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クラス分け

いてててて。地面に突っ伏した時に顔面を擦りむいた。それでも上空数千メートルから地面に叩きつけられるよりは随分マシだろう。


あの声から察するにアウム様が転移魔法と一緒に設置した衝撃吸収とかの魔法なのだろう。


ありがたいんだけど始めから知ってれば怖い思いしなくても済んだんじゃないかな?と思うと怒りが込み上げてきた。


アウム様が亡くなって約1ヶ月だがまだどこかで生きているんじゃ?と勘違いしそうなほどアウム様の魔法に触れているな。


さてここからアピナ魔法学院へはどう行ったら……。


僕は周囲を360°見渡した。すると─


おい。師匠。ふざけすぎ!また矢印が空にふわふわ浮いてる。なんなの?ストーカーなの?まぁ親切心なんだろうけど……。最早少し恐怖を感じるよ?この矢印に従って良いのかも不安になってきた。


しかも親切丁寧に【イース君こっちだよ!】って書いてある。いくらなんでも恥ずかしいから辞めて欲しい。これって他の人も見え……ないよね?もしこれが見えてたら……師匠を蘇らせて3回殺そう。うん。そうしよう。


しかしアピナ魔法学院の場所を知らない僕は不承不承矢印に従うことにしたのだ。


程なくして──


こりゃ凄い!まるで御伽噺に出てくるお城じゃないか!


荘厳な佇まいの白亜の古城。城壁は非常に高く凡そだが100m以上はあるだろう。空には鳥なのか飛行する物体が数体確認できた。


僕が城門の前にたどり着くと矢印はポンっと軽い音を発し消えた。そして煙の中から3枚のコインが落ちた。


──金貨?見た事ない模様だな……。


3枚の金貨を観察するとそれぞれ違った肖像画が描かれていた。老人、美女、王様の3枚だ。その中でも髭面の老人が僕を睨んでいるではないか。金貨の隅々まで見ようと金貨の向きを変えても老人の眼球が僕を捉えて離さない。少し怖く感じ、裏返すと「挨拶も出来ないのか?最近の若いもんは……」とブツブツ声が聞こえた。金貨の裏側には目の前に広がる古城が描かれており光が差し込むと虹色に輝く。


─えっと……挨拶した方が良いのかな?


「こ、こんにちは。僕はイース。ロココ村から来ました。よろしくお願いします!」


城門には少なからず人影があって金貨に挨拶するなんて少し恥ずかしかったが髭面の老人のボヤキに耐えられなくなった僕は声を抑えつつも金貨へ挨拶をした。


「ふん!始めからちゃんと挨拶すればいいものを!おい。通してやれ。」


髭面の老人がそう言うと目の前に扉が現れ勝手にドアが開いた。中を見ると僕の年齢に近い子供達がキャッキャウフフと騒いでいた。場所は談話室の類だろうか。中央に置かれたテーブルと煉瓦で造られた暖炉が印象的な部屋。じーっと見つめていると中から手招きされた。どうやらこちらの様子も分かるようだ。


「はよ行かんか!この馬鹿者が! 」


「は、はぃぃ!」


僕は咄嗟に返事をすると扉の中に飛び込んだ。扉を通る瞬間ぬるりとした少し弾力のある液体を通過した気分だった。


中に入ると先程扉の外から見たものと同じ風景が広がっていた。ぐるりと見渡すと同年代の制服を着た生徒たちが何やら楽しそうに会話しているようだ。


「あなた新入生ね?こんにちは。私はエリーゼ。アピナ魔法学院の初等部2年生よ。」


サラサラとした美しい金髪の女性が快活に笑い僕に話しかけてきた。


んー読唇術で見る限り……挨拶してくれたんだよね?じゃあ挨拶し返さないと……。


「こ、こんにちあ。僕わイース。よおしぐ。」


「……あれ?君……もしかして耳が聞こえないの?そっか。聴覚が代償なんだね。こっちへきて?」


その女性は僕の手を笑顔で握ると少し引っ張りどこかへと連れて行きたい様子。ついて行っていいものか少し悩んだがここにいても何をすればいいのか分からない。結局僕は彼女について行くことにした。


彼女が杖を振るとどこか違う場所へと移動した。そこは教会の中のようだった。しかし女神や神像の類は無かったので教会とは違うかも知れない。


ステンドグラスに囲まれたアーチ状の天井。差し込む光は煌びやかで部屋の中央に置かれた祭壇のような机には金属で出来た器が置かれ7色に光っていた。続々と集まる生徒たち。その数凡そ100名。ローブに身を包んだ大人たちも集まる。多分だが教師達だろう。


「さぁお待ちかねのクラス分けの時間だ。」


僕の頭の中にも直接言葉がねじ込まれた。念話の類だろうか。


ワーワーワー!パチパチパチパチ!


─ん?今から何が始まるんだ?クラス分け?入学試験とかないのかな?


ボンッ!


え?た、卵?僕らの手には卵が1つづつ配られた。先程僕をここへ連れてきてくれた女性の手には無い。


「皆の手の中にあるのは代獣の卵。そなたらの代償を補い魔力器官を手助けする代獣(カリオス)となる。そしてその色を持ってクラスを分ける事になる。では……早速魔力を注ぐのだ。」


続々と光り出す代獣の卵。赤、青、緑、紫など様々な光を放つ。どうやらこの色によって魔力の特色があるみたいだ。喜ぶ者もいれば嘆く者もいた。


ふぅ!僕は魔力を代獣の卵に込めた。しかし──僕の卵は無色。少し中身が透けている。元々の色から少し変化はあったがそれだけだ。それが良いのか悪いのか……。

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