ヤンデレ帰路につく
それから、一日の授業を終えた僕は家に帰る準備をしていた。
「そういえば、幸って家どっち方面にあるの?」
彩希が、そうきいてくる、僕は彩希に話しかけられるだけでも幸せだ、自然と顔がにやけるのを感じながら、返事をする。
「○○の住宅街だよ、あの駅に近い」
「え?本当?私もあそこの住宅街だよ」
「ほ、ほ、ほんとう!?な、なら僕と一緒にか、か、か、かか…」
「か?」
「一緒に帰ろう!」
言ってしまった、気持ち悪いって思われないかな、断られたらどうしよう…。
「ん、いいよ折角だし一緒に帰ろっか、積もる話もあるかもだしね」
「ぁ…ありがと…」
そのあと彩希はクラスメイトになにかを誘われていたが、どうやら断ったらしい、僕なんかのせいで彩希に迷惑かけたのかもしれない、そう思うと彩希と一緒に帰れると、喜んでいた気持ちも何だかしぼんでいってしまって、どんどんネガティブな考えの深みにはまっていってしまう。
学校を出て、最初は彩希と並んであるいていたけど、僕なんかが彩希と並ぶなんて場違いなんじゃないかと、思ってしまい、徐々に間が開いていき、いまは彩希の三歩後ろをうつむきながら歩いている。
すると、彩希が突然振り返りこっちにずんずんと聞こえそうなほどの威圧感を放ちながら向かってきた。
僕は怒られると、思い、ビクリと肩を震わせた。
しかし、予想に反し、彩希は僕の手を掴み、歩きだした。
「あ、あの…彩希、手が…」
「あら、嫌なの?嫌なら離すけど」
「い、嫌じゃない!…でも急になんで…」
「幸が足遅いからよ、私結構ゆっくり歩いてたのにいつのまにか後ろにいるから」
「う…ごめん…彩希に迷惑かけたよね…僕なんかのせいでごめんね…さっきもクラスメイトの誘い断ってたの僕のせいだよね…彩希が嫌になったら僕なんか構わなくても…」
「はぁ、ねえ幸、あなた私が嫌いなの?」
「そんなわけない!す、す、すっすすきだょ…」
「私も幸が好きだから一緒にいるの、だからそんな顔しない!」
「彩希が…ぼくをす、す、すき…?……ぁぅ…」
僕の顔はまるで身体中の熱を顔だけに集めたみたいに火照ってしまった。
しかし、僕はふと考える、君の好きはきっとライクの方なんだろう、でも僕はまだ、ラブのほうなんだ…はは、気持ち悪いよね。
……………………………
それから、二人で歩き続けて、彩希は僕にまだ帰り道同じなの?と何度か聞いてきたけれど、どうやら、僕と彩希の家はかなり近くにあるようだ、こ、こんなに近いなら毎朝…一緒に学校にも行けるのかな…えへへ…。
なんて、考えていると僕の家はもう目の前に近づいていた。
「あ、彩希ここが僕の家だよ」
「え、すごい偶然だ、向かい側私の家」
なんと、彩希は向かい側に新しくできていた家に引っ越して来たらしい。
彩希はまだ、引っ越しの片付けが終わっていないらしく、それじゃあまた明日ね、といい僕の頭を撫でると自分の家へと帰っていった。
僕もまた、彩希に撫でられた頭とさっきまで繋いでいた手の余韻を味わいながら家の扉をあけた。
どうやら両親はもう帰っていたようだ、ただいまと言って、リビングに入る、僕から挨拶をしたことと、僕のいつもと違う雰囲気にただならぬものを感じたのか両親は目を見開いて驚いていた。
「……お父さん、お母さん…僕、友達ができたんだ」
誰かに、僕の喜びを伝えたかった、だってこんな奇跡が起きたんだ、彩希の事を思い出すと自然と顔が緩む。
「あ、ぁあ…ゆ、ゆきが笑った…!」
「幸!幸ぃぃぃぃぃい!!」
両親は僕の笑顔を見た瞬間、時が止まったかのような一瞬をおいて、途端にダムが決壊したごとく号泣しながら僕に抱きついた。
「うわぁぁぁぁぁ!!幸ぃぃぃぃぃ!!悪かったぁぁ!今までごめんなぁぁぁぁ!なにをしても無表情だから!俺は俺はぁぁぁぁ!嫌われてるのかと思ったぁぁぁあ!!びぇぇぇぇぇ!!」
「ひっく…ぐす…私達が悪かったわ…忙しいからって幸のこと小さいときからよく一人ぼっちにさせてたから…いつも謝ろうとしてたの…ぐす…ごめんなさいぃ…!でも私達が幸を笑えなくしちゃったのかと思ったら…!」
え、え…二人とも無表情の僕が怖かったんじゃなかったの?…え?
「お、お父さん、お母さん今まで邪険にあつかってごめんなさい…」
「「幸ぃぃぃぃぃ!!」
幸が気づいてないだけで両親ともわりと幸に色々アプローチしてました、が、運悪くそのタイミングで春香の事を思い出していたので気づきませんでした。
ついでに彩希はまだ幸にたいしての感情はラブではなくライク。
自分の事が好きなのかおうおうういやつめ、みたいな感じです。
まぁ、まだ、なだけですけどね。