表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/72

死合いよ?

 商会を離れて歩いて、半日の距離。


 その間、ヴィロフォルティはレウィに幕営と、四天王について聞いた。

近くの幕営はフロントライン侵攻の為の軍。数は5千。率いるは『地の将』。名前はどうでもよかった。

種族はミノタウロス・ロード、ミノタウロスの最上位種。身の丈は普通の家屋の屋根ほどの高さ。

武器はメイス。以前戦ったミノタウロスとは、別格であるようだ。

将と名の付く以上、その知性も、絶対に侮る事は出来ないだろう。


「あなたは何故、地の将に?」


 レウィはヴィロフォルティに訊ねる。


「ヴィーでいいよ。様もさん付けもいらない。で、聞いてどうする?」


「場合によっては、ヴィーを置いて逃げる。」


彼女は、何の気負いもなくそう言う。

ヴィロフォルティは気を害した事もなく、頷き言った。


「是非そうしてくれ。道案内に死なれると、この先困る。」


「分かりの良い雇い主で幸運だわ。」


「そうか?」「そうよ。」


 暫らく無言が続く。ヴィロフォルティに多くを語る気は無かった。


「ねえ。何で馬とか走竜とか使わないの?」


「歩きは苦手か?」


「そう言う訳じゃないけど。気になったの。」


「良いことだ。気になったことはすぐに解消しないと、手遅れになることが多い。俺が足を使わないのは、これのせいだ。」


そう言い、自分の足元を指す。

振り返り、その足跡を見れば、僅かに地面が足の形にへこんでいる。


「・・・・・・。斥候は無理ね。」


「荷馬車が欲しいところだな。」


「あなたでも冗談を言うのね。キグルイのヴィー。」


はて、今のは冗談であったか?


 二人は無言で、幕営に向かう。


「どうやって四天王に会う気?」


森を抜け、平野へと来た所で、レウィは口を開いた。日は中天より幾分傾き、幕営はいまだ遠い。


「世間話か?」「そうよ。」


暫らく無言が続く。どう言うべきか、考えるヴィロフォルティ。


「言えないなら別に良いわ。どの道あたしは、外で待つから。」


「絶対に会える方法を持ってる。俺以外に使えない。」


「自分から振っておいて何だけど、聞かなきゃ良かった。」


 途中、一刻ほど休憩をははさみ、幕営が見えてきたのは夜の帳が下りたころだった。

幕営には篝火が焚かれてはいるが、必要最小限しかなく、そのあたりは、種族の差を感じさせられた。


 ヴィロフォルティは考える。

相手に挑み、夜陰にまぎれて逃げるか。はたまた押し通るか。

挑むのは楽だが、その後がいけない。そしてこちらには殺されてはまずい者もいる。


「言っておくけど、スカウトの真似事は無理よ?魔族に暗闇は関係ないし、臭いで気づかれるもの。」


果てさて、押し通るしかなしか。自分に数は関係ない。時間がかかるだけだ。


「レウィ。ここで待っていてくれないか?」


「・・・・・・左の高台で待ってる。手筈は打ち合わせどおりに。」


「承知した。」


彼は進み出し、レウィは身をかがめ、高台を目指す。


 幕間手前では、流石に誰何された。


()()()()が何の用だ!」


兜鎧を着けたオークが、槍を構え、言う。

その姿には隙がない。もう一人も、いつでも、内外に動けるよう、身構えている。錬度は高い。

一悶着ありはしたが、相手を釣り出すことは出来そうだ




 程なく幕営からもの凄い咆哮が上がる。地鳴りがし、何かがこちらに近付いてくる。

兵達は狼狽し、左右に逃げる。

ヴィロフォルティは変わらず、相手を待つ。


 はたして天幕より頭一つ大きな影が、こちらに向かってくるのが見えた。

雄牛の頭に巨人の体、雄牛の足。ミノタウロス・ロードだった。


「ノビリフィーニア様の使いとはお前か?」


重厚な声があたりに響く。

手にはトップがヴィロフォルティの体ほどもある、いびつな洋ナシ形をしたメイスを握り、彼を見下ろす。


「そうだ。ヴィロフォルティという。あんた、見事な風格だな。」


「世辞はいい。何の冗談だ?」


「俺は使いだ。話の内容は分からない。だが、あんたと死合いたい。」


ヴィロフォルティの前にメイスが振り下ろされる。

土くれが飛び散り、彼を襲う。マントははためき、その速さと威力を見せ付ける。


「意外と短気なんだな。」


「何たる恥辱!ノビリフィーニア様の威令でなければ、このような雑魚、相手にもせぬわ!!」


彼は笑った。


「そうか。手紙の内容はそれか。話が早くて助かる。」


 雄叫びと共に、再度、メイスが振り下ろされる。ヴィロフォルティは大剣を抜き、メイスを狙い体全体でそれを打ち弾く。

ミノタウロス・ロードは弾かれたそれの反動を利用して、袈裟懸けに再度、彼を狙う。

彼はそれをいなし、大地を打ち据えさせるや、その手元に鋭い風切り音と共に剣を振るう。。

重い金属同士がぶつかる音が響き、両者は離れ、お互い武器を構え直す。


「・・・ふむ。2合保つか・・・。」


「すごいなそれ。手が痺れるぜ。」


雄叫びを返し、メイスの突きが彼の足元を襲う。間合いを取らせるか、体を崩させるか。

彼はそれを大剣の上段からの振りで受け止める。

破裂音と共に大剣はメイスを打ち落とし、彼の体は相手の武器ごと後ろに下がる。


「見事!」


ミノタウロス・ロードはそう叫ぶや、メイスを下段に引く。その後を追いかけ、前に出るヴィロフォルティ。


「体格差はどうしようもないな!!」


嬉しそうに叫びながら、内に入りその足元を狙うが、想像以上の速さで、間合いを取る。

その速さに彼は、不利を承知で立ち止まった。

一度の跳躍でかなりの間を取るミノタウロス・ロード。

その間に身体強化を掛け、追撃しようと一瞬動くが鎧がそれを止め、剣を下段に半身を引いて、迎撃の構えを取る。

同時に、先ほどの速さでミノタウロスが浅く宙を舞い、メイスを上段から両手で降り殴る。

彼は、()()に狙いを定め、破裂音と共に剣をかち上げる。


轟音と共にメイスは跳ね上げられ、大剣は足元に突き立てられる。

ミノタウロス・ロードは半歩身を引き、拳を振り下ろす。ヴィロフォルティは内に入ることでそれを避け、左手で手刀を作り手首に打ち当てる。

竜の腕は相手のその腕を容易く切り裂き、血を吹かせる。

メイスの追撃が横殴りに来る。

右手で大剣を頭に構え、体を小さく、前に出ながらやり過ごす。火花が散り右手は痺れ、体は軋む。

ミノタウロス・ロードは筋肉を締めることで流血を止め、再度跳躍し間合いを取る。


判りきった事だが、あのメイスは厄介だ。


 着地したミノタウロス・ロードはその勢いをバネに、体を捻り、走りながらメイスを横殴りに振る。

それをあえて下がる事で避け、内に入ろうとする。ミノタウロス・ロードは三度跳躍し、間合いを取る。

そのまま内に走りこむ。メイスが襲う。


 癖はつかめた。しかし、相手もうすうす感づいているだろう。どう狙う?


 メイスの突きがやってくる。剣でいなす。

やがてそれは、メイスの突きの雨となる。


大剣を前にしたニーイはどう動いたか思い出せ。


突きの雨は、ヴィロフォルティの体を押し下げる。彼はひたすらメイスをいなす。

そうして前に出る。

いなしては進み、いなしては進む。


ニーイは言った。


猛攻を受けたドワーフに、後退はない。


なればそうしよう。師匠の教えは忠実に。確実に。

やがてメイスはその威力が弱ってくる。力を入れる最適位置がずれたのだ。


奴は飛ぶ。合わせろ。


しかしミノタウロス・ロードは半身をずらし、位置を調整する。

雨の威力が戻る。が、それは先ほどとは違い、荒くなっている。ヴィロフォルティを押しつぶさんとする意思が薄い。


 デカ物相手は長期戦を誘え。


メイスを捌くのに躍起になっている。後退を嫌がっている。

いなし、進む。いなし、進む。いなされ、下がる。いなされ、下がる。


「この痴れ者が!」


とうとう声を上げるミノタウロス・ロード。


奴は土を蹴り上げる。その量はヴィロフォルティの姿を覆うほどだ。

メイスの雨が止まるその隙に、彼は大剣を上段振り下ろし、土砂を切り裂く。

そして前に。

メイスのトップが頭上に迫る。大剣を引きずり横に反れ、メイスの柄を振り切る。

破裂音と甲高い金属音と共に、メイスのトップが転がってゆく。


 ミノタウロス・ロードが驚愕に吼える。


 剣を軸に体を逆に入れ替え、柄を握る手を切り裂く。そのまま横殴りに片足を切り飛ばす。

残る片足で飛びずさり、メイスの柄を握りかえる。


 その内にヴィロフォルティの影。

横殴りの初動を取ろうとすれば剣が言う。体を剣の下に入れ、伸び上がるように上段から足に向け振り切る。

そのまま、前に進めば後ろを鉄棒が通り過ぎる。

ミノタウロス・ロードの両足は取った。

後ろに気配。振り返りざま鉄棒を握る手を切り飛ばす。

横倒しになったミノタウロス・ロードの首に駆け込み、剣を付き立て、振り上げる。

血しぶきが上がり、ヴィロフォルティを濡らす。

剣を逆手に、その眼に大剣を突き立てる。そのまま押し込み。抉りまわす。

激しく痙攣する体から大剣を抜き取り、首まで下がれば、破裂音と共にそれを切り落とした。


 辺りは静まり返り、ヴィロフォルティは血しぶきの上がる首の前を駆け抜け、前に出る。

やる事をやった後は、前に向け逃げるのみ。安全地帯は前にこそにある。

立ちすくむオークやトロルどもを切り捨て、前に駆ける。


 ようやく忘我の時を過ぎ、魔物共が騒ぎ出す。幕営の端までもう少し。

ちらと人影が見えれば、そこは切り裂かれており、レウィの顔が見える。

近付けば油と火薬の臭い。

ヴィロフォルティは駆け去り、レウィは火薬に火をつける。それは火の蛇となり、天幕に走り、燃え上がる。


 二人はとにかく前に駆ける。混乱している今しか、逃げ時はない。

幕営が小さく見えるまで、二人の足はとまらなかった。



 幕営を後にし、二人は夜通し歩いた。幕営のある平原を駆け抜け、森を迂回して進む。

森に入らなかったのは、ドライアド達を避けていたからだ。今の魔族領では、精霊も加担していないとも限らない。


 小さな小川を見つけ、二人は休憩とした。


「あたしは魔族だからわかるけど、あんたも大概底なしね。」


「何がだ?」


「体力とスタミナよ。あれだけのことしておいて、ここまで来れるって、信じられない。」


「ヴィー様は、鍛えておられますので。」


その声にレウィはぎょっとする。見れば、ヴィロフォルティの横に、執事服の麗人が膝を抱えて座っている。

指をちょこんと上げれば、ヴィロフォルティの頭上に魔法陣が描かれ、彼の汚れを浄化して行く。


「あなたは・・・ハイエルフ?」


「はい。お初にお目にかかります。私めはアローズィと申します。お見知りおきを。」


「・・・・・・。膝を抱えて座っているハイエルフなんて、初めて見るわ・・・。」


「お茶目な私も、アピールしておきたかったので。」


「誰によ・・・。」「ヴィー様にです。」


 当のヴィロフォルティは浄化魔法を気持ちよさそうに受けている。


「・・・・・・尊い・・・・・・。」


頬を染め、ヴィロフォルティを見つめるアローズィ。それを呆れ顔で見ているレウィ。

なんとも間の抜けた光景が広がっている。


 浄化が完了したのか、魔方陣は淡く消え、あれほど血生臭かった彼の体は、その痕跡すらなく綺麗になった。


「ありがとうアローズィ。あいつは殺ったよ。」


「ヴィー様の笑顔を拝見できて、私は幸せ者です。」


蕩ける笑みでそう言うアローズィ。それを見ていたレウィは呆れてものが言えない。


「四天王、地の将殺害を確認いたしました。中々の激戦に御館様は大変ご満足なされました。」


「どこか鍛冶屋はないかな?出来ればドワーフのいる鍛冶屋が良いんだけど。」


「それなら火の街に一人腕の良いのが居るわよ?」


「むう、先を越されてしましました。」


アローズィは立ち上がり、ヴィロフォルティに礼をする。


「それではヴィー様。次なるご活躍をお祈り申し上げます。」


そう言うと淡く、風に消えていった。

読者の皆様神様仏様。

私です。

今回よりヴィーいぢめの開始です。

ネタばれです。_(:3」∠)_


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ