32話:魔王ザグレブ
「ワインガルトナーさんは動けない。僕達でやるしかない!」
レコは意を決して王剣ヴォィヴォディナを鞘から抜くと魔王ザグレブに突っ込んでいく。世界最高の鍛冶屋クラニツァールが残した最後の一振り王剣ヴォィヴォディナは魔王を倒すために作られた対魔者専用の剣である。ただでさえ強力無比なこの剣をパラディンとなったレコが「うぉぉぉ!」と思い切り振りきる。
ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
地面を割いて斬撃が魔王に飛ぶ。しかし魔王ザグレブは片手を伸ばすとその強烈な斬撃を素手でキャッチする。
「なにぃ!」
驚愕するレコ。
「HaHaHa! いい斬撃だが間合いが遠すぎるよ。Meにペナルティエリアの外から斬撃は通用しない」
「ラララ―♪ 流石は魔王ザグレブ」
有り得ないと言った表情で魔王ザグレブを見上げるレコ。無理もない通常の魔者であれば一瞬にして塵になるほどの威力だった。
「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な!」
ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
ズガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
王剣ヴォィヴォディナを縦に横に振り回し無数の斬撃を魔王ザグレブに飛ばす。ザグレブは両手を剣のように研ぎ澄まし全ての斬撃を手刀で叩き落とした。
「ラララ―♪ お見事! 手刀ディフェンス」
魔王ザグレブはニヤリと笑うと両手を広げ魔力を集めはじめる。そして集めた魔力を今度はこねくり回して球体状に整えていく。暗黒の炎の球体となった魔力をそのまま宙に放り投げ俺達めがけて思いっきり蹴りこんできた!
「HA! ファイヤー!!」
目にも止まらぬスピードで襲い掛かってくる魔力の球体。レコは先ほどのお返しとばかり王剣ヴォィヴォディナで切り崩そうと一歩前に出る……しかし!
WOWOOOOW!!!!
(な、なにぃ! あのスピードにプラスしてボールの伸び!)
「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁ!!!!」
天高く吹っ飛ばされるレコ。そのまま地面に叩きつけられる。
成程。魔王の名は伊達ではない。このままではエデンズエイトは全滅必死だろう。しかし何度も繰り返すが俺にとって今一番重要なのは妹が誰なのかを見極める事。そして【願い】を叶えてやる事なのだ。その為に俺はこの後に及んでも戦うべきなのかどうかを判断しかねていた。
「HaHaHa! そこですかしているYouも沈めてやろう!」
魔王ザグレブが天に右手を掲げ何やら呟く。
すると上空から星々が不死鳥の形を成して魔王城めがけて降り注いで来る。
「HaHaHa!! フェニックスドライブ!!!!」
ドガガガガガガァァァァァァァァン!!!!!!!!!!
ドガガガガガガァァァァァァァァン!!!!!!!!!!
天から降り注いだ星々は強力で魔王の城そのものに直撃する。
「うぉ!」
俺も思わず声が漏れる。自分の城を意にも介さず破壊する魔王。巨大な星々の衝突で建物として形を維持できなくなり魔王城は全壊する。衝撃で空中に放り出される俺達。
(おいおいちょっとこれはマズイんじゃね?)
迫る地面を前に少し慌てる俺。しかしその時
「ファイナルイノセントワールド!!」
同じく城から放り出されたヤコヴの元からエウロスの結界が一瞬離れた隙をつきワインガルトナーが光の羽を広げた。一瞬にして結界を消滅させるとそのまま俺とレコを抱え無事地面に着地を決める。
「すまない……レコ。そして淵底の翼。ここからは私に任せてくれ」
そういうと上空から物凄い勢いで地面に降り立った魔王ザグレブを見据える。
どうやら決着の時は近い。




