4 街までの道のりは長い
今、私は街を目指すために湖の岸辺をひたすら歩いているが湖が大きすぎて進んでる気がしない。
かれこれ2時間ぐらいは歩いてはずだが景色に対して変化がない。
湖は湖の底が見えるほどに透けていて、水面に木々が映っていて見とれる景色だけど歩いても歩いてもその景色しか見えないとさすがに飽きてくる。
せっかく美しい景色を見るなら、お弁当とか持ってきたり何も目的がないときにのんびりと見にきたい。
それに私の今の目的は湖の向こうにあるらしい街に行くことだから、のんびりと景色を眺めている暇がない。
ぼうっとしていたら日が落ちてしまう。
後、どれくらい森が続いているのかはわからないが日が落ちてしまう前に森を抜けないといけない。
こんな何処かもわからず、どんな危険が潜んでるかわからないような森の中で夜を過ごすのは危険だからだ。
私は休みことなく歩き続けた。そうするとやっと最初に立っていた反対側の岸辺にたどり着いた。ここに来るまでに4時間は軽くかかっていると思う。
出発したときは太陽が頭の上に登っていたのに今は太陽が傾き始めている。反対側の岸辺に着いたからと言って森を抜けれたわけではない。と言うよりもまだ森の中にすら入っていない。
このまま森の中に入れば確実に森の中で夜を過ごさなければいけなくなる。
それなら今のところ生き物に出会っていないこの湖の近くで火を焚いて夜を明かした方が安全だろう。
私は無理に先に進むことを諦め、焚火をするために燃やせそうな枝を探すことにした。
森の中にはなるべく入らず枝を探し、リュックの中に入っていたライターで火をつけた。
日がおちる前に火をつけることが出来て一安心した私はひとまず今自分がどういう状況なのか、今自分が持っているものなどを確認することにした。
今わかっていることは、私がここにいるのはあの声の持ち主に連れて来られたからで、ここは地球じゃなくて異世界であるということ。そして冬弥もこっちに連れて来られていて私は彼を探さないといけないということ。
でもとりあえずは街に行って、この世界の事について知ることや私自身の生活をどうにかしないといけないということが先かな。
冬弥のことは心配だけど自分自身のことをまず何とかしないとね。
冬弥の事だから急がなくても大丈夫だと思うしね。
とりあえず状況確認としてはこんなものかな。次は持ち物の確認だよね。
リュックから持っているものを取り出し、順番に並べてみた。
-持っているもの-
タオル、ライター、水、ナッツ類の袋詰め、ジャーキー、筆箱(筆記用具、カッター、ハサミ、テープ)、メモ帳、スマホ、財布、裁縫セット、懐中電灯、鈴、笛、簡単救急セット
今持っているものはこんなものかな。今使えるとしたら水とナッツ類かな、しかし普段からいろんなものを持ち歩く癖があって今以上に良かったと思ったことはないね。
実家がど田舎にあったものだから野生の動物が出てきたり、家から店までものすごく遠くて道の途中で何かあってもどうしようもないとか、そんな都会では考えられないような生活をしてきたものだから何があってもいいようにいろんなものを持ち歩く癖がついてしまっている。
しかしその癖のおかげで火を簡単につけることが出来たし、食べ物とか軽い怪我なら何とかなるし一応カッターとかもあるから今日ぐらいは何とかなるかな。
まぁ何もおこらなければの話だけどね。
私はとりあえず食事としてナッツ類を少し食べることにした。
他にすることもないのでのんびりナッツを食べているとガサガサと近くから音がした。
私は食べていたナッツを鞄にしまい護身用にカッターを握りしめて音がした方を向いた。
ガサガサ…ッガサ…。何かが飛び出してきた。
飛び出してきたのはリスのような姿をした生き物だった。
リスのような姿をしているが額に水晶のようなものがついているのでリスではないことは確かだ。
リスはこっちに気付いても敵意を向けてくることもなければ近寄ってくることはなく、じっとこっちを見てくるだけ。
しばらくにらみ合いをしてみたが襲ってくることも、逃げることもしないので一歩近づいてみると、リスもどきは一歩下がった。
・・・。とりあえず襲われることはなさそうなのでとりあえずカッターをしまい放っておくことにした。
ただどういった生き物なのかはわからないので気は抜かないようにし、夜をそのリスもどきと一緒に過ごすことになった。
結局朝になってもリスもどきはどこにも行かず相変わらず遠くも近くもない距離で寝ていた。