。

アローズィから文字通り叩き込まれた型を反復しながら、大剣に問う。

今までと何が違ったのか。何が剣筋を鈍らせたのか。

教えられた型を、筆でなぞるようにゆっくりとゆっくりと正確に行う。


大剣は言う。全てに呑まれていたと。それは実に不満そうに聞こえた。

確かに今日の彼は、二つの存在に呑まれていた。

アローズィと龍人。

今まで会ってきた中で、戦ってきた中で一際異質だった。

アローズィの全ては龍化した彼の目でも追うのがやっとの動き。

技も体術も自然すぎて、どこに技の始まりが有り、終わりが有るのか。そもそも一連の動作は型なのかどうかも、ヴィロフォルティには解らない。

 

 龍人は、今まで会ってきた亜人達とも、ヒトの師匠達とも違う、全く異質な何かを持っていた。

強いて例えれば、オークやトロルが熟達したヒトの技を使って来たに等しい感覚だった。


[対巨人、対ドラゴンの戦い方は学びましたね?基本は同じですが、普通こうだろうという考えは捨てなさい。]


アローズィの言葉が思い出される。そして思い知らされる。

正にこうだと思っていた。それが打ち壊されたのだ。龍人がそれをやったのだ。


 今日あった一連の出来事を思い返しては、後悔に苛まれる。

何がいけなかったのかを一つ一つ探っていく。今日の自分の行動全てに納得がいかない。

そうしているうちに、一つのことが頭から離れなくなる。


自分はどうしてこうも強さを求めたのか。

妹を蘇らせる為。それは成し遂げた。

家族を守る為。

妹はまだ幼い。全てではないが、人魔から守り切ることは出来る。


だが、フィニスは?アローズィは?

彼女達は頂の見えない雄峰だ。その実力は計り知れない。自分は足手まといだと、嫌というほど思い知らされた。

彼女達を守る事など、今の自分には無理だ。では力を求める意味は?


「ヴィー様。剣筋に迷いと怒りが出て御座います。暫く休憩なされるのが宜しいかと。」


「悩み事が有るなら、遠慮無く言って頂戴?」


剣を止め振り返れば、いつもの執事服に身を包むアローズィと、ナイトガウン姿のフィニスがそこにいた。

呼吸を正し、二人に向き合う。

どう言うべきか、どう伝えるべきか。彼は暫し考える。が、素直に伝えることにした。


「僕は弱い。二人の足下にも及ばない。・・・解らなくなったんだ。どうして強くなろうとしてるのか。」


アローズィは小さくため息をつき、フィニスは少し笑った。


「ヴィー様。本当はいけないのですが、少し訂正を。あなた様は私の足下には来ておられます。でなければそもそも、今日の私に着いてすらこれなかったでしょう。」


「ヴィー、ヴィロフォルティ。こっちに来て?」


彼は従う。従うが、その足取りは重い。

今の無様な自分が、二人に近づいて良いものか。

フィニスは両手を広げ、ヴィロフォルティを迎え入れる。


「剣は置いといて?」


ヴィロフォルティは浅く剣を地面に突き立てると、フィニスの前に立つ。

そんなヴィロフォルティを彼女は抱きしめた。


「ヴィー。あたしのヴィー。初めて会った時のこと覚えてる?」


彼は頷いた。死ぬことだけを考えていた日々。笑うことも、泣くことも、恨むことも忘れ去ったあの日々。


「あの時、あたしの言った事、覚えてる?」


「・・・・・・フィニスの旦那様になる事・・・。」


「そうよ、ヴィー。あたしはあなたが大好き。あなたを誰にも渡さないわ。」


「御館様?私めは?」


「おまえは別よ?ねえ、ヴィー。あなたはあたし達をどう思う?」


読者の皆様神様仏様。

私です。


 ひとまず、一話書く事が出来ました。

更新ペースは落ちますが、これからも

彼ら、彼女らの物語にお付き合い頂けましたら

幸いです。

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