世界一の墓
ようこそこの小説へ
今回で第4話となります。
最近は寒くなってきましたが、まだまだ夏は終わりそうに
ありませんね。
今回の主人公は海に遊びに来た大学生です。
それではどうぞ
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これは大学生の頃、友人達と海へ遊びに行った時の話です。
尚、以下に出てくる人名は全て仮名です。
その日、僕は友人である田中と佐藤の男3人で、海へと遊びに来ていました。
具体的に何処へ行こうと決めていたわけでもなく、なんとなく海際を車で流して、空いてる砂浜が見つかったら適当に遊ぼうとか。
まぁそんな感じの集まりでした。
「おい、ここいいんじゃねーの?」
「バカ、メチャ混みだろ。もっと空いてるとこがいいよ。」
お互いそんな事を言いながら車を走らせている内に、人の多い海水浴場から少し外れた岩場混じりの砂浜を発見。
沖合でウィンドサーフィンをしている人達がいる他は殆ど人もおらず、如何にも穴場っぽいその雰囲気が気にいった僕たちは、車を止めてそこで遊ぶことにしました。
海に入る前、皆で持ち込んだ浮き輪やフロートマットをシュコシュコと空気入れで膨らませます。
正直、僕はあまり水泳が得意ではなく浮き輪は生命線。その点で言えば、田中も佐藤もどっこいどっこいです。
水遊び自体はなかなか楽しいものでした。
人の居ない海は快適で、天気も快晴。絶好の海水浴日和です。
ビーチボールで遊んだり、フロートマットで水辺を漂ったり。
そうやって海遊びを満喫していると、田中がトイレに行ってくると言い出しました。
「ションベンならそこらですればいいじゃん。」
「うるせ、大だよ大。向こうの海水浴場にトイレあるの見えたから、ちょっとそこまで行ってくるわ。」
田中を見送った後で、僕もなんとなく休憩する気分になり、波打ち際に置いたフロートマットに寝転がりました。
それから10分ほど経ったでしょうか。
マットの上で少しウトウトしていると、海の方から人を呼ぶ声がして、僕は目を覚ましました。
「おーい」
何処から呼んでいるのかと辺りを見渡すと、少し沖合で佐藤らしき人影がこちらに向かって手を振っているのが見えました。
「おーい」
「なんだ?なんかあったのか?」
「おーい」
声を掛けましたが、向こうは聞こえてないのか、こちらに向かって手を振るばかり。
仕方がないので、佐藤のいる沖へ向けてフロートマットを漕ぎ出します。
「おーい」
「お前何やってんだよ。大して泳げないくせに。」
「おーい」
近付きながら声を掛けますが、こちらが何を言っても向こうは「おーい」と繰り返すだけです。
一体何なんだ?と訝しんでところで、僕は気が付きました。
(え?あいつ誰だ?)
背格好が似ていたのでなんとなく佐藤だと思いこんでいましたが、よく見ると全くの別人です。
しかも相手は浮き輪すら付けていません。
僕より水泳が苦手な佐藤が、こんなところまで浮き輪無しで来られるわけがないのです。
いつの間にか呼ぶのを辞め、無表情のままじっとこちらを見つめているその男。
僕はゾーッとし、慌てて向きを変えて砂浜に戻ろうとしました。
しかし潮の流れが早く、幾らバタ足でフロートマットを押しても一向に砂浜へ戻れません。
そうしている内に、ガッと何かに右足首を掴まれました。
グイグイと物凄い力で海に引きずり込まれ、必死になってもがくものの、遂にはフロートマットからも手が離れてしまいました。
そんな時ふと下を見ると
僕 を 下 に 引 っ 張 る 男 が い た の で す
あまりの光景に海水を飲んでしまい、
体がどんどん下に引きずり込まれていきます。
(やばい、死ぬ!助けて!)
遂には太陽の光が見えなくなったその時です。
「海の中に、人が、いる!拾いに、いこ!」
という声が微かに聞こえたと思うと
「あっこの海、破いッ!」
いきなり海がまぶしく輝いたかと思うと、
ドォーン!!!
海が突如、噴水のように上に水が持ち上げられました。
そしてサーファーボードに乗った青年にキャッチされました。
そしてお姫様抱っこのまま陸に連れて行ってもらいました。
僕を助けていただいた青年は寺生まれのTさんというらしく、
たまたまサーフィンの練習をしていた時に僕を見つけてくれたという。
「ちなみになんでサーフィンの練習していたんですか?」
「モテたいから」
今日も海はなびく、人の様々な思いをのせて
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さあいかがだったでしょうか
海、それは何億年もの死体や念が溜まっている場所です。
そう考える海は世界一古い墓なのかもしれませんね。
それではまた次回で
今回の元ネタは「おーい」でした。
もし原作者の方がいて不快と感じれば削除します。