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転移魔法

僕の耳が文字だらけのフェルムの緋色の翼みたいな歪な形になった。そしてそれは万能耳と言うらしい。


「どう?我の耳気に入ってくれたぞ?」


フェルムが僕の顔色を伺う。緋色の翼をバサバサと僕に当てながらだ。


「い、痛いって。……あれ?僕……普通に喋れてる?」


「そりゃそうだぞ?何せ耳が聞こえるんだからね。それに……主様が今まで使っていた言語とも調整したんだぞ?古代語や精霊語も思いのままなんだぞ?」


──な、なんだって?古代語?精霊語?そして……異世界日本語だっけ?それってなんなんだよ……。ま、まぁいい。とりあえず耳が聞こえるようになった事に感謝だ。


「フェルムありがとう。今まで耳が聞こえなかった事で苦労してたんだ。君はそれを治してくれた。ううん。それ以上に便利な物にしてくれたんだよね?感謝してもしきれないよ。ありがとうね。」


「キュピ!?きゅ、急に感謝とか照れるぞ?顔から火が出るかと思ったぞ?」


この不死霊鳥はツンデレ属性なのかもしれない。何か緋色の翼が今までにも増して赤くなっている。照れると体が赤くなる仕様なのか。何かわかりやすい奴だな。


「ふふ。可愛い奴だな。これから学院生活のサポートよろしくね?」


「勿論なんだぞ。泥船に乗ったつもりでいてくれればいいんだぞ!」


──いやいや。泥船じゃダメでしょ。直ぐに沈んじゃうから。


「あ、うん。大舟に乗ったつもりでいるから。」


勿論だと言いたげに緋色の翼で自らの胸をドンっと叩くとゴホゴホと咳き込んだ。


うーん。この鳥本当に大丈夫?しかしこれから数年間は学生生活で共に生活するパートナーだ。僕は不安に思いながらも苦笑いを浮かべフェルムの頭を撫でた。


ややあって……医務室から出るとエクサレムに誘導されるまま大講堂へと向かった。


そこには丸いテーブルに腰掛ける色とりどりの代獣の卵を抱えた生徒たち。


え?みんなの代獣はまだ生まれてないみたいだった。


「皆の者。無事クラスは決まったようじゃの。そろそろ教室へ移動するのじゃ。各担任の先生方。よろしくの。アデラデス・ディスペラン。」


司会進行していた風の淡いピンク色のドレスを纏った幼女は呪文らしきものを唱えるとボワっと煙のようにどこかへと消えていったのだった。


えっと──僕のクラスって?どうなったんだ?


「じゃあ各テーブル事に移動しましょう!ではアウラムゼアスから。」


真っ黒なスーツ姿のメガネ女性がそう言うと赤いテーブルに腰掛けていた生徒たちは卵を抱えたまま一斉に立ち上がった。


「では皆さん一緒に。テーブルに手を当てて!アデラデス・ディスペラン!」


「「「「アデラデス・ディスペラン」」」」


赤のテーブルにいた生徒達はテーブルすら残さず煙のように消えてしまった。


「では次。ピスラ。」


「じゃあアッチらの番や。んなら行くで?テーブル触って唱えぇよ?アデラデス・ディスペラン!」


「「「「アデラデス・ディスペラン」」」」


またもや青のテーブルごと生徒たちは姿を消した。


えっと…僕忘れられてる?大丈夫かなぁ……と不安になるが淡々と司会は進行していく。


「では最後。ナロウマン。」


3度目は今までの呪文を覚えたでしょ?的な事で簡潔にすませようと担任らしき細身の男性がボソッと呪文のみを言う。


「いくよ。アデラデス・ディスペラン」


「「「「アデラデス・ディスペラン」」」」


……あれ?僕は?というか数名残ってる?今まで気づかなかったけどテーブルに座れなかったのか大講堂の隅の方で卵を大事そうに抱えている4名。


部屋の隅で卵を壁に向けコチラには一切の興味を持たない感じでブツブツと言っている黒髪の女性。アップにした髪が悩ましげに後れ毛を垂らしているが全く本人にその気は無さそうだ。


卵の上に乗ってクルクル回っている青髪の少年。とても同い年には見えない。身長は低く童顔。そして目が細く眠そうに見えるが卵の回る速度は尋常じゃないくらい早い。


金髪の女性は異常性しか無かった。魔力量が少ないのか卵に魔力を注ぎ込み魔力枯渇に陥ったかと思えばごくごくとポーションを飲んでまた卵に魔力を注ぐ。その所業はカオスでしか無かったがその迫力に先生方も声をかけられない様子だった。


最後の子は猫かよ!とツッコミを入れたくなる感じだった。卵を手のひらでゴロゴロと転がし思いもよらぬ方向へ行くとまた追いかけていき手のひらで卵をゴロゴロ。永遠と繰り返すうちに飽きたのか卵を放って寝始めた。なんて自由人なんだ……。


残った生徒たちを観察し終わる頃には先生達も会場を片付け始めた。僕は不安になって近くに居た先生に声をかけた。


「あ、あのぅ…。僕はどのクラスにいけば……。」


「あぁ。君…達ね。ちょっと待ってて。エクサレム様。この子達よろしくお願いします。」


「さぁ。私の可愛い生徒達よ。いざ行かん!我らの学舎へ!」とエクサレムは意気揚々と歩き出した。


──あれ?魔法は使わないの?


僕は不審に思いながらもエクサレムに着いて行った。そして校舎の外へ出るとそのままの勢いで門をくぐり城壁の外へと出る。そのままズンズン歩くこと30分。僕達は森の中にいた。そして彼女が一言こう言った。


「ようこそ。我らがアピナ魔法学院──無能クラスへ。」


どうやら僕は無能のクラスへと配属されたみたいだった。

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