序文
――小山内信志の娘、小山内紗亜弥はごく普通の小学四年生だった。
……ううん。
ごく普通というのは当てはまらないかも。
お父さんの影響をもろに受けて、それはそれは健全なオタク少女に成長してしまったのだから。
しかし、それももはや些細なこと。
今のさーやにとっては。
「行くよ、ルリカ!」
「へ? と、唐突すぎませんか?」
――二次元世界、だーい好き!!
さーやが心の中で叫んだその時、ルリカの瞳とさーやの瞳が交差した。
――キラキラリーン。
二人の瞳の輝きが光と音を放って重なり合う。
すると、そこにフリルで装飾された真っ白なパラソルが現れた。
さーやは思わずそれを摑む。
「{モエモエ・スウィート・ロリロリター}」
パラソルはさーやの言葉に反応し、クルクル回る。
パラソルが軌跡を描いた部分に光が舞い降りて――。
――頭には白いヘッドドレス。
――肩には白いケープ。
――全身は真っ白なフリフリのドレス。
――袖口は姫袖に真っ赤なリボン。
――胸にも大きなピンクのリボン。
――スカートの中はパニエにドロワーズ。
――足を包み込むのはエナメル製の真っ白なシューズ。
――まるでショートケーキのお姫様のよう――。
甘ロリファッションに包まれたさーやは、パラソルを肩にかけてポーズを取った。
「二次元世界の守護天使――魔法オタク少女ロリータサーヤ!! あなたの萌え心、守ります!!」
「行くよ、オタク少女魔法――{この物語はフィクションであり、実在の人物団体とは関係あるはずがありません!!}」
「って、それはなんの魔法ですか!?」
「わかってないなぁ。お約束、だよ」
愛らしくサーヤはウィンクを決めた。