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第2ラウンド(ミクルん男の正体)

「お待たせいたしました。それでは資料を拝見させていただきます。」

男はスマホを見ながらニヤニヤしていた。

もっぱら二次画像でも見ているのだろう。

名前は福田大。年齢30歳。見た目より若いこと少し驚く。僕と5歳しか変わらないのか。

職業は不動産経営。不動産経営?

推定年収2000万。2000万?!

この男もしかしたら...

「職業は不動産経営となっておりますが?」

男はスマホさら目を離さずに淡々と答えた。

「ああ。僕の両親がいわゆる地主ってやつでね。僕はその中の少しを分け与えてもらってるんだよねー。」

やはりそうだった。

福田不動産は横浜市では割と名の通っている不動産会社だ。目の前にいる男は、そのご子息というわけだ。世の中見た目で判断してはいけないものだ。

名村課長に言われたことがある。

古い小汚い小売店と、真新しい綺麗な小売店があり、仮に営業に行った場合、古い小売店が狙い目だと。古いということは、昔から商売を営んでいて尚且つ現在まで続いているということ。続いているということは、何かしら原因があるということだと。

言われてみれば納得したが、人間何かと綺麗なものに目がいくものだ。家以外でもそれは同様である。

年収2000万か。羨ましい限りだな。

僕は資料に再び目を通した。

相手の希望年齢「18歳」突っ込まずに流すことにした。

理想の性格「ミクルん」

理想のデート「ミクルん」

理想の身長「ミクルん」

備考欄「ミクルん」

....

ここまでいくと逆に清々しい。

「お客様。ミクルんが愛おしい気持ちは察します。ただ、この条件にヒットする女性は少ないかと思われますが。」

僕はこの段階で逆にヒットする女性はどのような人か気になっていた。むしろこのまま申請したい。面白い。

「それで一回申請してちょ。仮に条件にヒットした女の子がいたら、どんなミクルんか気になるじゃない?

夢は追いかけるもんさ〜。ああミクルん。」

僕と福田大の意見が一致した。福田大はやっぱり意外と現実的な考えは持っているようだった。不動産をどのように経営しているのかは分からないが、この男なら多分面白い経営をしているだろう。今度行ってみるか。そう思った。

「その気持ち確かに承りました。これで一度申請してみます。今後も私がサポートさせていただきます。よろしくお願いいたします。」

男はようやくスマホから僕に視線を移してくれた。

「よろしくねーミツるん。難しいかもしれないけど、ミクルんは僕の夢なのさー。最終的には諦めるかも知れないけど、夢を一緒に追いかけようではないか!」

男は笑顔でそう言い、僕に笑顔で手を振りながら部屋から出て行った。

「どうだったーミツるん?」

自分の机に戻ると、名村課長が福田大と同じ言葉使いで僕に言ってきた。

「夢を一緒に追いかけようではないか!面白かったよー見てて笑」

周りを見渡すと社内にいる職員のほとんどが冷ややかな笑みを浮かべ僕を見ていた。

「皆様楽しげにご鑑賞してくださっていたわけですね。課長知っていましたね?福田不動産のご子息ということを。」

課長は最初から分かっていて僕を担当にさせた。僕は途中からなんとなくそう思っていた。よくあることなのだ。

「実は俺のマンション福田不動産で買ったんだよね。親御さんの方ね。その時に俺の職業の話をしたんだけど、親御さんが息子の話をしてさ、ミクルんがどうの、アニメがどうの。なかなか面白い話でさ笑。親御さんは人間が良いというか、人の良さが滲み出ているような人だったから、息子さんはどんな人かな〜って思ってたんだ。」

課長は独身にしてマンションを購入したとこの間聞いていたが、まさか福田不動産だったとは。世間は狭すぎる。

「それでさっき息子さんが部屋に入ってきた時に、Tシャツにアニメのプリントが入ってたろ?なんか見たことあるなーって思ってさ。それでみっちゃんが福田大と話をしている時に、ミクルんって聞こえてさ。ミクルんだ!これが息子さんか!って分かったわけ。聞いていた風貌にそっくりだったから確信したんだなー笑」

相変わらず性格の悪い人だ。


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