表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/72

焼き払うのかしら?

 レウィとドライアドのネイ、そしてエルフの代表は屋敷の広間で協議をした。

話はこうだ。


 ドライアド達精霊とエルフは人魔紛争に関わる気は無い。しかし魔王は統治の為に例外を作る気は無い。いくつかの精霊とエルフの集落は魔王に従ったが、ここはそのつもりは無い。そうしているうちに他の集落のエルフも、森に逃げ込み、魔王と黒の森で、散発的な戦闘が続いているとのことだった。


「森を焼くという事は、魔領にある全ての草木を敵に回すこと。それは魔王とて弁えているようですが、近々、大規模な軍勢をここに派遣するようです。」


「エルフの総数は500余り。大規模な集団戦には不向きですし、森に誘い込んでも持久戦に持ち込まれるとこちらが不利です。」


ドライアドは現状を伝え、エルフの代表はその戦力を語った。さらにドライアドは続けた。


「魔王は森を切り開き、ここまでの道を作る気の様子。ギガント種を中心に、下ったエルフやダークエルフらも、この戦に加わるようです。私は封印されることになるでしょう。」


淡々とは語るが、どこか諦めが匂うその物言いに、代表は続けた。


「この森が落ちれば、われわれの一部は見せしめとなるようです。散る覚悟はありますが、見せしめにされるのはあんまりです。」


レウィは黙って聞いていた。正直、彼女に出来る事は無い。


「あたしが()()といっても、()()には何の効果も無いわよ?商会を動かすにしても、()()()の決済が必要だし、時間が無いわ。」


ドライアドは言う。


「今回の出撃は、魔王軍には痛手となっております。余剰物資をつぎ込んでの行軍ですので、2波はないと考えております。また、2人の将が堕ち、他の将を当たらせる事も難しいとの事でした。」


「ほんと、あなたとは懇意にしておきたいわ。まるで見聞きしてきたかのようね。」


「はい。見聞きしましたので。」


こともなげに答えるドライアドのようすは、少しばかり胸を張っているように見えた。


「じゃあ、あたし達の仕事は、その軍勢を潰す事なのね?」


「散らすだけで結構なのです。これを凌げば、膠着状態を構築できます。あとは時間が我々の味方です。」


代表はそう言い、レウィの言葉を待つ。


「・・・・・・腑に落ちないわね。()()にここを執拗に狙う意図が分からない。気に入らないわね。」


その問いにドライアドが答えた。


「今、魔領では食料の生産量が激減しております。無茶な生産と、魔力の消費がその原因ですが、私が生産量を調整しているのです。飢えない程度に育たなくするように。」


「恐ろしいわね、ホント。()()も無茶するわ。でもあたしに出来る事なんて無いわよ?」

レウィは腕を組み、打つ手無しと笑みを浮かべる。

ドライアドはエルフの代表を見ると、代表は頷き、エルフ達は部屋を出て行く。


「人払いなんて、物騒ね。」


()()()()()。あなたの力とヴィロフォルティ様の武力が必要なのです。」


「あたしは()()()()で、軽戦士よ?ヴィロフォルティのほうがよっぽど凄いわ。」


「あなたの()()()()()()()()()が必要です。」


レウィはドライアドを睨みつける。


「一手目に広域魔法で小物を討ち取って頂き、その後ヴィロフォルティ様にギガント種の討伐をお願いします。その間、黒の森に結界を施します。その為にあなたが必要なのです。」


「そんなのあたしが持たないわ。」


「魔力供給は私が。結界の作成もです。あなた様には聖女の力をお貸し願いたいのです。」


「あたしは()()()()よ?対価もなしにそんな仕事請けられないわ。」


「苗木10本につき、世界のあらゆる情報をひとつ。あなた様のみで。」


「あたしと()()()と、あたしが認めた商会の者3人。」


「お二方と一人。」


「2人。」


「・・・・・・良いでしょう。ここは握手をすべきですか?」


レウィはにやりと笑う。


「精霊が約束をたがえることなんて、聞いたことが無いわ。」




 3日間はなんとも慌ただしかった。


エルフ達は結界の準備をし、ドライアド達精霊は森を一部作り変えた。

進軍の情報はドライアド達から逐一入り、レウィはそれを分析し、エルフ達を采配した。情報では後5日程時間がある。


瞬時に手に入る情報に、彼女は狂喜し、また、その情報量の多さに振り回された。


4日目にヴィロフォルティは顔を出し、剣を振るい、アローズィより指導を受けていた。二人で森に入っては、なにやら大きな音がするが、ドライアドは溜め息をつくばかりだった。理由は聞いても教えてくれなかった。


そうして2日も立てばヴィロフォルティは完全に回復し、レウィも準備が整った。

レウィとしては暇になったヴィロフォルティが、先走らないか心配ではあったが、彼はアローズィの指導と森の中での狩りを続け、暴走する気配は無かった。

皆で作戦を詰め、上がってくる情報を精査し、変更を加え、敵陣到着一日前に、準備を全て終えることが出来た。


「ではヴィー様、レウィ様。私はここでお別れで御座います。」


 アローズィはそう言い、ヴィロフォルティに言う。


「お教え致しました事は、しっかりと実践して頂けます様。今のヴィー様なら、それが可能です。身体強化の応用ですが、個人的にも興味深い試みです。ですが今以上の事は決してされません様。」


「分かったよアローズィ。色々ありがとう。」


「では御館様よりの封書で御座います。更なる活躍を、お祈りいたしております。」


そう言うと森に消えていった。

レウィは意地悪そうにヴィロフォルティに言う。


「いつもと口調が違ってたけど、どうしたの?」


「・・・あれが地なんだ。それにあの口調じゃないと、まともに話しを聞いて貰えないからね。」


「まあ、舐められたら、まともに会話なんて出来ないわよね。」


「それでレウィ。初手は僕に任せてくれないか?」


レウィの顔は険しくなる。


「ヴィロフォルティ。初手はあたしの広域魔法でしょ?あなたに何が出来るの?」


「手はあるんだ。うまくいけばレウィの負担が軽くなる。出来なくても、作戦に変更を加える必要は無いよ。」


「配置は換えないからね。・・・・・・じゃあ開始時間を前倒しして、あなたに使う時間を作るわ。」


「ありがとうレウィ。」


「で、その手って言う奴の成功率は?」


「3回に2回。」


「・・・・・・。期待しないでおくわ。」


 レウィの号令の元、皆は森に入り配置についた。


 翌朝には、森の外周に敵陣の姿があった。砂塵を上げ行軍する姿は、森一つを制圧するには仰々しかった。


エルフ達は森に潜み、奇襲戦に備える。ドライアドは森を動かし、凹形に森を整えた。

レウィは草冠をつけ、森の木の高い場所で全体が見回せるように陣取った。草冠はドライアド謹製で連絡用に特別に編まれた物だった。


 森を抜けた平原にはヴィロフォルティが一人。


ギガント種の姿がはっきりとしてきたところで、足元の草が風も無いのにざわめき始める。

合図だ。

ヴィロフォルティはあのときの感覚を思い出す。夢の中で街を蹂躙していたときの感覚。そうすると内なる声が響いてくる。


鏖殺せよ。灰塵とせよ。


彼の内に得体の知れない何かが溢れ出す。同時に鱗が侵食を始め、右腕と左半身は鱗に覆われる。双眸は金に輝き、縦に割れた瞳孔は丸く広がる。

身体強化を発動。それを口元に集中させる。口元は裂け、並んだ牙が露になる。ヴィロフォルティがドラゴン戦で思いつき、アローズィに相談し、形にしたものだ。


彼は唸る。


最初は小さかったそれはだんだんと大きくなり、彼の体からは想像も出来ない咆哮えと変わる。敵陣はそれに動きを止め、混乱しているようだ。

咆哮は異常なほど長く続き、ついにヴィロフォルティの口に淡い光が集中する。

声は甲高い音となり、可聴音を超えた。光は球になり、その口元の景色が揺らめく。

内に溜まった何かが、彼の中で臨界に達したとき、彼はそれをありったけの力で吐き出した。

光の線が走り、敵陣を横殴りにする。ギガント種の上半身は消し飛び、一気にその数を減らす。

敵陣の足元は爆発し煙の帯がその戦列を止めた。


 その光景をレウィは呆然と見ていた。

ヴィロフォルティの位置では戦列の前しか見えないだろうが、彼の吐き出した光は、そのほとんどを焼き払っていた。

敵は混乱し、散り散りに逃げ惑っている。

ギガント種は全滅。中小の小物は混乱し、使い物にならない。

草冠から声がする。


「今のうちに、私が。」


ドライアドの声に我に返ると、頷き、手を一閃する。

敵陣の中に無数の蔦が生え出し、敵に絡みつく。

再度、ヴィロフォルティの咆哮がする。今度は光の炎が敵を蹂躙する。


「レウィ。敵は撤退を始めました。」


ドライアドが大木の幹から、その姿を浮かび上がらせレウィに告げる。


「次はあたしの番ね。力は有り余ってるから、飛び切りのを作れるわよ。」


「お任せください。」


レウィはエルフ達に、動かぬヴィロフォルティの回収を命じ、木から降りると、森の奥に向かった。

そうして暫らくすると、黒の森は不可視の結界に包まれる事になった。



「アローズィ?あなた何を吹き込んだの?」


「ヴィー様からのご提案に御座います。火の将との一戦で、自分が叫んだ後、将兵が吹き飛んだと。もしかしたらドラゴンと同じことができるかもとのお話でした。」


「で?」


「さらにヴィー様は、身体強化を体の一部に集中させる事を思いつかれまして、私にご相談に参られました。理屈の上では可能でしたので、その方法をお教えしたのみです。」


「・・・・・・それが”龍の一閃”と”龍のブレス”って訳ね。」


「ヴィー様のお体では、大変消耗が激しいはずなのです。一閃まで使われるとは、アローズィも想定しておりませんでした。」


「ヴィーは大丈夫かしら?」


「極端な気力の消耗と、空腹だけのはずです。お顔に負担があるはずですが、それもヴィー様のお体なら、問題ないかと。」


「・・・アローズィ。褒美を取らすわ。寝所へ来なさい。」

読者の皆様神様仏様。

私です。

出来心なんです。一度やってみたかったんです。

一瞬でなぎ払われる軍勢。

素敵ですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ