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プロローグ
「年収1000万円以上ですか...」
僕の目の前には田舎でスナックを経営しているような風貌の女性が、ニコニコしながらじっと目を見つめてくる。
(はぁ...)
今日の仕事はまだ始まったばかりだったが、もう億劫になってきていた。
「少々お待ちください。」
今回も厳しい戦いになりそうだ。
相手は43歳女性、バツ3子持ち。
僕はゆっくりと右手のマウスのクリックを押した。
「なるべくイケメンがいいわね〜。あと不動産経営者なんかもいいわね。」
どの面下げて言ってんだよ。
と口には出さず画面にお客様が言われた条件を入力。
年収1000万以上で不動産経営者というのは何人もヒットするだろう。
問題はあなたですよ、奥さん。
田辺と名乗る目の前の女性の情報を入力し、僕は再びマウスのクリックを押した。
(条件に合う相手が見つかりませんでした)
やはり今日も長い一日となりそうだ。