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38話:志野宮

――ピンポーン


 月曜の朝いつものように家のチャイムが鳴る。この朝早い時間にこの家に来る人間といえば――


「おはようございます! …………おにぃ先輩」


 スラッとした長い手足と今時ともいえるゆるふわ系の髪は校則で引っかからない程度に少し茶色い。リスのようなクリクリした瞳から俺に向けられる生ゴミを見るような視線。いつものように志野宮が彩を迎えに来る。

 そういえば処女セクハラメッセージ事件から日も経っていなかったな、もう随分昔の事のようにも思えるが志野宮の軽蔑に満ちた視線はつい先日の事であると容赦なく認識させてくる。


「悪いな志野宮。彩の奴今日は珍しく朝早く学校に出かけちゃってさ」

「あ、そうなんですかぁ……じゃあ失礼しますね」

「あ……志野宮! ちょっと!」


 志野宮から受けていた相談についての解答は出た事を思い出し呼び止める。


「……なんですか?」


 思ったより怒ってるな~。


「……あ、あのさ。池先輩の事なんだけど」

「え?」

「池先輩。彼女いないらしいぞ」

「えっ! ホントですか!?」

「あぁ。嘘つく理由ないだろ」

「え~そうなんだ~。そっかそっか♪」


 途端に機嫌が良くなったな。女心と秋の空か、梅雨だけど。しかし志野宮が浮かれていたのも一瞬だけですぐに俺の方に目線を送る。やはり志野宮が最も気にしているのは彩が池先輩の事をどう思っているか? なのだろう。

 その解も出ている。聞くまでもなく彩の心の中で魔王として君臨していた池先輩。そこだけを見れば特別な存在とも言えるが結果的にはジャイアント馬○になって彼方へ消えて行ったのだ。恋愛感情があろうはずもない。彩から見た池先輩はなんというか自分の中のキャラとしてカスタマイズするには都合のいい人だったのだろう。単純に池=メンドーサ=カルロビッチという名前が厨2的な思想に刺さっただけかもしれない。そう考えると彩の事を色々考えてくれていた池先輩が急激に可哀想になってきた。家の愚昧の為に悩んでくれていたのに……ホントスイマセン。


「ちょっと!? おにぃ先輩なに泣いてるんですか!?」

「いや、気にするな。人の想いはすれ違うものだなと思ってな……」

「はぁ……良く分かりませんケド」

「そんな事より彩が池先輩をどう思ってるかなんだけどな」

「!?……はい」


 一瞬にして志野宮の顔に緊張が走る。


「悪いけど彩に直接聞いてくれ」

「えっ……いや、おにぃ先輩。ちょっとそれはあーちゃんには聞きにくいんですケド……」

「いや、聞いてやってくれ。志野宮が彩の事を友達だと思ってくれてるんならさ」


 真剣な顔で答える俺に対して志野宮は少し間を置いた後小さく頷いた。

(頑張れよ彩……)

 学校へ向かう志野宮を見送り停学という名の休日を得ている俺は再びソファーでゴロンと横になる。



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