表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/72

仕上よ!仕上げ!

ネームドミノタウロスを倒した3日後、森の前の広場で、ヴィロフォルティは大剣を構えていた。

後ろにはニーイと親方が居る。腕組みをしたニーイが言った。


「まずは肩慣らしに、知ってる型をやってみな。」


彼は正眼に構えた剣を振り上げ、そして振り下ろす。

傭兵時代に仕込まれた型を繰り出しながら、ペースを上げてゆく。


3~4分ほどそれを続け、最後に再び正眼に戻し、残心。


「よし。次は本気でやりな。」


身体強化を唱え、振り上げる。そこで溜め。そして振り下ろす。

ただそれだけの動作のはずだったが、破裂音がし、一瞬で大剣は振り下ろされていた。

それからは破裂音の連続と、大剣が巻き起こす嵐が周りを揺るがす。

そのうち破裂音が止み、甲高い金属音が代わりに響いてくる。

大剣は黒い影となり、彼の姿は霞となる。そして剣の周りに雲が出来上がる。


「よし!」


言うなり、大地が抉れる音とともに、大剣の姿が現れた。その刃は大剣の3分の2が地中に埋まっている。

いや、大地を切り裂いたのだ。


「さすがに()()()のは無理かい?」


ニーイは言う。ヴィロフォルティは頷く。


「腕を持っていかれる。何か方法は無いか?」


「ない。体が出来上がるのを待ちな。」


「そうか。」


大剣を引きずり出し、布で丁寧に土を拭う。

親方は大剣を確かめている。


「ん。間違いねぇ。()()()やがったな?ヴィー。」


再び頷く。

ニーイは腰を下ろし、親方もそれに習う。

大剣を横にヴィロフォルティも座る。


「声というか、こうした方が良い、こうするべきだって感じがする。その通りに腕を動かせば、あれが出来る。」


「普通は剣が持ち主に合わせるもんだが、そいつは()()()()んだな。それに合わせられるお前もお前だ。」


「あたしの仕込が良いからね。それくらい出来てもらわないと、あたしの名が廃るよ。」


二人は朗らかに言い合う。


ヴィロフォルティは身を正し、二人に頭を下げた。


「有難うございます。師匠、親方。これで本当に剣が使えるようになった。」


親方は鼻をさすり、ニーイはにこりと笑う。


「まあ、これであたしの膝くらいのとこには来たかね。」

「死合ってくれるのか?」

「止めとくよ。あんたが学べるとこは、もう死地しかないよ。」


そう言い、真面目な顔で彼に言う。


「あんたは死地でしか学べない男だ。修羅さね。その若さで不憫な事だが、これは変えられない。」


そして告げる。


「今、剣を捨てるか、修羅を進むか、選びな。剣を捨てれば人並みの暮らしも出来るだろうさ。修羅を選べば、お前さん死ぬより辛い地獄を見続ける事になるよ。」


ニーイと親方の目は真剣だった。


「ヴィー。なんならうちの子になれ。」


親方の声が暖かい。父さんもこうだったかな?忘れてしまった。


「お前は若すぎる。修羅の道には行かせたくない。」


師匠の言葉が温かい。母さんの顔も、声も、もう思い出せない。


ヴィロフォルティの胸の内はとうに決まっていた。呪われたあの日から。


「師匠、親方。僕は神様から呪われてる。死にたくても死ねない呪い。フィニスに会いに行ったのは、死にたかったから。でもフィニスのブレスでも、僕は死ねなかった。」


落ち着いた声で、素の声で彼は言う。剣を撫でながら、彼は言う。


「フィニスだけが()()を救ってくれた。フィニスに貰ったこの剣だけが、僕を救ってくれた。師匠には悪いけど、この剣が無いと、もう生きていけないんだ。だから、僕は修羅の道を行くよ。」


その言葉に親方は天を仰ぎ、ニーイは眼を瞑り俯く。


「ありがとう、二人とも。こんな僕を気にかけてくれて、ありがとう。」


ニーイはその言葉に膝を打ち、顔を上げた。


「解った。ヴィロフォルティ。馬鹿弟子。お前は魔族を知ってるかい?」


「たしか、母さんが話してくれた事があるよ。」


「奴らは居る。現実に居る。奴らと死合いな。もっとお前を強くするはずさ。ただし、本物の地獄を見るよ。」


その眼に、彼は笑って答えた。いつもの笑顔じゃない、素の笑顔で答えた。


「わかった。師匠。ニーイ師匠。僕は行くよ。」


「辛気臭い話は終わりにしようや!今日は帰って飲み明かすぞ!」


親方はそう言い、立ち上がる。ニーイも目頭を拭いながら立ち上がった。

ヴィロフォルティは立ち上がり、大剣を背に負う。


そして三人の前に、執事服の麗人が現れた。そう、まさに何もない空間から現れた。


「お初にお目にかかります。ヴィロフォルティ様。ニーイ様。ダニス様。私めはアローズィと申します。」


腰を浅く曲げ、左手を前に、右手を後ろに回し、礼をする。

ニーイが、親方の前に出る。ヴィロフォルティは懐かしい匂いをかいだ。


「師匠。まって。」


そう言うとアローズィの前に立つ。


「はじめまして。フィニスの匂いがする。まだ一年たってないよ?」


アローズィは少し驚いた顔で、彼を見た。


「流石で御座います。ヴィロフォルティ様。私は御館様の命でまかり越しました。皆様に敵対する意思はございません。今はただの伝令に御座います。」


「あんた、ハイエルフだろ?何でそんな真似してんだい?」


ニーイは警戒を解かず、彼女に問う。


「御館様、(いのち)ですので。私の立場など、御館様の前では塵芥も同じ。私の全ては御館様の為にあるのです。」


尚も言い募ろうとするニーイをアローズィは手で制する。


「ニーイ様との語らいも楽しいもので御座いますが、今は、ヴィロフォルティ様を優先いたします。

ヴィロフォルティ様、今のお言葉、御館様も痛く感激されておられました。こうして実際にお目にかかりますと、確かに尊いお方だと感じます。」


「フィニスもそうだけど、尊いってなに?僕、ただの農民の子だよ?」


「・・・・・・これは尊い・・・・・・。いや、失礼致しました。御館様よりヴィロフォルティ様にお伝えしたい事が御座います。」


「何だろう?教えて?」


「尊・・・。何でも御座いません。ヴィロフォルティ様も()()()()()ご様子ですので、御館様より試練のご提案がございます。褒章は妹様のお体、だそうに御座います。」

「やる。」

「まさに即答。このアローズィ、千余年を生きてまいりましたが、これほどの強い意志は、初めてで御座います。流石、御館様の見初められた方。出来ましたら、私めもお側に侍らせて頂きたく存じます。」


「・・・はべらせるって、なに?それよりフィニスは何て言ったの?」


「・・・・・・。これは・・・・・・。なるほど。御館様の熱の入れようが今、解りました。私が間違っていたようです。私もヴィー様とお呼びしても?・・・失礼致しました。御館様よりのお言葉は、[ドラゴンと死合いなさい]、との事で御座います。」


ニーイは激昂した。余りに無体すぎる。


「フザケた事抜かしてんじゃないよ!この葉っぱ女!!」


アローズィの耳がひくりと動いた。


「これは確定された事で御座います。石喰いには少々酷な()()()()でしたか?」


一触即発の雰囲気に、ヴィロフォルティは二人の間に入り、盾となる。


「止めてよ!師匠!アローズィさん、ごめんなさい!師匠は少しだけ気が短いけど、良い人なんだ!」


そう言って、アローズィに頭を下げる。

食って掛かろうとするニーイを親方が羽交い絞めにし、口を塞ぐ。


「あぁ・・・。この気持ちは久しぶりに御座います。ヴィー様。やはり、私もお側に侍りとう存じます。勿論、御館様の次に。」


「もう!訳わかんないよ!」


ついに叫んでしまうヴィロフォルティ。


アローズィはその言葉に居住まいを正し、再度、深く礼をする。


「申し訳御座いませんヴィー様。少々取り乱してしまいました。・・・・・・これより3の月が降りる朝、場所はここで。妹様の復活を、このアローズィもお祈り申し上げます。」


「判ったよアローズィさん。ありがとう。」


白い頬をほんのり赤く染め、微笑みながらアローズィは消えた。


「このダメ亭主!いっちまったじゃないか!」


拳で親方の顔を殴る。


「何しやがる糞女!」


溜め息をつき、振り返るヴィロフォルティ。そこには何故か笑顔がある。


「師匠?親方?子供が見てる前で、いがみ合うのはダメだよ?」




「これが今うちで出来る最高の防具だ。」


ありったけの材料と弟子達を駆使して、親方はヴィロフォルティの防具を一晩で作り上げた。


右手には爪付きの篭手。胸には大剣と同じアダマンタイトと龍鉄を使った胸鎧。左足には同じ素材の腿あてと脛あて。

兜はヴィロフォルティが拒否した。視界が悪くなるからだ。その他は出来るだけ軽く、簡素にというヴィロフォルティの希望だった。

ニーイといえば、防具一式を点検し、丁寧に磨き上げ、今はバトルアックスを研いでいる。


「親方・・・僕、死なないんだよ?防具なんて入るのかなぁ?」


広場での語らい以降、彼は素で二人に接していた。


「無いより有った方が良いんだよ!なあ!ニーイ!」


「当たり前さね!準備を怠った奴から死んじまうんだ!そこのお前!対ドラゴン用の小物はどこだい!?」


斧を丁寧にしまい、腰袋の中をあさるニーイ。


「師匠、闘うのは僕だよ?」


「やっと飛べるようになった雛がえらそうに!あたしもやるよ!」


途端、彼の表情から感情が消えうせた。ヴィロフォルティはニーイの前に立ち、肩を抑えた。


「ダメだよ師匠。僕の獲物だ。妹を生き返らせるんだ。」


その眼は彼が見せた事のない眼。

狂気に取り付かれた瞳。


「ヴィー・・・あんた一体・・・・・・。」


「妹が生き返るんだ。邪魔しないで。」


「あんた・・・正気じゃないよ・・・・・・。」


ヴィロフォルティは生まれて初めて、膝を折り他人に抱きついた。そうしないといけないと思った。


「師匠。妹が死んだときから、僕は狂ってるんだと思う。みんながそう言う。だから、邪魔しないで。」


優しく離れ、ニーイの両手を握り、懇願する。


「師匠?師匠はもしもの時の為に、皆を守って。親方を守って。僕は死なないけど、皆は死ぬんだよ。約束してよ。師匠。皆を死なせないって。自分も死なないって。」


顔を伏せ、ニーイの手を強く握る。

もう、親しい人の死を見るのは嫌だった。泣いている姿を見るのも嫌だった。


「判ったよヴィー。業腹だけど、その依頼、引き受けた。」


ニーイはそう言って、ヴィロフォルティの頭に軽く(ひたい)を当てた。

読者の皆様神様仏様。

私です。

毎日投稿は、ひとまずお仕舞いにございます。

早めに投稿、または、もう一度すぐに投稿できるかと思います。

キャラの動きが遅いときも、かわらず彼らを見守ってくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ