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プランBかしら?

 出発直前になって、レウィは絶句した。

ドライアド達からヴィロフォルティ宛に連絡が入ったのだ。曰く、万魔殿(パンデモニウム)を経由し、魔王城に進め。と。

ここから7日の距離にそれはあるが、補給線が一切無い。さらに万魔殿(パンデモニウム)から魔王城まで2日かかる。


中途に魔王城下から糧食を運ばせる案もあったが、万が一にも気付かれることは避けたかった。

しかし9日分の補給を積んでの移動は、速度が落ち、それだけで時間がかかる。

馬や走竜での単騎駆けも考えたが、ヴィロフォルティの大剣がそれを許さない。

何より、連絡には日程の指定までされていた。商会の二人は文字通り頭を抱えた。


「僕の分の食料と水は考えなくていいよ。飲まず食わずでも平気だから。」


ヴィロフォルティのその言葉に、彼らは飢餓に強い走竜を選び、走竜に必要な食料と水と塩、それからレウィに必要な最低限以下の食料と水を用意する事になった。

それでも重量はそれなりの物になるが、他に手は無かった。


「アローズィ様の言葉は重過ぎるわ・・・。こんな形で予定の変更は、想定してなかった・・・。」


「我々が甘い、という事なのだろうな。」


人足達に指示を出しながら、二人は溜め息をつく。


「出発は夜になるわね。走竜はスタミナがあるから、多少の無理は利くでしょう。」


「それしかないか・・・。」


二人はそう言うが、ヴィロフォルティが待ったをかける。


「出発は日の出にしよう。焦って飛び出しても、いいこと無いよ。」


「そうは言うけど、かなりきつい行程よ?本当は今すぐ出発して時間を稼ぎたいくらい。」


「僕が走ればその分軽いはずだから、何とかならないかな?半日くらいは平気だよ?」


「貴方にそう言う真似をさせるわけには行かない。」


メルキャトはそう言うが、レウィは違った。


「最大でどのくらい走れる?」


「アローズィ達との組み手は丸一日かけるから、一日走り通しくらいなら、平気かも。」


「速さは?」


「馬と併走できるくらいは。」


「貴方の大剣の重さが減れば、走竜達の負担も減るはずね。悪いけど、それで行きましょう。」


「レウェルティ!?」


メルキャトは慌ててレウィを止めようとするが、彼女は揺らがなかった。


「幸い万魔殿(パンデモニウム)までは道があります。それに、もう手を選んでいる暇はありません。」


しっかりとメルキャトの眼を見てレウィはそう言った。


「・・・・・・俺よりよっぽど剛毅な博打打ちだよ、お前は。・・・解った。ヴィロフォルティ様、本当に宜しいのですか?」


「使える手は何でも使うよ。僕はそうやってきたんだ。」


「一日おきに走ってもらうわ。万魔殿(パンデモニウム)まで2日の距離まできたらそのまま乗っていて頂戴。」


「解った。」


段取りが決まれば、ヴィロフォルティにする事は無い。話を詰める二人を残し、彼はあてがわれた部屋に戻り、朝を待った。


 日の光で、あたりがはっきりとわかる様になる前、彼らは出発した。

2頭立ての竜車の後ろを走りながら、馬より幾分遅いとヴィロフォルティは感じていた。


フィニスやアローズィの、丸一昼夜、集中しながらの死合いに比べれば、朝駆け程度の難易度だ。


そのままひた走り、昼には走竜達を休ませ、星が出そろうまで走らせた。

夜になれば、ヴィロフォルティが寝ずの番をし、夜が明ける前に彼が乗り込み出発する。彼が睡眠を必要とするわけではないが、その時には竜車で睡眠をとった。


それを繰り返しながら、万魔殿(パンデモニウム)まで2日の距離まで来た森の中で、走竜達がバテ始めた。

日中は昼の休憩以外、走り通しなのだ。無理も無かった。その上で、ヴィロフォルティを休ませ、不測の事態に備えさせるために竜車に乗せれば、その重みが枷となり、せっかく稼いだ時間が無駄になりかねない。

その日の夜、レウィはヴィロフォルティと状況の確認をした。


万魔殿(パンデモニウム)まで後二日。今までどおり貴方に走ってもらえば、稼いだ時間は無駄にならない。でも、あそこは別名”死者の王城”。アンデッドや死霊達がひしめいているわ。」


焚き火を囲み、レウィは説明する。


「貴方には万全の体制で、万魔殿(パンデモニウム)に向かって欲しいけど、それだと稼いだ時間は無くなる。悩ましいわ。向こうの状況が判れば何か手が打てると思うのだけど。」


「情報かぁ・・・。」


「ドライアド達に聞ければ、済む話なんだけど、今この場所では無理だし・・・。やっぱり慌てると、色々ヘマをするわね。」


ヴィロフォルティは焚き火を見ながら、出発前の様子を思い出した。

人足達が慌てふためき作業している中、突然立ち木から女性が現れたのだ。

それを見た人足達は、慌てふためき、パニックになった。


「もしかしたら・・・・・・。ドライアド!」


「何でしょうか?ヴィロフォルティ様?」


ヴィロフォルティが叫ぶなり、森の奥から女性が現れる。


「貴方!対価も無しにドライアドを呼び出せたの!?」


その光景にレウィが叫ぶ。凄く釈然としない。なんだか理不尽だ。


「御館様より、ヴィロフォルティ様の手助けを命じられております。対価は頂けません。」


「都合よすぎでしょう・・・・・・。」


レウィはむくれて文句を言う。ドライアドは優しく笑い、ヴィロフォルティの横に立つ。


万魔殿(パンデモニウム)は結界が張られ、それを囲むように魔王の兵が配置されております。その数千。」


「その結界は誰が?兵の配置は?」


「貴方様にお答えする対価は頂いておりません。」


その数字に慌てレウィが問えば、ドライアドは素気無く返した。


「ドライアド、僕からお願いするよ。レウィに答えてあげて。彼女の知恵が僕に必要なんだ。」


「判りました。これよりレウィ様がヴィロフォルティ様と共にある場合のみ、対価を要求いたしません。結界は万魔殿(パンデモニウム)の主の物。兵の配置は、正門に50。後は結界沿いに等間隔で配置されております。」


「ものすごく納得いかないけど、判ったわ。結界と魔王の兵にアンデッドの群れ・・・。どうしても貴方を休ませないと駄目ね。」


爪を噛み、思案顔のレウィにドライアドは言った。


「結界とアンデッドに関しましては、心配無用です。ヴィロフォルティ様に敵対は致しません。魔王の兵のみに注力して頂けます様。」





 「フィニスはああ言ったけど、歓待ってどうすればいいのかしら?」


万魔殿の最奥、錬金の道具と魔導書が乱雑にひしめく中、器用にそれらを避けながら、足まで届く、長らく手入れをされていない長髪に、古ぶるしいローブに猫背の女性は歩き廻る。

万魔殿の主、モルスレジナは言った。


「ご主人様。歓待といえば、総出で出迎え、豪華な食事と、主との歓談と相場は決まっております。」


男は執事服に身を包み、長髪に白い肌。赤い双眸に口元からは牙が見える。


「主人が歓談!?嫌よ!!貴方がやりなさい!」


「ご主人様?フィニス様がそれをお許しになるとでも?」


「ああもう!!判ってるわよ!!判ってるけど、嫌なものは嫌なのよ!!もう!フィニスはいつもこんないぢわるするんだから!!」


「もしもフィニス様からのお客様を歓待できなければ、お仕置きがあるのでは?」


「そう!!フィニスのお仕置きは嫌!!綺麗なドレスを着させて、髪を整えさせて、社交界とか言うところに連れて行かれるの!!みんな着飾って、うふふおほほとか笑うのよ!?どうかしてるわ!!オマケに凄い美男子とかにあたしを紹介するの!!あんなとこ、普通の神経で行くとこじゃないわ!!あたしはそんなとこ行きたくないのに!!」


指を激しくかみながら、そのときのことを思い出したのか、身震いを始める。


「なんでアローズィじゃ駄目なのよ!?もう!!フィニスに繋ぎなさい!!今日こそ文句を言ってやるわ!!」


「もう192回目ですよ?文句を言うのは。結局言えず仕舞いじゃないですか。」


「今日こそは本気よ!!もう絶交してやるんだから!!」


「それはお止めください。ご主人様。数少ないご友人を減らすのは、お止めください。」


「貴方は時々辛らつよね・・・。」


「苦言を呈すのも、従者の務めです。それより、フィニス様よりのお客様は、もう近くまでお越しのようですよ?」


「いやあ!!!なんで来るの!?」


「それはご主人様にご用事があるからですよ。ひとまず無礼にならない程度に準備はしております。」


「何で余計な事するの!?もう会う事確定じゃない!?」


「会わないでどうしますか。」


「そうだ!あたしに似たヴァンピーナが居たわよね!?その子にやらせなさい!」


「そう言うと思って、使いに出してあります。お覚悟召されませ。」


「嫌よ嫌よ!!ここがあたしの城よ!!ここから出ないわよ!!」


「結界まで張って、お客様を拒むのは頂けません。」


執事服の男は指を鳴らす。

すると部屋のあちこちからメイド服を着た少女達が、モルスレジナを取り囲む。


「お前達。ご主人様を万魔殿の主に相応しく飾りなさい。」


「なんでこんなに隠れてるの!?いつから居たの!?」


「こんな事もあろうかと、フィニス様からのご連絡の時より、控えさせておりました。」


「こら!触らないで!!どこ掴んでるの!?止めさせなさい!!」


「お前達。今は非常事態です。ご主人様の為を思うなら、心を鬼になさい。」


少女達は暴れるモルスレジナを器用に裁き、ふわりと持ち上げると入り口に急ぐ。


「憶えてないさい!!必ず仕返ししてやるわ!!」


「お前達、念入りにお清めするように。特に御髪は丁寧に整えるように。」


「裏切り者ー!!!」


その声と共に、部屋の外に運び出されていく。

執事服を着た男は溜め息をつく。


「あの極度の人見知りさえなければ、本当に良い主人なのですが・・・。さて、結界を開かなければなりませんね。ああ、入り口の掃除もしないと。」


そう言うと、彼も部屋を後にした。


読者の皆様神様仏様。

私です。

ヴィーがスタミナお化けになりました。

龍化の影響を書ききれない作者の不徳です。

あとモルスレジナは書いてて楽しいです。

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