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100%オレンジジュース男

「いらっしゃいませ。」

事務員の女性の声がに響く。入口の方を見ると、自動ドアから推定30代前半と思われる男性がニヤニヤしながら入って来た。僕はアニメが好きなのだが、目がとてつもなく大きい女の子の顔のみプリントされたパーカーを男性は着ていた。見たことのないキャラクターだった。相当コアなアニメオタクに違いない。この時点で僕は嫌な予感しかしなかった。

「嫁を探しに来ました~。」

男はニヤニヤしながらそう言った。髪の毛は放浪者なのかと思わせるほど伸びており、あご髭も一切剃っていないような状態であった。これで顔がイケメンならオサレ番長になるところなのだが、口元にもお菓子のカスのようなものがあり、目ヤニもすごい。おまけに目もすごく小さい。そのうえニヤニヤしている。ニヤニヤしているのだ。正直気持ちが悪かった。

「口に着いたお菓子のカスはいつのものだろうな~。」

なんて名切課長が呑気なことを言っている。課長はいつもマイペースだ。

「みっちゃん出動要請ですよ~。」

課長もニヤニヤしながら僕に向かって言った。みっちゃんと呼ばれる時は大概僕にとってよろしくない時である。僕は癖のあるお客様を担当させられることが多かった。意地悪な課長である。

「いらっしゃいませ。」

僕は椅子から立ち上がり、自動ドアの前にいる男の方へ向かった。

いざ目の前でみると男は尚更気持ちが悪かった。大事なお客様に向かって気持ち悪いというのは大変失礼な事ではあるが仕方がない。気持ちが悪かったのだから。

「席にご案内いたします。飲み物は何になされますか?」

「ミクルンが絞った100%オレンジジュースなんてないかな~?笑」

この男、メイドカフェにでも来たつもりなのか。

「すみません、あいにくミクルンは在籍しておりません。100%オレンジジュースならございますが。」

僕もこの程度の事では動じないのである。あくまでお客様に不快感をあたえない程度にジョークを言う。

「そっか~残念無念またミクルン〜。オレンジジュースでよろピクミン。」

オタクアニメの中にいるようではあるが、残念な事に現実である。オタクアニメを再現してくれるという意味では、この男は貴重な存在である。僕はこのようにポジティブに考えるようにしている。名村課長の影響かもしれない。

「かしこまりました。それでは飲み物を準備致しますので、それまで奥の椅子にかけてお待ち下さい。」

推定165センチ、80キロの男は事務員の女性を明らかにいやらしい目で見ながら奥に向かって行った。

「後で内容教えてね~。楽しみに待ってるよ。」

名村課長はまったりコーヒーを飲みながら言う。

溜息が出た。自然と出た。この会社に勤めて溜息の連続だ。

時計を見た。時刻は午前10時ちょうど。

男が待つテーブルへ僕は向かう。仕事の始まりである。



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