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ネズミがいるの?

「後は情報ね。」


 そう言い、レウィは町の中心にありながらもどこか薄暗い通りを歩いてゆく。

ゴロツキがたむろし、女達が型をむき出しにして立っている店を横切り、小さなドアの酒場に入っていく。


店の中は酒と何かの臭いでむせ返り、ステージまで用意されているそこに、羊顔の魔物が人間の女を襲っていた。

観客は騒がしく囃し立て、幾つもあるテーブルでは、サキュバスを侍らした魔物が酒らしき何かを呷っている


 レウィはカウンターに向かい、ヴィロフォルティはそこについてゆく。


「何か新しいネタを(つま)めるかしら?」


「・・・・・・()()()に食わせる飯はない。」


角を生やし、牙を見せるオーガが器用にコップを拭きながら、レウィに言う。


(つま)むのはあたしよ?」


「あんた以外に出すものは無ぇ。」


()にイイトコ見せたいじゃない?」


オーガはちらと二人を見ると、後ろのビンが無数に並ぶバックバーに向かい、一言。


「奥にテーブルが用意してある。そこで食え。」


「ありがと。」


金貨を2,3枚取り出すと、カウンターのグラスに入れる。澄んだ音がして、オーガは顔を向けるが、すぐに後ろを向いた。


制服を着込んだホビットが前を歩き、奥に案内される。

奥の扉にはオークの用心棒が扉の前に陣取り、ホビットがなにやらハンドサインを出すと、扉を開けた。

レウィが銀貨を親指で弾くと、ホビットはそれに取り付き、恭しく礼をした。


 そこは貴賓室然としており、童顔巨乳のサキュバスと女顔をした薄着のインキュバスを侍らせた猫がそこに居た。


「久しいね。あんたが()を連れてくるなんて、初めてじゃないか?」


「お久しぶりね、王様。相変わらず、良い趣味してるわ。」


ごろごろと喉を鳴らすその様子は笑っているのか。


「本当はヒトの()()()が一番なんだけど、気に入った商品が入ってこなくてね。」


「・・・・・・そこは謝るわ。王様好みの()()()()()するから、暫らく時間を頂戴?。」


「珍しいね!()()()()()なんて!うん。気長に待つとするよ。」


猫が人払いの仕草をすると、部屋に居た淫魔達は外に出てゆく。


「で、()()()を連れて僕の前に来るなんて、どういう事だい?」


眼を見開き、瞳孔を丸くさせ、猫は言う。


「怒らないで、王様。彼は()()()()よ。解るでしょ?」


言うなり猫は毛を逆立て、毛で膨らんだ尻尾を抱えた。プルプルと身を震わせた。怯えているようだ。


「それを先に言ってよ!悪気は・・・多分無いんだ!赦しておくれ。」


「確かに俺は()()()だ。それに関しては気にしちゃ居ない。それを誰かにいう事も無い。」


ヴィロフォルティは何事も無く、そう言う。


「ホントに?」


「あんたに嘘をついても、得にならない。出来れば友好的にいきたい。」


「判った。」


猫は、毛づくろいを始め、レウィは適当な場所に座り、ヴィロフォルティはドアの近くにもたれかかる。


「ふう・・・。こんなサプライズは嫌いだよ。」


なにやら木の棒を齧り、少しリラックスしたのか、穏やかな雰囲気になる。


「あんたが地の将をやったのかい?そうは見えないけど、凄いね。」


「情報はどこまで?」


「王都で情報管制が引かれてる。他の将は動き出した。」


「このあたりで近くに居る将は?」


「火の将がこちらに向かってる。明日にはここに着く。・・・・・・まさか狙ってなんか無いよね?」


「それはヴィロフォルティに聞いて。ヴィロフォルティ、あの方は王様。それ以外知らなくて良いわ。王様?彼は」


「聞きたくない!聞きたくない!世の中知らなくて良いことが多すぎる!!」


眼を瞑り、耳を塞いでいやいやをする猫。


「じゃあ王様?商談といきましょうか。」



 それから二人は話し込んだ。ヴィロフォルティはそれを聞きながら、少々まどろっこしさを感じていた。


「じゃあ、これで取引成立ね。」


「サプライズはもう止めてよね。でも、良い取引が出来た。」


レウィは立ち上がると、猫と握手した。

その横にヴィロフォルティがくると、彼は少し怯えた。


「王様。驚かした侘びと、取引の礼だ。受け取ってくれ。」


テーブルに2枚の白金貨が置かれる。レウィは眼を剥き食って掛かろうとするが、ヴィロフォルティが手で制する。

猫はじろりと彼を見る。


「何の真似だい?」


「あんたに礼をしたいが、俺が持ってるものでつりあう物が無い。俺に出来る最大の礼だ。」


「・・・・・・。まあ、受け取っておくよ。()()()には凄く良く言っておいておくれよ?」


「勿論だ。これからもよろしく頼む。」


「ホントなら、関わりたくないんだけど、仕方ないや。宜しくヴィロフォルティ。」


「ヴィーでいいよ。」


「判った。ヴィー。」


眼を細め、ごろごろと喉を鳴らしながら前足を差し出す。彼はその前足を人の方の手で優しく握った。



 商会に戻り、二人は再度、買った情報を元に打ち合わせをやり直した。

ヴィロフォルティはそこで彼女に打ち明けた。


「どうにもまどろっこしい。連戦に近い形で、相手できないか?」


それを聞いたレウィは頭を抱えた。


「あんたねぇ。地の将相手に戦って、1日寝込んだでしょ?無理に決まってるじゃない!」


「何なら、俺を売っても良い。何とかできないか?」


()()()()()()()()。言いたい事は判るけど、商会の立場もあるの。希望は聞いておくけど、当てにしないで。」


「そうか。」


「特に言っておくけど、自分で何とかできると思わない事ね!商会や王様まで巻き込まないで!!」


机を叩き、ものすごい剣幕で捲くし立てるレウィ。


「・・・・・・判った。だが、何とかしてくれ。」


「判ってるわ。最大限のことはしてあげる。我慢して。」


「了解した。」


その後二人は将兵の陣幕の事や脱出経路など、話を詰め始めた。




「アローズィ?、なんだかヴィーは焦ってるようね。」


 光魔法で地の将との戦闘を見ながら屋敷のリビングで、戦闘を終え、アローズィと話をしている場面を見ながら、フィニスは言った。


「次は火の将と当たります。その後に何か落ち着けるものをご提供できれば良いのですが。」


「そうねぇ・・・。一度屋敷に戻そうかしら?」


「鉄は熱いうちにという故事もございます。戻すのは得策ではないかと。」


「そぅお?そうよねぇ。ドライアドとエルフ達は?」


「中立を保っております。それゆえ、何かとつき上げが来ている様に御座います。」


「じゃあ、息抜きに会わせてあげて。」


「承知いたしました。」


「さてと。勇者達は?」


「そろそろ水の将と当たる頃合かと。分は勇者側にあります。」


「あら?随分と強いのね。」


「ヒトの将兵の動きが良う御座います。優秀な将が就いております故、妥当かと。」


()()減るかしら?」


「良くて引き分け。ヴィー様のご予定に変更は御座いません。」


「それなら良いわ。でも勇者が弱くちゃ話にならないわね。」


「将に匹敵する者達と、連戦をさせて御座います。()()()()調()です。」


「そうなの?ま、任せるわ。」


「承知いたしました。」


「ところでアローズィ?あなたの抱え膝はどこと無く可愛いわね。狙った?」


「・・・御館様。御館様。私、イッてしまいそうです!」


「・・・・・・好きになさい。」



 町には戒厳令が敷かれ、その日ばかりは鉱山も静かになった。

通りには将兵が溢れ、警戒に当たっている。


ヴィロフォルティは前の日に兵舎の隠し通路に潜み、時を待った。

頭上では足音が激しく響き、さまざまな声が聞こえてくる。

ドブネズミが走り回るそこで、彼はじっとして眼を瞑っている。


 今回もレウィはサポートに回り、彼の脱出と、町からの逃走を準備しているはずだ。


 彼は今、アローズィから教えられた魔力探知とやらを試していた。

頭の中に、大小さまざまな光点が浮かんでは動き回る。アローズィから教えられたそれに、ヴィロフォルティは相手に気取られないか聞いた事があるが、彼女は”ぱっしぶ式”とやらを彼に伝授した。

これならば、相手に気取られないで済むと言う言葉を、彼は信じた。

彼女は言った。小さな点、中くらいな点は取るに足らないと。修行していると、頭全体を埋め尽くす光が見えた時があった。すぐにそれは消えたが、それがフィニスだと彼女は呆れ顔で言った。


 そうしてどのくらいが過ぎたか、はたして意識の隅に何かが近付いてくるのが判る。

それは他の光と違い、巨大で赤く、それが目当ての相手だとすぐに判った。


さて、どう動くか。


レウィは夜になり、兵達が静まった所を狙えといった。その為の時計とやらも持たされたが、彼にそれは理解できなかった。

なので、光点たちが鎮まるのを待ち、そこで動く事にした。


巨大な光点は暫らくすると動かなくなるが、大小の光点はせわしなく動く。


「焦っている時こそ力を抜け。」


傭兵時代の師匠の言葉を思い出す。


「慌てて動くから、ヘマすんだよ。」


ニーイはそう言い、鉄棒でヴィロフォルティをしこたま叩いた。死なないのを良いことに、ニーイはやりたい放題、彼をしごいた。

そんな事をつれつれ考えているうちに、光点は静かになっていく。


 そして彼は穴倉から動き出す。

物陰に隠れ、幾度もやり過ごし、邪魔な兵を音も立てずに殺し、巨大な光点を取り囲む中小の光点の手前まで来た。

物陰から伺うそこは、兵士達が高い錬度で警戒しているのが伺えた。

どうするか。埒が明かない。


 その思いが彼の中で溜まってゆく。

それが限界まで来たとき、彼の腹は決まった。物陰から立ち上がり、身構える兵達に向かって、力の限り吼えた。

彼の周りの景色が揺らぎ、向かって来た兵士達が、軽く飛ばされる。

その様子が気にはなりながらも、答えるように響く雄叫びに、彼は剣を構えた。


ようやく、次の相手だ。

読者の皆様神様仏様。

私です。

実は本文を書くより、サブタイトルを考える方が難しいのです。

あとがきはたのしいのですけどね。(○´д)(д`○)ネー

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