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男の娘が異世界の女騎士団を全員攻略とか無理ゲーだろ  作者: 矢御あやせ
Ⅰ はじまりの鐘が鳴る―ベル√―
4/8

神様は月曜がお嫌い

頭の中がフッと真っ白になる感覚に襲われる。が、それはすぐに収まった。

なんなんだ、さっきの変な幻聴。ルート? 意味わかんねーし。


「ど、どうしたの……? キヨシさん」


あれ、ベルちゃんが心なしかよそよそしくない?

さっきまで密着してた距離も離れてるし、心の距離も栃木と大阪ぐらい離れてしまった気がする。


「え、あ、なんでもない。じゃ、しよっか。恋愛」


そう言って、俺はとがらせた唇をベルちゃんの顔に近づけ――


「気持ち悪っ」


さっきまで真っ赤だったベルちゃんの顔が一気に真っ青になった。俺はワケがわからない。

え、だってしようって言ったじゃん、恋愛。

手とか触り合ってすっごいいい感じだったじゃん。

何で? どうして?


「え? えっえっ???」

「ちちち、近寄らないで!!!」


ベルちゃんは立ち上がり、逃げるようにして壁際へと駆けていく。


「なんで、どうしてベルちゃん!! 恋愛しようって言ったじゃんか」


俺もそれを追いかけるようにベルちゃんに近づいていく。そのプラチナブロンドの髪に触れようとした瞬間――


「はああっ」


ガツウウウウウン!

ベルちゃんは壁に立てかけた杖を手に取り、それで俺の鳩尾を思い切り突いたのだ。


「グハァッ」


き、き、効くう~。


「ゲホッゲホッゴホッ」


俺は立っていられなくなり、蹲ってむせ返った。

一応その中でもベルちゃんを目線で追うが、タッタッタッタと足音を立てながらドアを開けてどこかへ消えていってしまった。


なんなんだ、女心ってそんな変わるもんなのか。

クラスの男だか女だかわかんないようなゴリラ腐女子に哀れみで話しかけられた事しかない俺にはそんなんわかんないよ。


「ゲホッゲホッ」


咳止まんねー。咳止めシロップ飲まなきゃ。あぁ、ここ異世界だよ。栃木帰りてー。


との時、シャラランッと安っぽい音がした。

視界の端の方でなんかキラキラ光るものが見える。


「ありゃりゃ、遅かったんだ」

「ゴホッゲホッゲホッゴホッ」


やたらファンシーな声がする。この声の感じは日曜朝の女の子が変身してやたら肉弾戦を繰り広げるあのアニメのマスコットに通ずるものが有る。

っていうかこっちはそれどころじゃねぇ。さっきのダメージが酷すぎて咳が止まんねーんだよ。


「はじめましてなんだ、ナカハラくん。僕は君を異世界に飛ばした神様の使いなんだ」

「ゲホッゲホッゴホッオエッ」


咳とまんねーよ。とまんねーからなんか言ってるのかろくに聞こえねーんだよよ。

っていうか神の使いとか言ってた? じゃあその神通力みたいなのあるじゃん。それで咳止めシロップ買ってきて。いちご味ね。


「とりあえず、ゲホッ、これ、おえっ、止まる……まで、ゲホッゲボッツ、待って」

「大変そうなんだ」


暫くの間俺は咳をし通した。そして、顔を上げて先ほどベルちゃんとイチャイチャしてたベッドに座ってファンシーな声のキラキラと向かい合う。


それは手の平に収まる程の白い星だった。

星。「ほし」って打って変換ボタンを押したら出てきそうな、何の変哲もない星。それがそれぞれの先端部を手足のように動かしながら俺に話しかけている。


「まず君が異世界に飛ばされたのは、神様のせいなんだ」

「神様?」


星がくるくると回る。っていうかイチイチ癪に障るしゃべり方しやがって。


「天界っていうのはその国の役所と一緒のシステムになってるのが基本で、日本の市役所みたいなのを想像して欲しいんだ」

「え、天界も番号札で呼ばれたりするの?」

「正解なんだ。おまたせしないようにスムーズな業務をするのが努めなんだ。日本には八百万の神様がいるんだ。それは沢山の部署と職員がいるって意味なんだ」


なにそれ、俺の想像した八百万と違う!


「君をこの世界に飛ばした神様は時空管理課の職員なんだ」

「じゃ、じゃあ俺に使命を与えるためとか?」


ほら、異世界に来てしまった系ラノベにありがちな、魔王を倒して、勇者様。的なやつ。


「すごいんだ」


星が驚いたかのように首(?)を前に出す。


「すごい厨二病なんだ」


俺は今、最高に恥ずかしい。


「すいません」


深夜のコンビニ店員のようなテンションで小声で謝る。


「これはただの神様の気まぐれなんだ」


へー、気まぐれ。気まぐれかぁ。気まぐれならしゃーないよな。はっはっは


「なんだそりゃ!!!!!!」


俺はガタンと立ちあがって吠えた。


「神様は今、上司のパワハラで凄いストレスを感じてるんだ。月曜日の朝が来ると今にも死にそうな顔をするんだ」


ねえ。そいつほんとに神様?

ツイッターで月曜が来ると騒ぎ出すオッサンじゃん、それじゃ。


「そんなワケで、神様も趣味が欲しいって事らしいんだ」

「って趣味って俺かい!!」

「最近天界では人間を異世界にトリップさせて遊ぶのが流行ってるそうなんだ。」


なんだそれ!!!

この慈悲なき世界に神などいないのか!!

いるけど、それ、俺が思ってた神じゃねぇ!!!

っていうか月曜日が嫌いなオッサンのせいで俺は裸を見られたのか!


「で、さっきのベルの件だけど、神様は恋愛ゲームが好きだから、騎士団の女の子とのフラグを完遂すると時間が戻るんだ」

「は?」


いや、さっき重要な事言ったよね?

時間戻るとか言ったよね?

どういう事?

どういう事だよ!!!!!


「騎士団全員攻略するまで、帰れまテン」


おい、神様、表出ろ!!


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