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第3話 レンタルゲーム

時刻は午後12:50。

昨日、佑磨が私に言った時間の10分前。

私は公園の前に来ていた。

あの場所に行けばあいつがいるのはわかっている。そして、自分がリスクの高過ぎることをしようとしている事も。だけど、私は来ていた。


「ふぅ〜」


深く息を吐く。

公園の天気は良い。いつもと変わらない人並みだ。

私の歯車はここから狂い始めるのか。それとも、狂ったのではなく、歯車が絡み合ってここにいるのか。それはわからない。


「行こう」


自分で自分の背中を後押しする様に言った。

公園の中に入り、昨日と同じ場所に向かうと、そいつはそこにいた。


「景?」

「なによ、その以外って顔は?」

「い、いや、まさか本当に来ると思ってなかったから……」

「酷いわね。あんたはそう思う事に私を誘ったの?」


佑磨は、ははっと苦笑いをした。


「景、ありがとう」

「な、なによ、気持ち悪い」

「ははは。じゃあ、やるか」


そう言うと、佑磨はあの道具を取り出した。

道具は二つ。

腕に時計の様に巻くものと、身体の何処かに貼るのであろうシールの様な小さな機械。

佑磨は腕に機械を巻き、手のひらにシールの様な機械を貼った。


その瞬間、機械が作動する音がカチャカチャと聞こえた後、腕に巻いた機械の方から光が発せられホログラム映像様に何かが映しだされた。


「ようこそ、レンタルゲームの世界へ!」


奇妙なヌイグルミが、映し出され.映像の向こうで話している。


「これから、君達に行ってもらうゲームの説明をするよ。

このゲームは名前の通り借りるゲームですよ。参加者の人の大事なものを一つ誰かに貸します。そして、自分も誰かの大事なものを借ります。

借りたしものを先に返した人の勝ち。返された人の負け。単純なゲームだよ」

「勝利者への報酬と敗者への罰は?」

「良い質問だね。でも、君はあれを付けていないね。付けていないものに発言権はないよ」

「な、なら、俺が同じ質問をする。勝利者への報酬と敗者への罰はなんだ?」

「君の質問ならO.Kだよ。勝利者への報酬は返した相手の財産全て」

「ま、まじか!?」

「なるほど、たくさんゲームをやって勝ち続ければ、確かに億万長者になれるわね」

「そして、敗者への罰は……」


そこまで言って、人形の口元が大きく緩みにやりと笑った。


「敗者への罰は死。ゲームに負けたら死ぬんだよ〜〜。まぁ、あとはやりながら覚えてよ〜。早速、ゲームを始めるよ。さぁ、自分が貸すものを選んで」

「ちょ、ちょっと!? こんな説明で私達に生き死にのゲームをしろって言うの!?」

「えっ? だって、君達がお金持ちになりたいからゲームに参加したんでしょ?

普通に考えて、何処に億万長者にひょいひょいなれるゲームがあるっていうの?

ハイリターンに見合うだけのリスクを負うのは当然じゃない。それに、君達みたいなのがいるから面倒臭いけど、ちゃんとマニュアルも付けてあるんだからね」

「マニュアル!?」

「腕に付けた装置のボタンを二回押すと出るから、あとは勝手に読んでよ」


そして、私は考え、佑磨にヘンテコなヌイグルミに確認する様に言った。


「なぁ、貸し出すものは一つだけじゃなくてもいいのか?」

「貸し出すものは幾つでも構わないよ。但し、貸出相手は一つしか借りる事が出来ないから注意してね。それと、貸し出した数だけ自分も借りる事が出来るよ」


なるほどね。つまり、貸し出す数を多くしたら、その分一回のゲームで複数人の相手から狙われる代わりに勝った時の報酬は大きくなるって事か。


「とりあえず、先ずはこのゲームを知らないといけないわね。佑磨、初めは一つから始めましょう」

「O.K! 俺の大事なものかぁ。秘蔵のコレクションとか?」


佑磨のコレクション?

まぁ、男の秘蔵と言ったら大体想像はつく。

すると、ヌイグルミは佑磨に返答した。


「それって、エッチなやつでしょ? 君も男の子だね〜。まぁ、わからなくもないけど、今回はNG! 幾ら秘蔵と言っても、それが無くなって君は凄く悲しむかい? それは、微妙だよね。だからダメ」

「無くなって悲しいものかぁ」


その時、佑磨は油断していたのか無意識か自分の指を見てしまった。

その視線をヌイグルミは見逃さなかった。


「それなら大丈夫だよ。じゃあ、君の指を貸し出すよ」


そう言った瞬間、佑磨の片手の指が消えた?


「えっ?」

「ゆ、佑磨!?」

「う、うわぁぁぁ!?」


私達の様子を見て満足した様ににんまりと笑ったヌイグルミが言った。


「安心してよ。別に痛みはないでしょ? ゲームの為に借りただけだよ。但し、今回のゲームが終わるまでは使えないけどね〜。それと、今回、君達が借りるモノはこれだよ」


すると、いつの間にか佑磨の手に小さなペンダントが置いてあった。


「さぁ、レンタルゲームの開始だ!」


そこで、ヌイグルミの映像もプツリと切れた。

私と佑磨はお互いの顔を見合わせ、今起こった非現実的な事に対し気持ちの整理を行った。


「と、とりあえず、佑磨。手は大丈夫?」

「あぁ、あいつが言った通り痛みはない。それと指が消えてるけど、指の感覚はあるんだ。なんか、不思議だけどな」

「感覚があるなら、何か掴めたり出来ないの?」


佑磨は地面に落ちていた石を拾いあげようしたが、佑磨の指が石に触れる事は無かった。


「感覚はあるけど、モノとかは掴めないみたいだ」

「そう」


今の状況から、貸し出したモノの使用は本当に出来なくなるみたいね。でも、使用出来ないから無くなったり、消えたわけでもない。


「そうだ!? あいつが言ってたマニュアルって奴をみてみよう」


私は佑磨の代わりに腕の機械のボタンを二回押したが、何も動作しなかった。


「あ、あれ?」

「何にも出てこないな」


この状況に私はさっきヌイグルミの説明で言われた事を思い出した。


「もしかして、これって付けている本人しか操作出来ないとか?」

「ま、まさか」


佑磨は消えていない手の指で機械のボタンを二回押した。

すると、ヌイグルミの映像が出た時みたいにホログラム映像でマニュアルが空中に映し出された。


「やっぱり」

「これって付けた奴の操作しか受け付けないのか。凄いな……」

「感心してる場合じゃないでしょ! 早く読むわよ」


『レンタルゲームマニュアル』


1:相手を殺してしまう行為はダメです


2:借りたモノが誰のかを探す時は、腕に巻いているウォッチの機能を使いましょう。

ウォッチには、検索機能、通話機能、ショップ機能など、様々な機能がついているので、色々使ってみてね。


3:借りたモノを返す時は、借りたモノが相手の身体に触れると返す事が出来ます


4:協力者に関しては、各自自由に用意して構いません。但し、協力者の主人がゲームに負けた場合、協力者も主人と一緒に死んでもらいます


5:協力者に関しては、主人となる人間と契約を交わして頂きます


6:協力者は主人との契約を自らの判断で切ることが出来ます。交わした契約を切った協力者は裏切り者としての烙印が押されます


「この場合、私は佑磨の協力者になるわけだから、契約をしないといけないって事ね」

「でも、契約ってどうやるんだ?」

「さぁ? マニュアルには書いて無かったね。なんか適当にそれっぽい事をやったら出来るんじゃない?」

「例えば?」

「契約って言えば、エッチとか?」

「ばっ!? ばかか!?」

「あら、あら? 佑磨、反応し過ぎ。想像した?」

「するか!!」


私は佑磨をからかいながら、マニュアルをめくっていった。

すると、時計型機械の部分に契約という文字を見つけた。


「どうやら、その時計型の機械で出来るみたいね。佑磨、ちょっと操作してみてよ」

「そんな事を言われても、ボタンもこれ一つしかないし」


佑磨は時計型の機械についているボタンを一回押した。

すると、空中に契約の文字が浮かび上がり、契約者の音声を入れるように指示があった。


「私の声かな? え、えっと、皆月景です。私は藤沢佑磨の契約者となります」


その瞬間、時計型の機械に私の名前が浮かび上がり、光が私の腕に奇妙なマークを刻んだと同時に佑磨にも同じマークを刻んだ。


「これで契約が出来たのかな?」

「多分な。これで始める準備は終わったな。さて、最初の相手の貸しものは、このペンダントか。まずはどうやって相手を探すかだな」

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