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24話:瞬神の騎士長シューケル

 沈黙する瞬神の騎士長シューケル。その表情は自分への怒りで震えているように見えた。


「……なんで、なんでクロコップさんまで」


 レコは今にも泣きそうな顔で魔道王クロコップが散った空を見上げる。


「やっぱり僕たちも、無理にでも一緒に戦っていれば」

「……ほほ。それはまさしく無理というものじゃ」

「!?」


 首から下が完全に押しつぶされた状況でガレシックは俺達に話しかけてきた。しかし虫の息には変わりない、いかに魔者に生まれ変わったと言っても生命が活動できるレベルの臓器が残されいるとは思えなかった。それでも不敵に笑いながらガレシックは話を続けた。


「魔道士というのはどこまでも我儘な生き物なんじゃと魔者に生まれ変わって改めて思い知ったわ……己の正義を捻じ曲げても、正しい道ではないと理屈では分かっておっても己の我を通したくなってしまう。魔道の王が聞いてあきれるわ。わしもあいつものぉ……」

「なにを!? お前と一緒にするな! お前のせいでクロコップさんは……」

「静かにしろ小童」


 ガレシックがレコの言葉を遮る。


「わしは今いい気分なんじゃ。わしもあいつも愚かじゃった、しかし無粋ではない。人生最高の瞬間じゃったのぉ。ほほ、もしまた生まれ変わっ……たら…………もう一度………………魔道……………………」


 言い終わることなくガレシックは安らかな顔で絶命した。


「……本当に迷惑な生き物だ、魔道士というのは。自分の欲の為に悪魔に心を売って、それで満足しているんだからな」


 地面に落ちたレイピア、ブルームーンを拾い上げとシューケルは散りじりになっていく暗闇の雲に向かって話しかける。


「お前もだクロコップ。本当に迷惑な……奴だ」


 初めて聞くシューケルの涙声。クロコップと同じく弱みを他人に見せないシューケルが一瞬見せた弱さは仲間だった、いや友であったクロコップへの隠しきれない感情だったのだろう。


「行こう」


 シューケルはそう言うと魔王ザグレブの城門を見据える。俺達は静かに頷くといよいよ魔王の城へと乗り込むのだった。



 先ほどの魔道決戦で異形を象った魔王の城はかなりボロボロになっていた。原型が戸愚呂100%なら今は邪念樹の種を植え付けられた戸愚呂兄くらいボロボロだった。

 1階の入り口は瓦礫で完全に入る事が出来なくなっていた為、城の側面をよじ登り先ほどの戦いで大穴があいた2階から侵入することになった。


 まずは俺が辺りを警戒しながらよじ登る。2階フロアは広々としたエントランスのようになっていた、敵の気配はない。俺がOKサインを出すと続いてレコが登ってくる。そして最後にシューケルが登って……登ってこない?


「シューケルさん?」


 2階に登りきったレコが城門前で動かないシューケルに不思議そうに声を掛ける。


「シューケルさん? もういいですよ。僕は登りましたから後はシューケルさんが……」


 その時だった。


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォという地響きが鳴り響く、これは!?


 そう、今まで大人しくしていたはずのトランシルヴァニア帝国内の魔者達が一斉にこちらに向かってきているのだ、その数……およそ2万!!


「シューケルさん! 早く! ……シューケルさん!?」


 こちらを見ながらシューケルは静かに答える。


「こんな事だと思ったよ。帝国領土内で魔者は誰も襲ってこなかった。恐らくガレシックの魔法に巻き込まれないように魔王が統制を取っていたんだろう。ガレシックが俺達を倒せばそれでよし。倒せなければ……今度は数で勝負、といったところか」

「シューケルさん!?」

「お前達は先に行け。ここは俺が引き受けた」

「だ、駄目です! 嫌ですシューケルさん!」

「俺にも恰好をつけさせろよ。レコを頼むぜ淵底の翼……」


 そう言って俺を一瞥するシューケル。「信用した」そう言われた気がした。俺はこくりと頷くと嫌がるレコを抱えて3階へ続く階段へと走る。


 目の前には山とも壁とも形容できるほどの大量の魔者。シューケルは愛レイピア、ブルームーンを大事そうにゆっくりと構える。


ガルルルル……

ウゥゥゥゥオォォォォ!!

ギャギャギャギャ!!

フシュー! フシュ―!


 大量の魔者の鳴き声叫び声が地鳴りのようにこだまする。


「(ヴァンナ……すまない。でも分かってくれるよな)

さあ、雑魚魔者共! お前達の相手は国内に剣の腕比肩する者無し、その迅速目に映る者無しと言われ恐れられたこの瞬神の騎士長シューケルだ! では参るぞ! 

イイイィィィィジィス!!・アンリミテッドーーーーーー!!!!」


 瞬神の騎士長シューケルは光の矢となって魔者の群れに飛び込んでいくのであった。


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