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第一課が一度却下された出張費の増額は微増ということで許可が出された。
翁に同行する以上、外出する日数も多く、それに伴う出費もある。また、先んじて第二課の会計担当から業務分担された論功行賞、つまり賞罰を査定するという業務も担っているために、各課の業務を内密に調査しに外勤に出ることもある。
今までは自費で賄うことも多かったようだが、直近日での山のような請求書の束を持参していたが故に鷹だけでなくシャルルも首を縦に振らざるを得なかった。
そして、次に第二課。
第二課が申し出たのは元老院に併設する人外の子弟達が通う学園の実技施設の増改築費用だった。
こちらはなんといっても未来の部下達が通う場。元老院に入る前に実力をつけておいてもらわないと困るということで、どこからも不満の声は上がらず、早々に決まった。
「では、第二課が申請した学園の実技施設の増改築費用は微増で許可、ということで」
「おぅ。許可っと」
鷹が各課の予算案の写しに変更になったものを青地で書き込んでいく。
次はいよいよ第三課だ。
「それでは、第三課長カミーユ様。どうぞ」
「コリン」
「はい。第三課は僕から。僕達第三課は捕縛時に破壊した建物等の修繕費の増額をお願いします。賊の抵抗があった場合、周囲および潜伏中の建物をある程度破壊することは業務上致し方なく、賊の戦意喪失にも繋がります」
「はい、ちょっと待った!」
「え?」
手を挙げて話を差し止める。
「星鈴様? どうかなさいましたか?」
「その建物等の修繕費、本当に予算からの振り分けが必要でしょうか?」
「……と、いいますと?」
「先程コリンが言ったことは確かに最もなこと。けれど、それは破壊した建物が必要数だった時の話」
風呂敷包みに入れて準備してきた紙を皆の前でコリンに、というより第三課に突きつける。
その紙に書かれているのは棒グラフと実線グラフ。捕縛件数と破壊された建物等の件数を表している。
その見事な乖離具合に、コリンはしまったとばかりに一瞬目を泳がせた。
「……そ、それは」
「僕の所にも報告が来てるよ。随分と派手にやらかしてる時もあるって。予算で足りない分は君やその馬鹿の私費から出してるらしいから君には同情するけどね」
僅かでもそんな反応を取ってしまったものだから、追い落とす好機とばかりにレオン様からも追撃を食らってしまっている。
「.……お二人の情報網を疑うつもりはありませんが、この情報には捕縛時の規模や敵の抗戦度が加味されていないので、一概にそうだとは言えないのではありませんか?」
それでもすぐに状況把握して立て直そうとするところはさすが。即座の判断が必要とされる死地を数多かいくぐって来た第三課の副官を務めるだけある。
けれど、こちらもそう来るということは想定済み。
持っている紙を裏返し、コリンが言ったようなグラフが追加されたものを見せた。
すると、え゛っと何かが潰れたような声を出し、コリンは固まってしまった。
よしよーし。副官はこれで落ちた。
机の下で小さくガッツポーズ。
たとえこの予算が第六課に回ってこなくても、先日の意趣返しはさせてもらった。
ただ、この内心の喜びも長くは続かなかった。




