月曜日(1)
「ぱぱーおくれるよー」
カーテンの隙間から差し込んだ日の光が顔面を直撃する
眩しい・・・
また月曜日が始まってしまった
どうして休日は一瞬で過ぎ去ってしまうのか
「もぅ!ぱぱ!!!」
「・・・起きます 起きます」
可愛い娘の高い声は寝起きの頭に響く・・・
あちこち跳ねた髪の毛を撫でつけながら、ようやく僕はベッドから起き出した
「大地くんおはよう」
「ぱぱおはよー」
「おはよう、今日もカナちゃんは朝から元気いっぱいだね」
娘の頭をわしゃわしゃ撫でながらテーブルにつく
「かなちゃんはいつもげんきなの!」
僕と同じ寝癖たっぷりの髪は、僕と違ってお日様の匂いがする
「大地くん早く食べないと遅れるよ」
「ん、いただきます」
今日の朝ごはんは豆腐とわかめの味噌汁と納豆、ほうれん草のお浸しだ
味噌汁を一口啜るとほわっと暖かいものが身体中に沁み渡る
手料理を作る家がどんどん減っていく中
文恵は頑なに自炊にこだわっている
どこの家庭でも主食となりつつある簡易食は味気なく《愛がない》そうだ
「今日遅くなる?私は定時に帰れそうよ」
「あぁ・・・なるべく早く帰れるように頑張る」
20歳を超えてから死ぬまで、なんらかの職に就かなくてはならない
国民皆勤労のこの世界・・・
我が家も例に漏れず夫婦共働きだ
「きょうは ひぃばぁばのひだよ はやくかえってきてね!」
「そうだった!早く帰ってくるからね!行ってきます」
曾祖母は妻の祖母
《曾祖母の日》とは98歳になる祖母とのお食事会である
【おやすみの日】まであと2年となり
お義父さんが皆で曾祖母を囲む毎月1回の食事会を提案したのだ
(食事会は楽しいんだけど、お義父さんの話は長くて帰りが遅くなるんだよなぁ)
僕たち人間は 生まれた日からちょうど100歳で寿命を終える
そして次に生を受けるまで長い眠りにつくのだ
100歳の誕生日、それが【おやすみの日】である
再生医療が保険適応になってから早40年・・・
事故で失われた手足は1週間の入院で完治できるし
3大死因「癌・心臓病・脳卒中」はいまや「老衰・自殺・事故」となっている
【おやすみの日】は平等に訪れる
・・・いや 平等に訪れなければならないのだ