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6話:妹が世界征服をする予定です

 俺の妹は思春期をこじらせた奇天烈女子だった。何度も幼神に聞き直したが、出てきた言葉は

「世界征服」「ファイナルイノセントワールド」「ネオ地球」

という学校では絶対に教えてもらえない単語だけであった。


「そんなことより、お前一つ勘違いしてないかのぉ」

「……世界征服の意味ならピッコロ大魔王さんがやろうとしていたような事ですよね。勘違いしてないですよ」


 そう、かの有名なナメック星人でも無理だったのだ。仮にこの便器ブラシの代わりに聖剣エクスカリバーと交換していたとしても、この現代社会で世界征服は現実問題無理なのだ。


「そうじゃなくてのぉ。わしはわらしべの神じゃ。故に最初は必ず藁へ【対象者】を転生させるところから始まるけんのぉ。つまりあと2回は交換できる計算じゃ」

(いや、もし後100回交換できたとしても無理だって……)

「何にでも変えられる藁、わしの力のアピールポイントはそこじゃけぇのぉ」


 幼神はまたドヤ顔を決める。


「ちなみに俺が完全に交換物に転生されちゃうのっていつくらいになるんですかね?」

「個人差はあるが転生してから約1週間といったところかの。一度転生物を変えればそこからまた1週間は持つがのぉ」


 何かと交換していっても最長で3週間って事か……


「まあ、どちらにしても帰ります。一度妹に本心を聞いてみないと。幼神様にはここに来ればいつでも会えるんですかね?」

「ま、そうじゃのぉ。」

「また明日来ます」


 そう言ってトボトボと帰路につく。


「最後に1ついいかの……お前は今回【願い】の体現者になるわけじゃが」

「?」

「体現者は願った人間の中で最も親しく、そして実現する事ができるものしか選ばれんけんの」

「はぁ……?」

「妹から何よりも頼りにされておる、という事じゃ」


 そういってニコリと笑うと神社の本殿へと消えていった。



――――あれは励ましてくれていたのだろうか。そんな事を考えながら彩の帰りを待つ。色々あった為俺が家についたのは18時30分。すでに彩は塾に出かけていた。おそらく帰りは21時頃になるだろう。


「はぁ……俺の今の状態ってゾンビだよなぁ」


 時計の秒針を見つめながら本日何回目か分からないため息をつく。便器ブラシは少し汚いがベッドの下に隠しておくことにした。

(イケメン先輩がもし送ってくるような事があっても今日のところはさっさとお帰り願おう)


ガチャ――――


「ただいまー」


 明るく爽やかに病原体たる妹は帰ってきた。どうやら今日はイケメン先輩に送ってもらわなかったらしい。


 バタバタバタン!と自分の部屋に入っていく音が聞こえた。彩は夕飯を食べて塾に行く。つまりここからはフリー。俺の尋問タイムというわけだ。ピシっと顔を叩き気合を入れ直すとまっすぐ彩の部屋へ向かう。


――――コンコン


「はーい」


 妹の呑気な返事が返ってきた。


「彩。入るぞ」

「えっ? お兄ちゃん、どったの珍しい」

「いや、ちょっと話したいことがあるんだが。入ってもいいか?」

「うん? いいけどー」


――――バタン

 彩が中学校に入ってから部屋に入ることも少なくなっていた。彩が、というより俺が気にして意図的に入らなくしていただけだが。この部屋に入るのは春先に引っ越して来た際に本棚やら机やらを搬入する手伝いをした時以来だ。別段部屋の中に変わった物はなく、ぬいぐるみやら小物やらが溢れておりいかにも女の子らしい部屋だ。


「ん、んんっ」


 こもったような咳払いを一つ置いて本題に入る。


「えーっと……」


 困ったな。なんて切り出そう、今日の話をそのまま伝えるのはいくらなんでもマズイ気がする。今回知りたいのは彩の本心である。本当に世界を統べたいのか、なのである。


「彩……」

「ん?」

「お前、今の世界をどう思う?」


 なんだか間抜けな質問だが、まずはここで彩の反応を見てから二の矢を放つ!


「えっ……世界をって? どゆこと?」


 ん?意外と反応が薄いな。


「い、いやだから。今の世界って、ほらあれじゃん。昔は良かったーとか今の世の中は住みにくくなったーとか、TVとかでも良く言ってるじゃん」

「うん?言ってるね」


 んん?


「だ、だからさ。やっぱり今の世界ってどうなのかな?とか何かできる事はないかな?とか考えたりするわけだよ地球に生きる者として」


 いやいや、俺が変な奴みたいになってるぞ。


「……もしかしてお兄ちゃん」


 彩が怪訝な顔をしながら俺の顔を覗き込む。

(ま、まずったか?)


「もしかしてお兄ちゃんって……導かれし者なの!?」


 途端にパァッと彩の顔が明るくなる。


「は……? 導かれし者? あ……あぁまあ、そうそう」


 テキトーに応える俺。


「やっぱりそうなんだ! 広島ってー元々軍港とかもあったからー、導かれし者が集まりやすいとは聞いてたんだけどまさかお兄ちゃんがそうだとはねー! やっぱりお兄ちゃんも私と同じ後天性の使者なのかな!?」


 知らんがな。


「でもでも安心して! 私も最近やっと愚者の理を理解出来てきた所なんだよねー! エデン文字が最初は中々読めなくて、うんうん苦労したなぁー」


 どうやら最近の中学生は英語の他にエデン語なる教科も習っているらしい。大変な時代になったものだ。彩はせかせかと本棚奥に隠してあったエデン古文書と神への通信録なるノートを俺に見せながら、おそらく自作であろうノートに書いた神を指さし色々話してくる。

 俺は苦笑いしながら「絵、上手だな」「絵、どこで習ったんだ」「こんな可愛い神様が書けるなら漫画家になれるな」とか絵だけを執拗に褒めて妹の興奮が収まるのを待った本当にドン引きしているがこれでハッキリした。俺の妹はガチだ。


「あー。あ、あのな彩。ちょっと話が戻るんだが今の世界ってどう思う?」

「ん……? 世界がどうとかは考えた事ないなー。何々さっきから、お兄ちゃんってまさかワールド系なの?」


 他にどんなジャンルがあるかは知らないが、ここまで醜態を晒した妹が今更その部分での嘘をつくとは思えなかった。


「いや、なんでもない……と、もうこんな時間か。そろそろ風呂でも入るわ」

「えっーもうちょっと話そうよー」

「また今度な」


 俺は逃げるようにドアノブに手を掛ける、一端整理する時間が必要だ。このままここで話を聞いていたらエデン語講座が始まってしまいそうな勢いだ。


「でもでもーお兄ちゃんが使者だったなんてー☆もっと早く話せば良かったなー!」


 はは……お兄ちゃんはお前のせいで今大変なんだよ。まあ今日のところはもう寝よう、流石に疲れた。

 「?」妹のドアノブに手を掛けたとき何気なく気になった事を質問した。


「彩、こういう話って志野宮ともするのか?」


 途端に先ほどまではち切れんばかりの笑顔だった彩の顔から笑顔が消えた。


「いや話さないよ。美羽ちゃんは違うから」


 冷めた表情で言い放つ。


「お兄ちゃんも喋らないでね。美羽ちゃんと話す事ないと思うけど」


 そう言うとつまらなそうに携帯をいじりはじめた。

(……)

何ともモヤモヤした気持ちのまま妹の部屋のドアをパタンと閉める。


(風呂入って……寝よ)


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