妖精さんと手
僕には妖精さんが見える。
妖精さんはいい奴だ。大抵の質問にあの手この手で答えてくれる。
「ねえ、妖精さん。どうして僕には彼女ができないんだい?」
「それは君が奥手だからじゃないかな」
「なるほど」
次の日、かわいい子に積極的になったら捕まった。今は警察のお世話になっている。
「ねえ、妖精さん。何で僕はここにいるの?」
「それは手が過ぎたからだよ」
「ちょっと触れただけなのに」
結局、起訴され有罪判決。僕は投獄され、一ヶ月が過ぎた。
「ねえ、妖精さん。何故誰一人として家族は面会に来ないの?」
「犯罪者の、それも痴漢だなんて誰だって手切れにしたいよ」
「そうだよね」
数年後、釈放された。
けれど、仕事も、帰る家も無い。
「ねえ、妖精さん。僕はこれからどうすれば……」
「ごめんね、手の施しようが無いよ」
「分かってた。今までありがと、妖精さん」
僕は縄で首を括った。
僕が死んでも世界は回る。見知らぬ誰かの手によって。