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20話:鉄壁の盾フランクフルター

「後は任せましたよ、ドレイン魔者さん」


 そう言うとエウロスの結界に白翼の勇者ワインガルトナーを捕えたままヤコヴはトランシルヴァニア帝国城門を空中から超えて行った。


「ワインガルトナーさん!」

「くっ……ヤコヴ」

「皆! 今は目の前の魔者に集中するんだ! こんな姿でも超越の四魔者の一人、気を抜くとやられるぞ!」


 アメーバ状でいかにも知能の低そうな魔者だが、魔道王のレベル9の魔法を取り込み跳ね返す程の実力者だ。超越の四魔者の名は伊達ではない。こいつの特殊能力を考えると迂闊に手は出せない。俺たちはどんどん遠くなっていくワインガルトナー達をただ見ている事しかできなかった。


「くそっ! 埒があかないぜ! 魔力が駄目なら直接攻撃ならどうだ!」


 瞬神の騎士長シューケルが愛用のレイピア、ブルームーンを構える


「イージス・アンリミテッド!」


ズドドドドドドドド!!!!


 超高速の連撃がドレイン魔者に突き刺さる。穴だらけになるドレイン魔者……しかし何事もなかったかのようにすぐに復元し、今度は自らの一部を針のように尖らせこう言い放つ。


「…グ……グゴゴ……イ、イージス……アンリミテッド」


 全く同じ速度で今度は俺達に超高速連撃が襲い掛かる。


「くそっ! タイタンアプライフ!」


 魔道王クロコップが咄嗟に魔法を唱え地面を隆起させる。土の壁に覆われた俺達であったが、その壁を貫いてドレイン魔者の刃は俺達を吹き飛ばす。


「「ぐわぁぁぁぁ!!」」


 城門に激突する俺達。魔道王のタイタンアプライフがなければ今の攻撃で終わっていただろう。威力もシューケルの物と全く同じという事か……


「皆さん……大丈夫ですか?」


 レコが皆に声を掛ける。『エデンズエイト』の中で最年少であり上級使者へのクラスチェンジができていないレコがもっともダメージが大きいはずであったが皆を心配させまいといち早く立ち上がる、勇敢な子だ。


「く……斬撃までも取り込めるのか……これでは全く手が出せない」


 瞬神の騎士長シューケルに焦りの色が見える。しかし敵は俺達に考える時間を与えてはくれなかった。


「グ…ゴゴ……ブ……ブラッドファンタズマ……」

「!?」


ギュォォォォォォォォォォォ!!!!


 赤い無数の刃が再度俺達めがけて飛んでくる。魔道王クロコップが同じくブラッドファンタズマを唱え迎撃しようと試みるが詠唱が間に合わず相殺できたのは半分程度。残りの半分の刃は容赦なく俺達を襲うのだった。


「「ぐわぁぁぁぁ!!!!」」


 万事休すか!? こいつは強すぎる。そんな時同じ方向に吹き飛ばされたレコが俺に話しかけてくる。


「あ、貴方の……貴方の力が必要なんです。ワインガルトナーさんと同じ導かれし者の貴方の……常闇の力が……」


 すがる様に俺の服を掴むレコ。

……すまない。俺はまだ戦うわけにはいかない。ここで『エデンズエイト』のパーティーが全滅しようとも、だ。


「また来るぞ!」


 シューケルが声を張り上げる。ドレイン魔者は先ほどと同じように自分の体の一部を針状に変えていた。イージス・アンリミテッドが……来る!


「クロコーーーーップ!!」

「!?」


 先ほど聖盾アテナオリンポスを全力展開したせいでほとんど動けずにいた鉄壁の盾フランクフルターが叫ぶ。


「クロコップ……爆発系のどえらい奴を、あの魔者に打ち込んでくれ……」

「なっ? そんな事をしても……いや、何か考えがあるんだな?」


 フランクフルターは小さく頷く。


「分かった……天高く舞う龍の咆哮よ、空へ虚無の心を解き放ち全ての戒を爆散させよ」


「アルティメットナーガラージャ!!」


リュゥオォォォォォォゥゥゥゥ!!!!!!


 龍を象る閃光がドレイン魔者めがけて飛んでいく。しかし、やはりというべきか効果はなくあっという間にドレイン魔者の体に吸収されていった。そしてアメーバ状の体を大きくこちらへ向かって広げてカウンターが飛んでくる。


「グ…ゴゴ……ア、アルティメット……ナーガ」

 

 俺たちに向けてアルティメットナーガラージャが飛んでくるかどうかの刹那。飛び出したのはフランクフルターだった。

 フランクフルターはドレイン魔者を抱きかかえるとそのままこう叫ぶ。


「アテナオリンポス・サンクチュアリ!!」


 ブゥゥゥン……とシャボン玉のような少し大きめの球体がフランクフルターとドレイン魔者を包み込む。少しつつけば割れてしまいそうな、そんな儚い色と形をした球体だった。


「フランクフルターさん……まさか!?」

「フランクフルタ―……やはりお前は……」


 フランクフルターはこちらを見て笑う。


「がははは! なぁに、そんな顔をするな。ちと歩き疲れてな、わしはここらで休ませてもらう事にするわ。ついでにこのでかい城門もこじ開けといてやるわい」


 そう言うとドレイン魔者を抱きかかえたまま城門前に移動しピタッと城門に肩を当てた。


「さあ、勝負と行くか超越の四魔者よ!」

「グ…ゴゴ……ア、アルティメット……ナーガラージャ」


 大きな光が球体の中を包み込む。


「がははは!! 鉄壁の盾フランクフルターの最後の大仕事じゃわい!! ……皆、元気でな」

「「フランクフルター!!」」


リュゥオォォォォォォゥゥゥゥ!!!!!!


 閃光は球体から洩れることなくそのシャボン玉の中で光り、そして消えた、何もかも。

 本来爆発系であるはずのアルティメットナーガラージャを狭い球体の中で集約させた威力は凄まじく城門にも球体状の穴が開いていた。

 爆心地で唯一残ったのは聖盾アテナオリンポス。熱で変形してしまった聖盾に描かれた女神の顔はまるで泣いているようだった。


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