表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/41

40話:さよなら

 停学3日目の火曜日。俺は藁を片手に神並神社を訪れた。無事心臓はあるべき場所に戻ってきたわけで今回の事の発端となった神並神社にこのまま近寄らないという選択肢もあった。だがやはりこのままでは寝覚めが悪い。何より昨日家に帰ってきた時の彩のはしゃぎようを見ているとなんだかんだで幼神ミコットにお礼の一つでも言っておくべきだと思ったのだ。

 いつものように閑散としている神並神社。辺りを見渡すが幼神の姿はない。軒下にも隣接の公園にもブラッシーと出会った便所にも幼神はいなかった。


(どこに行ったんだ?)


 ふと本殿の方をみると本殿裏から何か塔のようなものが天に向かってそびえ立っていた。


(なんだありゃ?)


 気になって本殿裏へ回ると幼神ミコットが作業着を着ていそいそと何かの組み立て作業を行っていた。


「おぉ。ニーたんではないか。久しぶりじゃのぉ」

「あ、あぁ。久しぶりですね幼神様」

「ミコットじゃ!」

「あぁ……そうですよね。ところでコレ何をしてるんですか? 随分と大がかりな物のようですけど」

「おぉ。これはのぉお前の妹の【願い】が叶ったからのぉ、わしはお役御免で天界へと帰らないといかんのじゃ」

「あ……知っていたんですね彩の【願い】が叶った事」

「まあの。昨日もたまたますぐ近くでお前の妹を見かけたばかりじゃしのぉ。流石はニーたんスピード解決じゃったの」

「っていうか天界なんてあるんですね。この高くそびえ立っている何かがその天界に帰る装置か何かですか?」

「まぁそう言う事じゃの」


 本当に高い建造物だ。雲を超えて視認できないほど先へと続いている。神の世界はやはり人間には想像もつかないような技術があるのだろうか。興味本位でその建造物に近づいてみる。


「ってこれ脚立じゃねーか!!」

 

 よくよく見ると普通にホームセンターとかで売っている脚立であった。それを幾重にも器用に組み立てて天を突く程の高さにまでしていたのだ。いやそれはそれで凄い技術だけれども。


「まさか……これを登って行くんですか?」

「そうじゃが? それ以外どうやって天界に戻る方法があるというのじゃ?」

「それ以外ないのかよ!?」


 じゃあこの脚立を登って行けば俺も天界に行けるのだろうか? 絶対行かないが物理的に行ける天界って何か嫌だ。


「よし。これで終了じゃな」


 パンパンと手を弾き軍手を外す幼神ミコット。自慢の変な髪型が風に乗ってヒラヒラと揺れる。


「あ……」

「ん? なんじゃ?」

「もう……帰るんですか?」

「まあ用はもうないからのぉ。ニーたんも元気での」


 そう言って脚立に足を掛ける幼神ミコット。短い付き合いで仲が良かった訳でもない。今回の厄災の元凶でそもそも種族自体も違う。しかし急な別れに少し戸惑う。


「あ、あの!」

「ん? なんじゃ?」


 幼神ミコットは脚立に足を掛けたままこちらを振り向く。


「これ。返します」


 俺は持っていた藁を差し出す。幼神ミコットは驚いた表情で藁を見ている。


「ほぉ。転生1回分残して【願い】を叶えたんじゃのぉ。大したものじゃ。じゃがこれはホレ返さんでええぞ。頑張ったニーたんへのプレゼントじゃ」

「いや。別に持ってても意味ないですし。捨ててもいいんなら捨てますけど」

「お前彼女と別れたらすぐ写真とか捨てるタイプじゃのぉ。まぁまぁいいから取っておけ」

「はぁ……。あの、それで何というかですね」

「?」

「あの。ありがとうございました、その妹の事とか色々」

「なんじゃ? 変な奴じゃのぉ。妹の【願い】を解決したのはニーたんじゃろうが。わしはお礼を言われる筋合いはないぞ?」

「でもヒントとかもくれたし。結果的に解決できたのはやっぱり幼神様のお蔭で……」

「ミコット! じゃ。」


 幼神ミコットは名前を呼ばない俺を嗜めた後少し間を置いてクスクスと笑った。


「少し変わったかの」

「は? 何がですか?」

「いや、何でもない。短い間だったが結構楽しかったぞ。これから暑くなるから生ものには注意しろの。じゃあの」


 そう言うと幼神ミコットはせっせと脚立を登り始めた。どんどん小さくなっていく幼神を見上げ俺は呟く。


「さよなら……。パンツ……見えてますよ幼神様……」


 こうして幼神ミコットは最後にパンチラというご褒美を残しこの世界から消えて行ったのだった。



「ただいま~」

「あっ! おかえり~お兄ちゃん」


 学校の振替休日か何かで休みだった彩が家に戻った俺を出迎える。


「なんだ? お前一日中家に居たのか?」

「うん。ちょっと忙しくて。お兄ちゃんも明日から学校でしょ? 久々だけど準備とかしなくていいの?」


 ヤバイ……そういえば俺は停学中に反省レポートと課せられた宿題をまとめて提出する事を義務付けられていたのだ。色々あってすっかり忘れていた。

 大急ぎで自分の部屋は駆け込み取り掛かる。しかし思いのほか量があり結局夜遅くまで掛かってやっと終わったのは宿題のほうだけであった。問題は反省レポートだが書き方がよく分からない。殴ってすいませんでした、もうしません。とかか? これじゃあ小学生の反省文だな。優等生とは言えないまでも穏便に暮らしていた俺には反省レポートなどとは無縁だった為どこから手を付けていいのか分からない。


(こういう時は……)


 俺は自分のノートPCを立ち上げる。困った時は内容をネットから引用させてもらえば良いのだ。本当に便利な世の中になったものだ。


(どこから引用しようか……あんまりテンプレ文もなぁ……いっそNちゃんねるあたりで誰かに相談してみようかな)


 ふとそう思いNちゃんねるのサイトへ飛ぶ。そして該当するようなスレッドがないか検索していると……


(ん? なんだコレ? どこかで見たような……)


 見覚えのある名前を見つけそのスレッドを開く。正直今にして思えば開けなければ良かった。しかし時すでに遅し。俺を震撼させる驚愕のスレッドが目の前に飛び込んできた!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ