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男の娘が異世界の女騎士団を全員攻略とか無理ゲーだろ  作者: 矢御あやせ
Ⅰ はじまりの鐘が鳴る―ベル√―
2/8

理想のヒロインとその正体

胸の位置まで下ろされた栗色の巻き髪はハーフアップにして桜色のりボンでまとめている。利発そうな切れ長の目。絹のように白い肌。今にも折れそうな華奢な身体を覆うのは、白い襟つきの紺色のワンピース。


遠慮がちに言えば印象の良い少女。

普通に言えばめっちゃかわいい。


これ誰だと思う?



俺だよ。



ないわー。


改めて見る。

やっぱめっちゃかわいい。

正直あり得ないくらいかわいい。多分ベルちゃんと同じぐらい好み。服装も含めたらこっちの子の方が好き。

服だってなんでもかんでも露出すりゃいいってもんじゃない。こういう服を求めてんだよ、男は。

求めてはいるけど着たかったワケじゃないけどな!



ないわー。

女装とか文化祭でチャラいやつがやるやつだろ? マジないわー。


「うっわー。ピッタリだね。これ、ブロッサムのお下がりじゃん」


デイジーが頭の後ろで腕を組みながら言う。

丸見えの脇はつるつるのすべすべ。思ったより幼いのかもしれない。


「どうしよう、私の知ってる男の人と違う……」


ベルは顔を真っ赤にして口をモゴモゴとさせていた。


「男の人って、もっとゴツゴツで……すごい……怖くて……」

「男と言っても子供だ。おそらく」


と、涼しい顔で言い放ったネリアさん。コイツ、壁に凭れて腕組むのほんと好きだよなー。


「……まあ、子を成す力はあるだろうがな」


ネリアさんが到底冗談を言ってるようには見えないのがとても嫌だ。

っていうか子を成す力はあっても相手はおりませんがな。俺のモテない伝説はとても長くなるので省略するとしよう。


「わ、わ……そ、それって……」


ベルは今にも沸騰しそうな程顔を真っ赤にしていた。ウブだなぁー。ますます好みだ。

対して、デイジーはポカンとした顔。


「赤ちゃんってワイバーンが運んでくるんじゃないのー?」


こえーよ。


そんなんに運ばれたら死ぬまでトラウマになるわ。ゆりかごから墓場までトラウマだわ。

っていうかワイバーンに運ばれるとかめっちゃ揺れそうだよね。栃木の山道をトラクターで激走するのといい勝負だよね。

それにしてもワイバーンって……ワイバーンって……そんなオタクしか知らないような単語がこの馬鹿そうな女の子の口から出るって……本当に別の世界に来ちゃったんだな、俺。


「デイジー。この件は絶対に誰にも口外するなよ」

「え、なんで? ブロッサムにはいいでしょ?」


ネリアさんに言われ、デイジーは口を3の字にする。

わーかわいい。ほんとかわいいなー、コイツ。やっぱ飴ちゃんあげたい。ぺろぺろできるやつ。


「いいや。例えブロッサムだろうと許さん」

「なんでさ! やだよ、双子に隠し事はなしだもんっ!」


デイジーはふくれっ面をする。ほんとコロコロ表情が変わる子だなぁ。


「いいや、許可できん。もしも口外したら。お刑罰はお前だけでは済まぬぞ」


デイジーの顔が青くなったり赤くなったり忙しい。

だが、


「いーーーやーーーだーーーー!!」 


サイドテールを振り乱し、ネリアさんへと突進をした。


「バカバカ! ネリアのバカ! ブロッサムがかわいそうだもん! ネリアは頭がカタいからおっぱいも育たないんでしょ!!!」


デイジーはネリアさんのまっ平らな胸をポカポカ叩いている。ごきげんナナメなの? 飴ちゃんあげよっか?

にしても、俺の服をくれたブロッサムってのはデイジーと双子なのか。ってことはこんな騒々しいのがもうひとりいるのか。それはそれは……。


「デイジー。秀でた力なきブロッサムが未だに何故ここに居られるのか考えろ。……それが答えだ」

「うっ……」


デイジーは息を詰まらせた。顔を真っ赤にして目の端に涙を溜めてネリアさんを睨んでいる。


「……デイジーは、ブロッサムを、信じてるもん」


そして扉を乱暴に開き、バタバタと音を立ててそこから去って行った。

ネリアさんは頭を抱えてはぁ、とため息をついた。


「……私も床につく。少し疲れた。ベル、こいつを頼んだ」

「はい、カーネリア様」


ベルちゃんはネリアさんの背中に向かって深々と頭を下げていた。

ネリアさんは相当偉い人なんだろう。子供のデイジーはそれを分かっていないようだ。



ネリアさんが完全に見えなくなった時、ベルちゃんはようやく顔を上げる。

色素の薄い髪がふんわりと揺れる。


「えっと、その……」


ベルちゃんは顔を真っ赤にして口ごもっている。色素の薄い肌に差した赤みはバラが咲いたかのようだ。

俺も何て話せばいいかわからなくて、沈黙が流れた。


「キヨシ、さん……」


俺よりちょっと低いくらいの身長の子の上目遣い。う、うわぁ。童貞の俺にはこんなん初めてだよぉー。刺激が強すぎるよぉぉぉぉ。


「キヨシでいいよ。あ、いや、女だしキヨのがいいのかな。とにかく、呼び捨てとかでいいから」

「じゃ、じゃあキヨ……くん」


キヨくんって!!!!


もっかいいっちゃうよ。


キヨくんって!!!!


俺そんなん初めてだよ。中原くんとかならあるけどキヨくんとか初めてだよ。女子と基本距離取ってるから知らないよそんなやり取り。そんなん漫画かラノベかエロゲでしか見たことねーし。創作物にしかあり得ない架空の存在だと思ってたよね、愛称+くん呼び。


「じゃあさ、俺からはベルちゃん、って呼んでもいい?」


ガンガン行こうぜ!!!

ここはガンガン行こう。ベルちゃんならきっと許してくれる。


「う、うん」


現にコクンって弱々しく頷いてるもんね。

やっぱかわいいよ、何この子!!!

それでもってベルちゃん恥ずかしがってめっちゃもじもじしてんじゃん。それにいい匂いする。石鹸の香りだー。わーーーーーわーーーー超かわいいよ。窓あったら身を乗り出して叫びたい位かわいいよ。ベルちゃん。キミほんと最高!!!! 

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