世界の秘密(1)
僕が生まれる何年も前・・・
少子高齢化や病死など、今では考えられないことばかりだったらしい
これらの問題が解消できたのは
なんといっても『再生医療』の進歩によるものだろう
特別な細胞が発見され、再生不可能とされた心筋や角膜を蘇らせることができた
しかも自己の細胞から増殖することが可能で
他人の臓器を移植した時に起こる拒絶反応もない
当時はシート状の細胞しか再現できなかったが
今では僅かな細胞から完全に四肢や臓器を構築することができる
外見や体格に関係する美容にも再生医療は用いられ
80歳を過ぎても若々しい外見で過ごすことが可能となった
そう、お金さえあれば人間は元気で死ぬことが無くなったのだ
困ったのは政府である
人口の増加と食料問題だ
死ぬことがないため 人はどんどん増え続ける
大勢の人口を維持するだけの食料や土地が足りなくなってしまうと争いが起きる
政府は今後の対応に頭を悩ませることとなった
しかし予想外のことが起きた
何かしらの再生医療を受けた人間は皆
100歳を迎える誕生日の約1週間前に突然深い眠りにつくのだ
そしてちょうど100歳の誕生日そのまま息を引き取る
原因は未だに解明されていない
突然死を怖がり再生医療を拒む人もいたそうだが
100歳までは確実に生きられること
病気の苦痛から逃れ、若々しい姿を保つことができる等
様々なメリットから徐々に再生医療は受け入れられていった
そして政府は年金の廃止と生涯勤労(特別な場合を除く)の2つを義務とする代わりに
再生医療の保険適応に踏み切ったのだ