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日が経つ感覚を久しぶりに覚えた二日後。
今回の緊急予算会議はいつもの会議室ではなく、第二課長である潮様の執務室で行われることとなった。
各課の課長の趣味が色濃く反映される各課の館舎。
この第二課は東洋・日本の平屋建築で建てられている。
広い執務室の中に入ると、すでに低い長机と座布団が並べられていた。指定があった一つの長机にフェルナンド様と隣り合って座る。
どうやら一つの机に各課の課長と副官が座り、それが六つ。床の間を背にする第二課と入り口を背にする第五課を除いて縦に二つの課分の机になっているらしい。
続々と集まる各課の課長達。
その顔は三者三様であり、その後ろに続く副官達はほとんどが胃痛を覚えているのか、苦笑いと共に胃をさすっている者もいる。
定刻となり、全員が席についていることを確認した潮様が口を開いた。
「みんな。忙しい中、集まってもらってすまないね」
「前置きはいい。時間が惜しいから、さっさと始めてくれ」
「そうだね。シャルル、進めてくれる?」
「承知しました」
一人、机につかず、少し離れた場に座っていた第二課会計担当のシャルルが立ち上がって一度頭を下げた。
「さて、皆さまにお集まりいただいたのは他でもありません。各課に振り分けられる予算において、今年度より仕様変更がございます」
「仕様変更?」
「あー。その点は俺が同席していたから。俺から話すよ」
シャルルの言葉を遮ったセレイル様の言葉に応えたのは第一課の課長、昴様だった。
翁の補佐役の職務を司る第一課は、職務柄よく翁が出席する会合などついていくことが多い。
いつもの人好きのする笑みに少し苦いものを交えた昴様は、胡坐をかく足先を両手で持ち、落ち着かない様子で身体を前後に揺らしている。
「実は、さ。翁からはおっしゃらなかったんだが、先日の翁と調停三査の会合で」
「ちょっと待った。その時点で既に嫌な予感しかしないんだけど」
「あっはっは。さすがだな、レオンは。その通りさ」
「はぁー。勘弁してよ」
否定しない昴様に、レオン様は両手を伸ばした状態で机に突っ伏してしまった。
今だ理由を知らない他の三つの課長達も調停三査の名が出ただけで顔を歪めている。
「昴。続きを話せ」
「あぁ」
「今まで元老院の各課の予算組みは、前年の全体収益の一部を除いたものから各課同額予算振り分けだっただろう? 今回からは定められた額から各課の奪い合いもとい振り分け制にした方が必要な所に予算がいくだろう、と」
「……へぇ。調停三査にしてはまともなことを言うね」
「やっぱりか。お前ならそう言うと思ったよ。後はそこで目を輝かせてる副官がいる第三、四。あと、第六もか」
言葉の意味を理解するほんの僅かの間の後。
レオン様がニッと口角を上げると、それを見た昴様の顔がぴくりと引きつった。
「潮、これは俺達限定で嫌なことだったらしい。こいつらと渡り合うには骨が折れるぞ」
斜め前に座る潮様に、昴様が座布団ごとずらして寄っていく。
「悪いけど、うちも予算は欲しいんだ。財務から学園管理まで職掌が多岐に渡っているからね」
「……おいおい、マジか。これは……荒れるぞ?」
第一課と第二課の間に立っているシャルルを、昴様が振り返って見上げる。
シャルルといえば、それはもう想定できていたようで、コクリと頷いて下がった眼鏡をずり上げるだけに留めた。




