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3話:告白

 家と学校の通学路のほぼ中間点に神並神社という古い神社がある。主のいないその神社に人が集まるのは夏祭り、大みそか、冬の節分祭の3回だけらしい。隣には神並公園と呼ばれる小さな公園がある。神社と公園の間には細い路地があり学校へのショートカットになるため御用達の通学路となっている。俺はいつも通り神並神社の裏路地を突っ切る。

 雨の日は細路地で傘が邪魔だが仕方がない。2人並んで歩くとつっかえてしまいそうな路地でピンクのカエルマークがついた傘が目に入る。


「あれは……?」


「あ……おにぃ先輩……」


 登校途中の神社で俺を待っていたのは志野宮だった。10分程前に家を出たはずだが、路地に挟まったのか? 当然そんな軽口を叩ける訳もなく小さく会釈する。志野宮の顔つきは強張っており泣きそうにも見える。こ、これは……この表情は……


 俺だって鈍感じゃない。普段の志野宮を見てなんとなくそんな気はしていた。引っ越しの挨拶をしに行った時から感じていたのだ特別な視線を。妹を理由に託けて毎朝俺に会いに来ていることも、おにぃ先輩という呼び方も好意の照れ隠しとして「友達の兄」である事を強調している事も。だがしかし! このタイミングは予想外だった。どうしよう志野宮の気持ちに上手く応えてあげられるだろうか。俺は男としてどう立ち振る舞えばいいんだ――


「おぅ……ど……どうひた」

「あ……あの」


ゴクリ。生唾を飲むとはこういう事か。


「私好きな人がいるんですケド!」


 キタ――――――――!

 Bルートでの告白頂きました!

 Bルートとは直接「好きだ」「愛している」等の言語を使い好意を伝える事をせず、あえて「好きな人」の存在を直接当事者に伝える事によって相手の出方を見る高度なテクニック。広島にこの使い手がいたとは……志野宮侮りがたし。

少し動悸がするし、手の汗も凄い。それでいて気を抜くとほっぺたが七福人の耳のように垂れてしまいそうだ。


「……ねぇ……聞いてます?」


 あぁどうしよう恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい――――――

 正直志野宮はかなり可愛い。容姿だけならうちの学校全体で見てもトップ10入りは間違いない。いやむしろ四天王、またはBIG4という称号を与えられても不思議ではないくらいだ。そんな学校のアイドルともいえる女の子が、今、ここで、俺に……!!


「私、池先輩の事が好きなんです!」


 意を決したかのように志野宮が声を発する。そうかそうか池先輩か。

……な、なにぃ……池……先輩、だと。


 池先輩。通称イケメン先輩。現在大学1年生。俺や志野宮と同じ学校の卒業生でもある。高校在学中は決して強豪とは言えないサッカー部を全国ベスト8まで導いて、TVとかネットとかでも当時話題になった地元の有名人……らしい。よそ者の俺はよく知らんがとにかく現在は県内の大学に通っているモテ男先輩だ。


……いや、分かってたけどね。鈍感じゃないからね俺だって。涙目になった瞳を雨で隠しながら応える。


「あー池先輩か。かっこいいよな、あの人」


 途端に素に戻らざる得なかった。不思議なもので目の前の異性が自分には全く興味を示してないと分かった途端に緊張もしなくなる。人間というのはよく出来ている。


「うん……それでですね。池先輩とおにぃ先輩仲いいじゃないですか……」


 大きな誤解をしているようだが俺はイケメン先輩とは別に仲良くはない。だが確かに面識はあるし話もする。妹が通っている塾で池さんは講師のバイトをやっており妹が転校生だという事を知ってからは何かと気にかけてくれているのだ。で、夜遅くなる時には家が近くだからという理由で妹を家まで送ってくれたりもする。まあ顔も性格もいい人だ。

 しかし志野宮が妹と仲良くしているのって、もしかして池さん絡みなのか? だとしたら諸葛亮孔明もびっくりの策略家だな。妹の笑顔を思い浮かべると、そうあって欲しくないと思うのは兄心だが……


「ちょっとー、聞いてくれてますぅ?」


甘えた口調で志野宮は言う。


「あぁ聞いてるよ。3分前から志野宮の好感度メーターが下げ止まらないだけだから」

「……なんですか? ……それ」


 何言ってるんですか? と言わんばかりの表情で俺を見てくる志野宮。


「気にするな、思春期の男子には色々あるんだ。で、池先輩が好きなわけね、OK分ったよ。俺にどうして欲しいんだ?相談ならなんでも聞くぞ。池先輩絡み以外ならな」

「今の話の流れだとどうやったって池先輩絡みの相談しかなくないですかぁー!?」


 志野宮がジト目でこちらを見ている。まあ、打算があったのかもしれないが妹の件で世話になっているのは事実だ。告白してもいないのに振られた気分になっている俺には酷な話だが一肌脱いでやるのもやぶさかではないか。


「ま、話しくらいは聞くよ」

「……おにぃ先輩そんなキャラでしたっけ? 普段はもっとこう……」


 モジモジしながら志野宮が何かを言いにくそうにしている。


「優しいってことか?」

「挙動不審な感じなんですケド……」


 クソがっ!! やっぱり俺はそんな風に見えるのか!? 普段ニコニコしてるくせに心の中では俺の一挙手一投足を気持ち悪がっていたのかぁ!?


「それで……相談、いいですかね?」

「挙動不審な俺にできる事なんてあるんですかねー」


 テンションメーターを大幅に削られたことで明らかに不機嫌そうに答える俺。


「あっ、性格悪―い。勇気出してキョド先ぱ……おにぃ先輩に相談してるのにぃー」

「おまっ!? 俺の事本当はキョド先輩って呼んでんのか!?」


 ついつい突っ込んでしまう俺。こいつ、完全に俺を嘲笑の対象として見ていやがった。裏表がなさそうな顔しながら裏では俺を蔑んでいたんだな!


「いやいや! 呼んでないですけん。あっ先輩っ傘傘! 傘ささないとっ!」

「傘なんか必要あるかぁ!」


 降りしきる雨の中違うテンションメーターが上がってしまった俺はお気に入りの黒い傘を天高く放り投げ言い放つ。


「さっきの呼び方は、つい……すいません」

「つい!? ついだとー! 咄嗟に最も俺に適した名前をつけてくれてありがとう!

おにぃ先輩なんて呼び方よりもよっぽどフィットしてるわ!! そもそもおにぃ先輩ってなんなんだよ、お前は弟か妹がいる男の先輩は皆そう呼んでるのか!?」


 声を荒げる俺に対して言いにくそうに志野宮は言う。


「……だって先輩の名前知らないんで」


「――――……」

「あーちゃんと話してる時も話題に出ないし」

「あ、そう……なんだ」


 またもや俺は素に戻される。


「結構おにぃ先輩って喋るんですね」


 志野宮は困ったような驚いたような何とも言えない表情で話しかけてくる。


「あ、うん…………たまにね。えっと、それで相談ってどんな相談なのかな?」


 テンションが上がりすぎてよく意味の分からないことで声を荒げてしまった。喉元すぎればなんとやら、お蔭でずぶ濡れである。


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