第0話 金のオオカミと宝石のウサギ
昔々、あるところに金色の毛皮を持つオオカミと宝石のような目を持つウサギがいました。
「なんて素敵な金の毛皮」
「あなたの瞳もとっても素敵」
二匹は全く別の種族でしたが、その姿を見て一目で恋に落ちました。
しかし、彼らの家族はそれを許すわけがありません。
オオカミの家族は言いました。
「ウサギなんてただの餌だ!あんな弱い生き物と一緒にいたら、お前まで弱くなってしまう」
ウサギの家族も言いました。
「オオカミと一緒にいるなんて怖くて仕方ない。きっと、そのうち頭からパクリと食べられてしまうよ」
そうして、二匹の家族は言ったのです。
『一緒に暮らすなんて絶対に認められない!』
家族に理解してもらえなかった二匹は、泣く泣く住み処を逃げ出しました。
満月の夜に、手と手を取り合って二匹が幸せに暮らせる地を目指したのです。
野を越え山を越え。
二匹が静かに暮らせる場所を探してさ迷いました。
そうして、どれくらいの時が過ぎたでしょう。
二匹はある森にたどり着きました。
そこは、逆さ虹と呼ばれる森でした。
なんでも、その森では逆さまの虹がかかるのだというのです。
そんな不思議な森ならば、自分たちのことも認めてくれるかもしれない。
そう思ったオオカミとウサギはその森に暮らし始めました。
森の生き物たちは最初こそ二匹を遠巻きに見ていましたが、そのうち普通に接してくれるようになりました。
こうして金のオオカミと宝石のウサギが逆さ虹の森に住み始めて何年か経った頃。
ウサギが一匹の子どもを生みました。
それは、金茶色の美しい毛皮と黄金の目を持つ可愛らしいキツネの赤ん坊でした。
二匹はとってもビックリしましたが
こんな自分たちから生まれたのだから何も不思議なことはないだろう。
と笑い合いました。
こうして、金茶色の毛皮と黄金の目を持つキツネは金のオオカミと宝石のウサギから大切に育てられることになったのです。