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空の色

作者: ろじぃ

 空の青さを眺めて、幸せに感じた事なんてあっただろうか。

 ただ流れていく雲を見て、時間が経っていく事を忘れた事があっただろうか。

 もしかしたら私は、何かを求めていたのかもしれない。

 あの頃と同じ様に。



 重く淀んだ空気、頭まで響く騒音、暗く沈んだ視界。

 そんな世界から逃げる様に、私はこの場所を抜け出した。

 何の身支度もしないままに。

 行ける場所なんて限られていた。だから、その全てに行く事にした。



 近くの公園には誰もいなかった。

 ベンチに座り、昔を思い出す。

 私が子供の頃は、この公園で友達と遊んでいた。

 滑り台を逆から登ったり、ブランコから飛び降りたり。

 今考えてみたら何も面白くない事を、あの時は笑って楽しんでいた。

 あっという間に過ぎていく時間に、もう少しだけここに残りたい気持ちだけを伝えて。



 昔あった喫茶店は薬局になっていた。

 小さい頃は病院で点滴を受けるのが嫌いで、泣いて喚いていた。

 その度に看護師を困らせていた。

 何とか事を済ませると、いつもその喫茶店に駆け込んでマスターに慰めてもらっていた気がする。

 そんな時に食べさせてくれたカレーの味は、もう忘れてしまった。

 美味しかった。そんな思い出だけを残して。



 友達と作った秘密基地。

 ただ木に網をぶら下げた、子供の自己満足。

 それでも、危ないからと大人に壊された時は、虚しさを覚えた。

 自分も大人になったら、同じ事をするのだろうか。

 子供の小さな楽しみを、理由をつけて簡単に壊すという事を。



 習い事は嫌いだった。

 勝手に押し付けられて、無理やり通わされて。

 ただただ課せられた事をやっていく。そんな日々。

 あんな出来事が今、自分の力になっている。

 これは一体、誰のどんな努力のお蔭なのだろうか。



 私のいる場所は、子供の頃と同じ場所。

 あの頃は綺麗に見えていた世界。でも今は濁った世界。

 同じ場所なのに、どうしてそう見える?

 人も物も、あの頃とは全然違って見える。

 飽きてしまったから? 物事を見る事に疲れてしまったから?



 夕暮れ時。夕日を背に、帰路につく。

 ふと振り返れば、真っ赤な空が広がっていた。

 あの頃と同じ空。

 どんな風に見えたのだろう。

 もしかしたら、今考えている事と同じ事を考えていたのかもしれない。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

リハビリも兼ねて、短編小説を書かせて頂きました。

楽しんで頂けたら幸いです。

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