異世界の壊れたお話 ~And crazy tale~
ある時、あなたは一人の女を殺しました。
そして、連れの男は言いました。
「こんなはずじゃ……こんなはずじゃなかったのに……!」
そんな哀れな男を見て、あなたは言いました。
「また異界の者が乱造されてやってきたのか……」
あなたはため息をつきました。何故なら、目の前の男を殺さなければいけないからです。
異界人が乱造されてまた一人また一人と異界からやってくる。それをしばらく放置してしまうと、この世界の人口が増えに増えまくり、いずれは害が生まれてしまい、この世界が崩壊してしまう。
……だから。……だから、あなたは手に剣を握り異界人を処分しなければならないのです。
この世界の人口を一定に保つために。この世界を救うために。
だけど、あなたはそれをどうしてか、毎回毎回躊躇いを覚えて殺していた。
相手は同じ人間だから。相手の人生を自分が奪ってしまうことになるから。
あなたはまたそんな躊躇いをして、泣いて、また一人、目の前の男を切り殺した。
チートを遥かに凌駕する、その剣を握り締めて。
……あなたはある時、不幸のどん底に落ちた顔をした異界人の少女を切ることになる。あなたは少女の顔を見て、深い悲しみに襲われた。
何故、こんなにも不幸な少女を殺さなければいけないのかと。強く、強く葛藤した。
しかし、あなたは使命が課せられていて、それに対して逆らうことはできない。
だから、あなたはひどくひどく怒りを覚えた。
この理不尽な世界に。この理不尽な世界を支配している何者かに。
けれども、結局使命には抗うことができず、少女の喉元に目にも見えない早業で剣を当てて、そして五秒経った後、その少女の命を摘み取った。後悔をしながら。罪悪感を感じながら。
あなたはそうして次の日、少女の死に場所に花を添えた。きれいなきれいな髪飾りとともに。
……あなたはある時、一人の生意気な性格である少年を切り殺すことになった。
あなたは最初は躊躇いを覚えた。
……だがしかし、少年は年端もいかぬ少女を取っ替え引っ替えして遊んで、罵って、暴力を振るって、他人の手柄を横取りして、などと、少年の今までの行いはあまりにもひどいものであったために、あなたの考えは段々と変化していくようになる。
まるで、悪霊に取り憑かれたかのように。人格が次第に歪んでいって。
こんなような少年をざっと三十人くらい切り殺した時、あなたは既に理性をほぼほぼ失っていた。
あなたがわかっていたことは、「人を殺す」ということだけ。
使命を課され、それを全うし、狂ったように何度も何度も人を殺し続けていたために、ついに壊れてしまったのだ。
……あなたはある時、モンスターになって異界より転移してきた者を切り殺すことになった。
あなたは思った。
「やった。これで葛藤せずに済むぞ」
あなたは本当に壊れてしまっているようだ。
あなたはそうして、身体の中身から込み上げてくる笑いとともに、そのモンスターをなんとも思わずにバッサリと切り殺した。中身は異界人なのだと知っていながら。
……あなたはある時、気づいてしまった。このチートな剣があれば、この世界を支配している者を切り殺せるのではないか、と。
あなたはそれに気づくと、すぐさま実行に移してみた。
剣を握り締めて、強く強く灰色の空を目掛けて剣を振るう。空がパカッと割れて、黒い黒い漆黒に包まれた世界と適当に並べられた無数の数字が露になった。
あなたは初め、この先何をすれば目的を達成できるのか悩んだが、とりあえず数字をすべて叩き割ることから始めた。
しばらくして、無数に並べられた数字をすべて壊す作業が終了した。
それをすべて壊すと、世界は崩れさっていって、無だけが残った。
あなたは違和感を覚えた。何もないわけがない、と。
そうして、あなたは無の世界でそれを闇雲に探し始めた。休むこともなく、瞬きもすることもなく。
……そうして、あなたは私を見つけ出した。この世界を支配している、私を。
あなたは私を見て、何も思わなかった。
そうして、あなたは私を殺して、この何もない世界でただ一人ぽつりと立っていた。やってくるはずもない新たな異界人がやってくるのを待つために。




