表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/72

撃破よ!撃破!

「ネームドミノタウロス、”アスペレオ”の討伐を許可します。」


その日のうちに、悪ガキ師弟はギルドに駆け込み、依頼を受けた。

今回の出来事を鑑みても、S級を動かすには煩雑な折衝が必要だった。

加えてヴィロフォルティは冒険者ではない。一応傭兵ギルド所属だが、一度もギルドに顔を出したことがないという。


苦肉の策として、臨時パーティーを組むという事で、規則の穴をついた。

リーダーはカジュ。ニーイはオブザーバーという形で、同行させる事となった。


「本当にニーイ様は対応されないのですか?」


露払いに先導されながら、パーティーは進む。

ミィーノはニーイに問いかけた。


「だから様付けはよしなって。あたしはヴィー以外のお守りだよ。それ以外する気はないね。」


「ニーイさ・・・さん。いくらヴィーが強いからって、大丈夫なの?」


カジュが問うが、ニーイは鼻でわらって答えた。


「あたしの動きに、あたしの技術。それを半年で飲み込んだんだ。あのキグルイ。ミノ公の群れ程度で潰れるほど、柔な鍛え方はしてないよ。」


笑いながら答える。


当のヴィロフォルティはいつもの表情で淡々と歩いている。何も感じていない。いつもの散歩とでもいう風だ。

それ以降は会話もなく、先行の露払いの声だけが響く。


そうして7層目まで来た時、露払いのリーダーはニーイに告げた。


「ここからはモンハウ状態になってると思われます。われわれでは、ここまでです。」


なんとも悔しそうな声だが、ニーイは取り合わない。


「ヴィー!木偶が一杯だとさ!やりたい放題出来るよ!」


「判った。師匠、先行する。10分程度で降りてきてくれ。場所を空けておく。」


「長い!5分で準備しな!」


「判った。やってみる。」


言うなりヴィロフォルティは最下層に飛び込んでゆく。

ニーイは取り残された冒険者達を一喝した。


「そんなに悔しけりゃ、もっと強くなりな!死ぬ気で鍛錬しな!今のお前達は、あたしに言わせりゃ腑抜けと同じさ!悔しけりゃ何でもやりな!何でも使いな!ギルドにはあたしから言っといてやる!何ならあたしが扱いてやる!今から死んでも強くなれ!!」


ダンジョンの空気を揺らすその声は、冒険者達に届いたか。彼らの眼に何かが宿る。


「カジュ、ミィーノ。支度しな。あんたらのやる事は、今から起こる事を全部覚えておく事だよ。あんたらは運がいい。特等席で()()()()()が見られるんだからね。」



飛び込んだ先は大きい空洞で、その地は亡者地獄さながらだった。

強い者が弱い者を踏み殺し、さらに強者が強者をむさぼる。そうでもしないと立つ事さえままならない。


そんな地獄の先に、広い空間があり、そこに巨大な影があった。


ヴィロフォルティはまず、手近に居た5体を切り殺す。場所が空き、そこを拠点に大剣を振るう。


決死の防衛戦だ。

死なない体、死ねない彼は、戦場でいつもこの役だった。


殺されたミノタウロスは光の粒となり、消えてゆく。召喚されている故だろうが、実に好都合だ。死体の山を気にしなくて済む。


剣を振るえば、光の粒が生まれ、こちらが動かずとも、獲物は押し寄せてくる。

何より体がよく動く!剣が素直にいう事を聞く!

前に進めば獲物の中を駆け回る事が出来、うしろに飛びずざれば瞬く間に間合いが開く。

左を向けば獲物を同時に貫き。右を向けば光の粒子が舞っている。

これが()()()の感覚。()()()()()()()感覚。

腕を、大剣を振るえば、痛みの元は消えてゆく。動くものは痛みを与えることなく消えてゆく。

彼は思い出した。動くものは皆、痛みを与える。止めなければ。動かなくしなければ。

彼と大剣は、猛火の如く、動くものを消し去っていった。



五分の時を以て、3人は最下層にいた。

そこで見たものは、ニーイでさえ、愕然とさせた。

大剣とそれにまとわりつく小さな影。それがミノタウロスの群れの中を駆け回り、瞬く間に消し去ってゆく。

すでに広場の3分の一が何もない空間になっている。

奥に鎮座するのはハルバードを持ったネームド。その影はいまだ動かない。


「ほー!壮観だねぇ!でも、そろそろ召喚するはずだよ。気を抜くな。」


ニーイが二人に注意を促す。


「ヴィー!次が来るよ!」


そう叫ぶと、ヴィロフォルティは身を翻し、3人の前に立つ。


「よしよし。わかってるね。我を忘れても、ちゃんと判る様になってるね。」


満足げに頷くニーイ。対して二人の顔は蒼白だ。


「俺の獲物だ。手を出せば殺す。」


「だ、そうだよ?よーく見ておきな。キグルイの闘い方を。」


彼は不完全だが、身体強化を唱える。

奥の影が吼えた。

ダンジョンを揺らし、新しいミノタウロスたちが召喚される。その数12。

3人の前に居た人影が掻き消える。探せば、召喚された10のうち4が消え去っており、ネームドに肉薄していた。

群れがヴィロフォルティを襲う。彼は大剣を振るい前に出る。

さらにネームドが吼えた。召喚された数は6。残る数は殺し損ねを含めて47。

そしてついにネームドが動き出す。

彼は狙いをネームド一本に絞る気だ。召喚された獲物に眼もくれず、大剣を突き出す。

ハルバードが振り下ろされ、激しい金属音が鳴り響く。その間に、彼の体には何本かの槍が刺さっていた。

すばやくネームドの横に回りこみ、さらに突く。

横殴りのハルバードが召喚した同族を消し去っていく。

剣が届ないと見るや、彼は少しだけ後ろに下がる。その前を鉄塊が通り過ぎた。

その隙に召喚ミノタウロスの群れの中に飛び込む。ネームドは追撃する。

彼の大剣とネームドのハルバードで瞬く間に数を減らす。

残り数匹になったところで、彼は動いた。大剣を上段に構え、一刀に伏す。

ネームドはハルバードで防ごうとするが、剣はそれを叩き切った。

瞬時に獲物を捨て、後ろに下がるネームド。それを追いかける小さな影と大剣。

前蹴りが影を襲う。パン!という破裂音とともに、足が切り飛ばされ、ネームドが悲鳴を上げた。

続いて同じ音が鳴り響き、もう片方の足が切り飛ばされ、体が落ちた。

三度破裂音がし、地面を抉る音と共に、ネームドの首が飛ぶ。

重い音が1度。何かが落ちた濡れた音が1度。

ネームド”アスペレオ”は血の海に沈んだ。

取り残しの召喚されたミノタウロスが消え、ネームドが居た台座に宝箱が現れる。

静かに残心をとったヴィロフォルティは、大剣を背に担ぐと、不思議そうにそれを見た。


「師匠?なんか出て来た。」


ニーイは呆然としていたが、その声を聞き、相貌を崩し笑い出す。


「ダンジョンクリアの褒美だよ!貰っときな!」


宝箱をけりながら、彼は言う。


「いらない。」


ニーイの笑い声は、さらに増すのだった。




ダンジョン最奥に、冒険者達と、ギルド職員が慌ただしく作業と検分をしている。

その隅で、ヴィロフォルティは正座をしていた。


「さて、ヴィー。なんで正座させられてるか、解るかい?」


腕組みをして、笑ってはいるものの威圧感丸出しでニーイが問う。


「4発食らったから・・・。」


「そうだよ!しかもあんな()()に三手も使いやがって!!あたしの顔を潰す気かい!?」


「・・・ごめんなさい、師匠。」


「まったく!遊びすぎだ!今日のは60点だ!死合いはお預けだよ!!」


その言葉に、カジュとミィーノ、冒険者達はぎょっとする。ヴィロフォルティは情けない顔でニーイを見上げている。


「ニーイさ・・・さん?・・・雑魚って・・・・・・。」


「遊び過ぎって・・・槍が刺さってたのに・・・・・・。」


二人の声にニーイは言う。


「ヴィー!説明!」


「師匠に言われた。上位種はあんなものじゃないって。だから雑魚。それから、2手以下で沈めろって。出来たら死合ってやるって・・・。それから遊びすぎって言うのは、あんなに体と剣が自由になったのは、初めてだったんだ。浮かれすぎた。」


「そういう事だよ。」


だが、カジュは食い下がった。


「あんた槍が刺さってたじゃん!なんでピンピンしてんのよ!?」


それをニーイが遮る。


「詮索は、ご法度。だよ。」


その言葉で、それ以上何も聴けなくなった。


「さあ!ひよっこ共!!さっさと終わらせちまいな!今日はヴィーの奢りで宴会だよ!!明日はあたしが扱いてやるから覚悟しな!!」


歓声半分、悲鳴半分の声が上がる。

笑顔のまま、ニーイはヴィロフォルティに問う。


「・・・・・・お前、『声』を聞いたな?」


「・・・多分。」


「判った。あさってまで休みだ。話はその後聞くよ。さあ、帰るよ!」


そう言って、ニーイは二人を引き連れ、最下層を後にした。

遅れて立ち上がったヴィロフォルティは、剣の柄をさすり、少しうれしげに笑って、後を追った。




「御館様。ヴィロフォルティ様の絵姿が出来ましたよ。」


「早く見せなさい!」


「こちらでございます。」


「っきゃあああああ!!尊い!!尊いわぁ!!この絵師は誰!!ここに呼びなさい!!褒美を取らせるわ!!」


「王都で燻っていた、名も無き絵師に御座います。すでに十分な額と地位を与えておりますので、呼び出しは不要です。」


「見なさい!この猛々しさ!!勇ましさ!!すばらしいわ!」


「・・・・・・私には、愛らしい少年と魔物との冒険譚のように見えます。」


「アローズィ、お前、ヴィーの尊さが解るまで拷問な。」


「出来ましたら、鞭打ちでお願いします。」


読者の皆様神様仏様。

私です。

ヴィーの活躍は如何でしょうか?

散文悪文の類で大変かとはおもいますが、楽しんで書きました。

それが伝われば、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ