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19話:風を統べる吟遊詩人ヤコヴ

「うぅ……ズッペーさん……僕にもう少し力があれば……」

「わしが不覚さえ取らなければ、仲間も守れず何が鉄壁の盾じゃ!」


 鉄壁の盾フランクフルターと臆病者だが時として勇敢なレコがズッペーの死を嘆く。


「ラララ―♪ 皆さんズッペーさんの死を無駄にしてはいけません。さあ、トランシルヴァニア帝国へ向かいますよ」

「そうだ、ヤコヴの言うとおりだ。ズッペーの為にも今は進もう」


ズッペーの屍を乗り越えて俺たちはトランシルヴァニア帝国へ向かう。



――――――――トランシルヴァニア帝国城門前――――――――



「ここか……ついにここまで来たんだな俺たちは」

「あぁ、だがこの巨大な門どうやってあけるんじゃ?」

「ラララ―♪ あそこに管制室があるようです。ワインガルトナーさん、私たちで見てきましょう」

「分かった。皆はここで待っていてくれ」


白翼の勇者ワインガルトナーと風を統べる吟遊詩人ヤコヴが城門横に設置されている管制室へ向かう。


「む……特に扉を開けるようなものはないな。仕方がないあまり騒ぎは起こしたくなかったが壁を破壊して突破するか」

「ラララ―♪ そうですね。貴方のファイナルイノセントワールドであればそれも可能でしょう。ですが貴方がいなければ『エデンズエイト』は、いえ今はもう『エデンズセブン』ですか。彼らは永久にトランシルヴァニア帝国に入る事は出来ないという事ですね」

「何を言っているヤコヴ?」

「ラララ―♪ いえ『エデンズシックス(・・・・)』でしたね!」


ポロロン♪


 風を統べる吟遊詩人ヤコヴがエウロス竪琴を奏でると管制室が風に包まれる。


「!?」


 異変に気付く俺達。しかしもう遅かった。管制室は球体の風に包まれ何人も立ち入れない結界となっていた。一人管制室から抜け出したヤコヴは風を操り遥か上空へと上昇して行った。


「ラララ―♪ ワインガルトナーさんはエウロスの結界に捕えました。残念ですが貴方達が魔王ザグレブの元に辿り着く方法はもうありません」


風を操り空中から見下ろすように俺達に言葉を投げかける。


「馬鹿な! 何故だ!?」


 瞬神の騎士長シューケルは信じられないといった表情で上空を見上げる。


「ラララ―♪ 私は元々魔王ザグレブの配下、ただそれだけの事ですよ」

「そんな!? 心優しき音楽を唄いあげ戦いに疲れた人々を癒してくれていたヤコヴさんが? う、嘘だ!」

「……どいていろレコ」


 若き魔道王クロコップが空に向かって賢帝の杖を掲げる。


「闇夜に囚われし亡霊よ、鮮血の赤き魂よ、禁断の交わりを開放し汝等の蝕撃を持って敵をうち滅ぼせ……ブラッドファンタズマ!!」


ギュォォォォォォォォォォォ!!!!


 赤い無数の刃がヤコヴを襲う。


「いきなりレベル9ですか。流石は魔道王。切替が早い、ですが……出番ですよ! ドレイン魔者さん!」


 突如城門の上から飛び出てきたアメーバ状の魔者によって魔道王の必殺ブラッドファンタズマはヤコヴに届く前に消滅した。


「何ぃ!? 吸収しただと!?」

「グ……グゴゴ……ブ……ブラッドファンタズマ……」


 ドレイン魔者と呼ばれるアメーバ状の魔者がそう唱えると今度は赤い無数の刃が俺達めがけて飛んでくる・


「まずい! 皆! わしの後ろに隠れろ! アテナオリンポス最大パワぁぁー!!」


 聖盾アテナオリンポスの出力を全開にしてフランクフルターが防御結界を張る。世界でも数えるほどしか使い手がいないレベル9の魔法であったが最大出力のアテナオリンポスの防壁を破るには至らず俺たちは事なきを得た。


「ラララ―♪ やりますね」

「くっ……本当に、本当に俺達を裏切るつもりなんだなヤコヴ!」

「元々仲間になった覚えなどありませんが? そんな事より自分たちの事を心配してはいかがですか? 先ほどの怪我もありフランクフルターさんは当分戦えないでしょう。お気づきの通りドレイン魔者さんは相手の魔力を取り込み自分の力に変える事ができる超越の四魔者です。ワインガルトナーさん抜きで貴方達に勝ち目はありませんよ」


 そう言って風を統べる吟遊詩人ヤコヴは唄うように笑った。


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