第3事務タイム
面談が終了した後は、当社独自の管理システム内に顧客の情報を入力していく。結婚願望のある人達の多さに最初はびっくりしたが、それ以上に世間一般的に変態と言われそうな人達の多さに素直に引く。
面談が終わった福田大に関しては、一貫性があること、逆に気持ち悪さがあまり無いことが僕としては好評化だった。しかし、ミクルンは簡単には見つかるまい。長い目で見守ろう。苦いブラックコーヒーが染みる。
「ミチリン〜、またお客さんでちゅよ〜。」
課長、流石にそれは痛いでちゅよ。ほんと自由人。
席から離れ、入り口を見ると、先ほどの小汚いデブリンとは対極に存在する、眩しすぎて見えないくらいの美人が立たれていた。
「いらっしゃいませ。本日はどうなされました?」
近くで見ると、さらに眩しい。ハーフなのだろうか。長い金髪に真っ白な肌、服の上からでもわかる胸の膨らみ、僕の2倍くらいありそうな長い脚。横浜で勤め始めて早4年。1番の美人かもしれない。
「結婚したいな〜と思いまして、恥ずかしながら来ちゃいました。」
全然恥ずかしくないですよお客様。自分の方が恥ずかしくなりそうだ。
「かしこまりました。それでは席にご案内いたします。」
先に椅子に座ってもらい、僕はオーダーがあったコーヒーを注ぎに行く。
「光村!やべーだろあれは!5度見くらいしたし、課長以外まだみんな見てるよ。いやーびびったわ〜。」
鈴木くんがたまらず話しかけてきたが無理もない。誰かに話さないと気が済まないくらい彼女は美人だ。
「絶対成立すんじゃん。試しなんて何回あっても足りないくらいだろう。いやー羨ましい。」
確かに彼の言う通りだ。試しなんて何回あっても足りない。しかし何故だろう。彼女はここを必要としないはずだ。
1日に100回くらいナンパされそうなのに。
「しっかしあれよあれ。なんかどっかで見たことある気がするんだよな〜。テレビかな〜。」
どこかのモデルかもしれない。そう言われても不思議じゃないし、モデルじゃない方が不思議かもしれない。
ミルクと砂糖を足し、天使の待つ席へ舞い戻る。
「お待たせしました。お気付きでしょうが申し訳ございません。お客様ほどの美人さんが来るなんて滅多にないもので。」後ろを振り向くと、従業員は皆視線をそれぞれのパソコンへ戻した。ほんとわかりやすい人達だ。
「全然大丈夫ですよ。慣れていると言ったらあれですけど、まあ、慣れています。」
屈託のないサンシャインスマイルが眩しい。眩しすぎる。
「分からないので質問させてください。お客様ほど美人であれば、結婚相手には困らないと思うのですが。何か私どもでお力添えできれば幸いですが。」
「いえいえ。まあいろいろあるものですから。」
眩しすぎる太陽に一瞬だが雲が遮った。取り除ければ良いのだが。
「かしこまりました。それではこちらの用紙にご記入をお願いします。」
綺麗な字で美人は記入していく。
名前は久石ひかり、年齢24歳。
記入していたペンが一瞬止まったが、また美しい字で書き始めた。
職業:風俗嬢