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謁見なのよ?

 ドライアドからの情報を元に、ヴィロフォルティ達は進む。

万魔殿(パンデモニウム)まで後半日の距離まで来たところで、竜車は止まった。

レウィはドライアド謹製の花冠をつけ、魔王軍の動向を確認していた。


「今のところ動きは無いのね?」


万魔殿(パンデモニウム)、魔王軍共に静かです。』


ヴィロフォルティに眼を向ければ、彼は準備を終え、いつでも行動に移る事が出来た。

レウィは頷き、ヴィロフォルティは走り出す。その姿はあっという間に点となり、森に消えていった。



 ヴィロフォルティの心は急いていた。これで召喚できる者を連れて帰れば、妹は甦る。

万魔殿(パンデモニウム)の姿が見えてきた頃、彼は速度を落とし、臨戦態勢に入る。龍化し、大剣に手をかける。


城に尚も近付いてゆくが何か様子がおかしい。千からの軍がいれば、何かしらの生活音や気配がするはずだが、それがまったく無い。


正門の姿が見えてくる頃にには、そこに異様な光景が待っていた。

オークやトロル、ギガント種までもが道沿いに並び、直立不動を保っている。

門の中央には軽装馬車がおり、男が一人立っている。


並び立つ魔物共は生気が無く、皆、白目をむいているか、黒目をしていた。

ヴィロフォルティは走るのを止め、歩いて男に近付く。彼の間合いに近付いた時、止まって様子を伺う。

男は右手を胸に、腰を折り、ヴィロフォルティに礼をする。


「ようこそいらっしゃいました。フィニス様の旦那様。私はセルベと申します。外に居ります無粋な者共はすべて私共が従えております。」


「出迎え有難う。しかし旦那様とは?」


「それは道すがらお答えいたします。ここから当館までは幾分距離がございませば、まずは馬車にお乗りください。」


「この剣は重いんだ。」


「ギガント種ほどでなければ、ご心配に及びません。どうぞ剣をお預けください。私共が貴方様に害をなす事はございません。」


「何に誓う?」


「我が主と、種族の名に誓います。」


にい、と両顎の牙を見せる。


「判った。なら、預けるよ。」


ヴィロフォルティはそう言うと、軽装馬車の荷台に大剣をかける。馬車が軋むが、馬が動じる事は無い。


「ではお乗りください。我が主がお待ちでございます。」


 馬車に数分揺られ、辿り着けば、そこにいはずらりとメイドと揃いの制服を着た召使いが並んでいた。


「少し仰々しくないか?」


ヴィロフォルティが問えば、セルベは答える。


「フィニス様の想い人様となれば、本来は我が主がお迎えに上がるはずでした。しかし、()調()()()()、このような事に。大変お恥ずかしい次第です。」


「いや、俺にはもったいなさ過ぎる。おれはただの使いだよ。」


「それでも。でございます。これは我が主と、私共の親愛の証と、とらえて頂けましたら。」


「判った。フィニスには大事にされたと伝えておく。」


「誠にもったいないお言葉。感謝の極みでございます。主は広間においでです。こちらへ。」


「帯剣しても?」


「それは・・・・・・・。」


「あの剣が無いと収まりが悪いんだ。」


「承知いたしました。()()()()()()()()()()。貴方様を信用いたします。」


「ありがとう。」


そう言うと大剣を背負う。


「この剣が、貴方の主人と、あなた達に向けられる事は無いと、()()()()()()()よ。」


「御高配、深く感謝いたします。」


そう言うと、扉というには余りに巨大なそれを開き、ヴィロフォルティをいざなう。

彼はセルベに続き、城に入っていった。



 長大な廊下を歩き、昇り、ヴィロフォルティの姿は広間にあった。

一段上には、長い黒髪を上品にまとめ、漆黒と銀で刺繍されたドレスを纏った女性が、物憂げに座っている。

セルベは彼を案内すると、その女性の側に立った。


「フィニス様の想い人様。城主のモルスレジナ様にございます。我が主は今、喉を痛めておりりまして、私が代弁させて頂きます。」


「おれはヴィロフォルティという。生れたときから剣を振るしか能がない無学な者だ。どうか非礼は許して欲しい。」


モルスレジナが何事か言う。セルベは顔ごと耳を傾け、その言葉を拾う。


「主は、仰々しい挨拶は不要とのことでございます。ヴィロフォルティ様のあるがままでお話ください。」


そうセルベが言うと、彼女は彼を見上げた。

セルベは涼しい顔で、ヴィロフォルティを見ている。彼女もゆるゆると前を向いた。


「ご配慮に感謝する。用件なんだが・・・。」


そう言えば、モルスレジナはびくりと身を震わせた。


「フィニスから、貴方は魂を呼び戻す事が出来ると聞かされた。時が経った魂でも、可能だろうか?」


再び彼女の言葉を拾うセルベ。そのこめかみがピクリと動いたようにヴィロフォルティには見えた。


「・・・えー。主は可能であると申されております。また、フィニス様よりご依頼も受けておりますので、問題はないかと。」


彼女はセルベを見上げ、袖を引く。


「主はフィニス様と御交友もございます。手助けが出来てうれしいとも仰っておいでです。」


袖を引くしぐさが強くなる。


「呼び戻したいのは俺の妹なんだ。その為に、何でもしてきた。どうか、あの子を呼び戻して欲しい。」


彼女はセルベを見上げ、こちらにも聞こえるくらいの小さな声で、なにやら話している。

ヴィロフォルティはセルベのこめかみに青筋が立ったよう見えた。


「我が主は、ヴィロフォルティ様のそのお気持ちに痛く感銘を受けたようです。是非、手助けをさせていただきたいとの事です。」


セルベの腕を強く引っ張るモルスレジナ。

ヴィロフォルティが次の言葉を言おうとしたとき、彼女がこちらを向いて、何事か言いかける。

その頭をセルベは引っ叩いた。


「痛いじゃない!?」


「ご主人様。セルベは呆れ果てております。なんですか、お客人に対してその言いようは!」


「だって「だってじゃございません。」・・・はい。」


「さあ、ご主人様。小芝居はおしまいです。きちんとお話して頂きます。」


「でm「でもではありません。」・・・はい。」


先ほどの物憂げなしぐさから打って変わり、文字通りしかられた子供のように小さくなり、上目使いにヴィロフォルティを見る。


「・・・・・・。」


「・・・どういう事情か判らないが、妹のために、ここに来た。どうだろう?受けてもらえるだろうか?」


「・・・ふぃ、フィニスから、はな、話は聞いている、るわ。た、魂の、しょ、召喚はだいじょう、ぶ。あ、あたしなら、できる・・・・」


「ならぜひともお願いしたい!!」


思わず声に力が入る。

モルスレジナは椅子の背もたれにしがみつき、距離を取ろうと必死になる。セルベは頭を抱えて溜め息を一つ。


「こ、こえが、お、お、大きすぎる・・・!こわいぃ!だ、だいじょ、じょぶだから・・・!ちゃんと、よび、呼び戻すから・・・!」


「ヴィロフォルティ様。このように、ご主人様は極度の人見知りなのでございます。何卒、ご容赦とご配慮を賜りますよう、お願い申し上げます。」


そう言うと、腰から頭を下げ、彼に許しを乞う。


「こちらも事情を知らずにすまなかった。改めてお願いする。妹を甦らせるのに、力を貸して欲しい。」


そう言うと膝を床に着け、大剣を後ろにおいて座り、両手を床につけ、頭を下げる。


「そ、そこまでしな、しなくても、ちゃんとや、やるわよ・・・。そんな、そんなに、だい、大事な子だったの・・・?」


「俺は妹を守れなかった。あの子はもっと笑って生きるはずだったんだ。あんな死に方で良い訳ない。」


「判ったわ。その仕事、引き受けてあげる。その前に、その腕は?」


打って変わったその言い様に、ヴィロフォルティは顔を上げた。


「これはフィニスがくれt「もっとよく見せて!!」」


それは瞬間移動とも言って良い素晴らしい動きだった。セルベもヴィロフォルティさえ、その動きについていけなかった。

ヴィロフォルティの手を取り、まじまじと見つめる。


「これ・・・小さいけどこの鱗の形と艶・・・・・・。これフィニスの血肉なの?」


「そうd「サンプルを頂戴!!少しの血肉と、そうね!目が欲しいわ!片方だけでいいの!痛ったい!?」」


かなり強く叩かれたのか、モルスレジナの体が揺れる。振り返ればセルベが無表情で立っている。


「ご主人様。私は言いました。お客様に、無礼が無いようにと。この有様は、無礼では、ありませんか?」


ものすごく静かに言葉を紡ぐ。

彼女は正座し、セルベに向き直る。


「・・・・・・ごめんなさい・・・。」


「謝るのは、私ですか?」


今度はヴィロフォルティに向き直り、頭を下げる。


「ごめんなさい。」


その姿にヴィロフォルティは慌てた。


「無礼はお互い様だ。気にしないで。」


そういわれて、モルスレジナはしおしおと席に戻る。


「・・・・・・本当に仲が良いんだな。主従の関係でも、こうあると良いな。」


彼がそう言葉を掛ければ、セルベはすこしうるっと来たのか、彼の手を取り、感謝を告げる。


「お解り頂けますか?ご主人様は私の全てなのです。改めて、主人の無礼をお許しください。」


「気にしてないよ。モルスレジナ様?」


しおしおとした雰囲気はそのままに、彼女は言う。


「呼び捨てでいいわ・・・。凄く興味のあることには、こうなっちゃうの。ごめんなさいね。」


「モルスレジナ。どうせ再生するから、血肉と片目をあげるよ。それから、フィニスからこれを預かってきたんだ。」


「再生って・・・・・・本当に・・・?」


アイテムボックスをまさぐりながら、彼は言う。


「本当だよ。・・・あった。これだ。」


極厚のメダリオンのようなそれを見せた瞬間には、彼女の姿は二人の前にあった。


「転移装置・・・神代遺産じゃない!あの子こんなもの隠してたのね!?」


「これでフィニスのところにいけるって聞いた。どうだ?」


「大丈夫よ!貴方の妹の魂は、現世に戻る事を保障するわ!あ、片目は神経節も貰っていい?」




「フィニス。来たわよ。」


「ようこそおいで下さりました。モルスレジナ様。」


「遅いわよ!あなた、ヴィーに変な事してないでしょうね?」


「してないわよ!血肉と片目は貰ったけど、お蔭で目処がついたわ。」


「ヴィーってば・・・今度よく言い聞かせなきゃ。」


「”器”はどこ?準備は出来てる?場所は空けてある?」


「こちらに。万事、用意してございます。」


「さすがねアローズィ。うちのセルベもあんたのところに弟子入りさせようかしら。」


「モルスレジナ様とセルベ様は、今の在り様が一番かと。」


「いつに無くやる気ね。どうしたの?」


「あの子と約束したの。妹の復活を。」


「それで?」


「あなた、良い子を見つけたわね。」


「でしょ?あたしに相応しい旦那様になるわ!」


「セルベも凄く懐くし、不思議な子。」


「あたしの旦那様よ?不思議でもなんでもないわ。じゃ、初めて頂戴。時間が惜しいわ。」


読者の皆様神様仏様。

私です。

残念な美人に、ポンコツ主人と有能従者。

大好きなので詰め込みました。

モルスレジナは人見知りなだけで、慣れれば普通です。

フィニスは無茶を言うので、嫌がってます。

でも仲良しなのですよ。

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