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26話:クラスチェンジ

 螺旋状に続く階段を俺とレコはひたすら登る。それぞれの階には奇怪な造形物が設置されてはいるものの宝物庫や研究所などといった場所は一切なく殺風景な城内であった。魔者すら1匹もいない魔王の居城は不気味以外の何物でもなかった。しかし散って行った仲間たちの事を考えても立ち止まる訳にはいかない俺達はただひたすら最上階を目指す。


 階でいうと20階あたりだろうか、階全体が見渡せるような真っ白な部屋に辿り着く。


「ここは……?」


 不思議そうな表情であたりを見渡すレコ。


「よもや此処まで来る人間がいるとは驚きです」

「誰だ!?」


 白い部屋と同化するような全身白色の人の型をした魔者が姿を現す。髪もない口もない服も着ていない、あるのは顔の真ん中に大きな一つ目のみ。口はないのに体全体から声を発しているような他の魔者とは一線を画す風貌。その白色の魔者が両手をぶらぶらさせながらこちらを見ている。


「お前が……最後の超越の四魔者なのか?」

「如何にも私は超越の四魔者が一人、白き穢れの魔者」


 レコの問いに白い魔者が答える。


「先に申しあげておきましょう。私の戦闘能力は0に等しい。全魔者の中でも恐らく最弱でしょうね。」

「……ならばそこをどいてくれないか? 僕達が倒すべき相手は魔王ザグレブただ一人なんだ」

「それはできませんね。私は弱い、しかし貴方達エデンズエイトにとっては私は最強でしょうね!」


 カッ! と目を見開いた白き穢れの魔者。


「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 目の前でレコの全身から白い蒸気のような煙が大量に溢れ出て行く。


「!!?」


 俺は驚きのあまりその光景を見ている事しかできなかった。


「あはははは! 私の力は白を黒に変える能力! 純粋で純朴なレコさん。貴方の心が白ければ白いほど闇に照らされた質の良い魔者に変えて差し上げますよ!」

「うわあああああぁぁぁぁぁ……た、たすけて淵底の翼さん……」


 レコが俺を呼んでいる。ここは助けに入るべき……なのだろう、だが俺は助けなかった。俺は俺の目的の為に、この状況でも動くことは得策ではないからだ。すまないレコ。

 俺はレコを無視して白き穢れの魔者の横を猛然と走り抜ける。そう俺は一人で上へと続く階段を目指したのだ。


「そ、そんな……淵底の翼さん……うわあああああぁぁぁ!」


 レコの悲鳴が大きくなる。


「あはははは! いいですねぇ。成程、貴方が淵底の翼ですか。いいでしょう通して差し上げますよ、どの道白き心を持たない者は私には荷が重い。貴方は最上階で魔王ザグレブ様にぶっ殺されれば良いですよ」


 俺は階段までたどり着くと後ろを振り返る。気になる事があるからだ。

(白翼の勇者ワインガルトナー、風を統べる吟遊詩人ヤコヴ、魔王ザグレブ、そしてレコ……か。怪しい奴は全員残ったな。)


「おやおや、先に行かないのですか? やはり仲間は気になりますか。いいでしょう、では魔者となったお仲間にぶっ殺されなさい!」


 白き穢れの魔者はより一層目を見開く。同時にレコの全身から吹き出す白い蒸気は2倍以上の量で噴出されていった。


「うわあああああぁぁ!!!!!! ……こ、こんな所で……負ける訳にはいかないんだ……く、くそう…………皆……僕に勇気を下さい……ワインガルトナ―さん……僕も、皆を助ける、力……わああぁぁぁぁぁ!!!!!!」


ドォォォォン!!!!


 爆音と共にレコが聖なる光に包まれる。


「あはは……は? あれ、いつもと違いますね。あれれ? だってこれは聖なる力……ま、まさか!?」


 光の中から降臨したのは聖なる衣を身に纏い成長しパラディンとなったレコだった。大きさが不釣り合いだった王剣ヴォィヴォディナを短剣のように軽々と振り回すと鋭い目つきで白き穢れの魔者を一括する。


「切れちまったぜ。久々によ」

「ま、まさか……このタイミングでクラスチェンジだと? 貴様! 後天性の使者だというのか?」

「敗因はただ一つだ白色魔者。てめぇは俺を怒らせた」


 どこかで聞いたことがあるようなセリフと言い放つと。レコは王剣ヴォィヴォディナを振り下ろす。聖なる波動が白き穢れの魔者を捕え一瞬の内に消し飛ばすのだった。


「俺はよ、無暗に切りたくはねぇんだ魔者であってもな。だが世界の為に必要ならよぉ。何度でも振り下ろすぜ、この王剣ヴォィヴォディナをよ」


 そういうとこちらをジッと見るレコ。そしてフッと笑う


「なぁに、俺は気にしてねぇぜ何か考えがあっての事なんだろ。だからあんたも気にするな。さあワインガルトナーさんを助けに、そして魔王ザグレブを倒しに行こうぜ淵底の翼」


 そう言って俺の肩をポンッと叩くと最上階へと続く階段を登って行くのだった。


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