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「始まりの森の決闘」


正式サービス開始より四時間が経過。


サービス初日とあってか、プレイヤーの数はみるみるうちに増し、

森の中においても、しばしばプレイヤーの姿が目立っている。


聞こえてくる会話はおおよそ二種類。


初体験となる、フルダイブシステムについての感動や驚きの声、

そしてもう一つは、ファーストクエストについての事。


ダルコミートの小窟ボスモンスター、エギドラルオークの噂は

すでにかなり多くのプレイヤーの知るところとなっているようだ。

実際に相見え、敗れたという声も少なくない。



グルルルル…!!!



サイを小さくディフォルメしたようなモンスターが、激しく唸り声を上げる。



ドドドドドド!!!



目標に向かって突進する。しかし速さはさほどでもない。


「ほらよっと!」


寸でのところで、ケイズがモンスターをヒラリとかわす。

動きを完全に見切っている様子だ。


目標にかわされたと気づくや、モンスターは再度の突進のためにUターンを試みる。

その瞬間

後方からザリアが素早く追撃、一突きが見事に命中。


一撃にして、モンスターは消滅エフェクトと共に消え去る。



「だめだなこりゃあ…レベル上がる気しないよ」

ケイズが後頭部に手を当て、ため息交じりで言った。


「フム…。

この近辺の適正レベルを、とうに超えてしまっているようだ。

これはいよいよ、小洞を抜ける他はないだろう」


「しかしさ、よく考えてみると俺らヤバくないか?」


「何がだ」


「何がって、剣使いの前衛二人だぞ。

高レベルにこそなれば、どうにか自分で対処のしようもあるけど…

レベルも今はこのありさま、回復アイテムはほぼ無し

まさかエレパーティーの他の組のヒーラーを当てにするわけにもいかないだろう」


「敵の攻撃を全て避ければ済む話だ」


「お前それ、本気で言ってる?」


「ああ、本気だ」


「…うん、わかった。ちょっとPT募集掲示板のぞいてみる」


「好きにしろ」


ケイズは、ウインドウの中から、

近隣のプレイヤーがPT募集などを掲載する欄を選択し、一覧を表示する。


「うげ、だめだこりゃ…。

見ろよこれ、ヒーラー募集ばっかりだ。みんな考える事は同じってわけか

…まあヒーラー志望自体、数が少ないもんなあ」


「諦めろ。そのくらいがちょうどいいハンデだ」


「誰に対してのハンデなんだよ…」



フェザードリィマイスにおいて、ジョブの種類は途方もなく存在する。

前作において

そのジョブ自体がある個人プレイヤーをおいて他にいない、

などの例すらもあるほどだ。


今作でキャラクターエディット時に選べるジョブは3つ。


冒険者見習い


ヒーラー見習い


魔法使い見習い


選択によって、初期のパラメーターや所持品が変動するが

その後の育成指針は個人の裁量にゆだねられる事になる。


特にジョブチェンジする場所や項目はなく、

剣を使い込んでいけば剣士に、魔法を数多く会得していけば魔導士に、といった具合に

戦闘のスタイル次第で、ジョブは次々に自然と変わっていく。

まれに、特殊クエストクリア者のみに与えられるなどというジョブもある。


ジョブによってできる事の範囲も決定され、

例えば、剣士ならば剣の必要装備LVから-10LVで剣が装備できるなど、

ジョブ個々の特典も細かく設定される。

なお、メインジョブとは別に、任意で取得するサブジョブという枠も存在している。



「…ん?なんだあれ」


ケイズは、ふと視線の先の張りつめた雰囲気に気が付いた。

どうやら軽い人だかりができている様子だ。


「おい、まて」


ザリアの制止もきかず、ケイズは人だかりに近づいて行った。






ザワザワ…


あたりは張りつめた空気に騒然としていた。



人だかりの中心には二人のプレイヤー。お互いに剣を構え合っている。

一人は赤髪の男。

髪を逆立て、鋭く吊り上がった目つきは、いかにも好戦的という風貌だ。


もう一人は金髪で三つ編みの少女。

持っている装備から、ヒーラーだという事がわかる。


「おいなんだなんだ、喧嘩か?」


「なんかあの男強そうだな」


「え…でも、相手の娘ヒーラーじゃないか!?」


「ちょっと可愛くね?」


ギャラリーも騒然としている。


「おい、テメェ、自分で言った事忘れんじゃねえぞ」

剣を構えながら、赤髪の男が喋りかける。


「…貴様こそ忘れるな。私が勝ったら、もう二度と私の前に現れるな」


「口悪っっ!!でも気に入ったぜ!ルックスも良い。

俺が勝ったら俺のパーティーのヒーラーだ。わかったか?」


「何度も同じ事を言わせるな。始めるぞ」


「お前、仕様分かってるか?まあいい、灸をすえてやる。

お?どうやらここの一体は外界フィールド扱いじゃねえようだな。

じゃあ決闘だ!」




決闘開始がシステムによって宣言される。



 << Name:ガルヴァ Lv8 VS Name:フェルローデ Lv6 >>




「決闘モード始めやがった!あの二人!」


「おおっ!開始早々に面白そうな事やってんな!」


「でも、女の子相手で…しかもヒーラーだぞ…」


「男のほう、もうレベル8かよ、ずいぶん早いな…」


二人は武器を構え、しばらく睨み合う。

更に張りつめた空気が漂い始める。



そろそろどちらかが動こうかというその刹那、

さらにシステムによって宣言が追加された。


 

<< 乱入者あり。(Name:ケイズ Lv8) 挑戦を受けますか? >>



「あ?誰だこいつ?…つか、乱入なんつうシステムがあんのかよ!?」


「ケイズ…?」


人だかりを避けて、ケイズが二人の間に割って入る。


「いや、すまない…。

俺もまさか、乱入できるとは思わなくて。せっかくだし、よければ俺も混ぜてくれないか?ちょうど俺もヒーラーを探していたところなんだ。」


「三人決闘なんて面白いじゃねえか!かまわねえ、てめぇもぶっ潰してやるよ!」


「…」



二人の承認を得た事により、改めて決闘が宣言された。



 << Name:ガルヴァ Lv8 VS Name:フェルローデ Lv6 

  VS Name:ケイズ Lv8 >>



「ヒーラーさんはしばらく大人しくしてな!

順番からして、まずはテメェからだ…!」


ガルヴァがケイズに向けてすばやく攻撃を仕掛ける。


飛び出した勢いをのせ、片手剣を勢いよく振り下ろした。


「っと!あぶねえ!」


ケイズはヒラリと攻撃を避ける。

が、すでにガルヴァの二撃目が繰り出されるモーションは始まっている。


ガキィン!


剣と剣が激しくぶつかり合うが、勢いで勝るのはガルヴァだ。

圧に押され、ケイズは後方へと飛ぶ。


「へぇ、なかなか重いな」


「何せ、たった今ドロップした、ワザモノよぉ!!

村落で売ってるテメェのナマクラと一緒にすんなや!」



間髪を入れず、ガルヴァは攻撃の手を休めない。


ガキィン!キン!キン!


「ガッハッハッ!!フルダイブシステム最高だぜえ!

このスピード感、たまらねえ!」


「よっと、ほっ」


ケイズも後方に押されながらも、剣を受け続ける。


ガキィン!キン!キン!


ガルヴァの連撃は止まらない。


ガキィン!キン!キン!


「お前、なかなか動けるじゃねえか!フルダイブには慣れたと見える

でも、反撃する余裕がなきゃあしょうがねーわなぁ!ヒャッハーッ!」





ガキイィィィン!!!





一振りの剣が盛大に弾き飛ばされ、少し離れた地面に突き刺さった。



 << 戦闘離脱 Name:ガルヴァ Lv8  >>



「なっ…!?こ、こりゃ、どうなってやがる!?」


弾き飛ばされた剣はガルヴァのものだ。


「ヒャッハー、ってお前それ…、完全にモブフラグだぞ…」


カチン


ケイズは剣を鞘に納める。



「おおっ!今の見たか!?」


「あれが武器飛ばしってやつか。すげー…やるなー、あいつ」


「あんな速い動きできるんだな…」



ギャラリーもどよめく。


「連撃のモーションが…途中でキャンセルされただと…!?ありえねえ!!

俺のモーションイメージは完璧だった…!!」


ガルヴァは地面に膝をつき、遠くに突き刺さった自らの剣を見つめ

驚きの表情を浮かべていた。


「イメージでの連続モーションは

タイミングが一定になるというデメリットがあるんだよ

次はもっとバリエーションを用意する事…



ガキイィィィン!!!



…そこまで言いかけたところで、

ケイズは強く後ろに弾き飛ばされ、危うく体制を崩しかける。


「!?」


ケイズを襲った衝撃は剣撃。

一瞬の判断でとっさに剣を抜き、何とか致命的なダメージを避けた。


どよめき立っていた周囲のギャラリーは、再度静まり返った。



「…なんだこりゃ…まるでヒーラーの剣撃じゃないな…」


ケイズは驚きの表情を浮かべる

剣撃を放ったのは、フェルローデ。もう一人の決闘者。



「…決闘の途中だ」


フェルローデはさらにケイズに切りかかる。


キン!キン!ガキィィン!!


先ほどよりも更に高速な剣での攻防が繰り広げられる。



「何だあの二人!?早すぎすぎるぞ…!?」


「うおー!すげええ!!!やっちまえーー!!」


「一体何者だよあの二人ww」



ギャラリーは一気に声を上げ盛り上がった。

見れば、その人数も増えているようだ。


キン!キン!ガキィィン!!


激しい剣の往来の中、ケイズはフェルローデに話しかける。


「う、すごいな、モーションがまるで読めない……いや、

ちょ、ちょっと待て待て…!俺はキミと闘うつもりはない!」


「乱入を仕掛けてきたのは、貴様だ」


フェルローデは休む間もなく剣撃を放つ。


「いやさ、なんか絡まれてるふうに見えたから…

第一、その装備だって普通ならまともに戦える装備じゃないし

…いや、余計なお世話だったか…」


「ああ、その通りだ…!!」


ガキィィン!!


剣と剣がはじき合い、両者はいったん距離をあける。



「あっぶな…。危うく武器飛ばされるところだった…」

ケイズは手に強い痺れを感じていた。


(しかしこの速さは一体なんだ…?レベルは下のはずだ、

いや、何より初期設定でヒーラーを選んだのなら、身体能力で大幅に劣っているはず…)


「はああぁぁぁぁっ…!」


ザッ!!ガキン!!


フェルローデはさらに切りかかる。

二人はさらに激しい剣の打ち合いを始めた。




「…な、なんだこりゃ…あの二人…どうなってやがんだよ…」


腰をおとし、呆然と二人の戦いを見つめるガルヴァ。


「チッ…なんでも闇雲に首を突っ込もうとするのは、あいつの悪い癖だ…」


人だかりに入ってきたザリアがボソリと呟く。


「!…お、お前あいつのパーティーかよ!?」


「…ああ」


ザリアは一瞬眉をひそめ、二人の戦いから視線を外さずに応える。


ガルヴァは、ザリアのプレイヤーネームを見たところで、

何か引っかかるものを感じた。


「…ザリア…ケイズ…ん…?まてよ…そういや、聞いたことあんぞ…

その見た目にもなんだか見覚えあるな……」


「……」




「あーーーーーっ!!!

ここっこっこっこっこっこっここコココ…黒龍の剣ザリア!!!


ちょちょちょ、あっちは不死の雷光ケイズかよ!!!嘘だろ!?」


「…」


ザリアは、少し鬱陶しいという表情を浮かべ、返答を返さない。


「すげぇ!本物かよ!?やっぱ新作もやってたんだな!

しかも「クルセイドノーツ」のギルマス、あの不死の雷光と一緒ってどういう事だよ!

まさか二人につながりがあったなんてな、なんつうメンツだよw」


「…あまり騒ぐな。前作の話だ。今はお前たちと何も変わらん。」


ザリアは、いよいよ鬱陶しいという表情だ。


「俺、前作から参入なんだがよ、あんたのファンなんだ!

いつかあんたに勝ちたいと思ってな!

天空城トーナメントの決勝も見てたぜ!俺は今でも思ってる、あれはあんたの勝…


言葉を遮るように、ザリアは鋭い眼光をガルヴァに向けた。


「!…す、すまねえ…

でもよ、嬉しいぜ、前作の有名人と会えるなんてなぁ!」




ガキィィン!!


ケイズとフェルローデの戦いは、いまだ続いている。


「おいおい、なかなか決着つかないな」


「いや、よく見ると女の方が終始攻めてる。優勢だ」


「!!…まじかよ!確かLv6だったよな、

しかもヒーラー装備だぜ…どうなってんだ!?」





「ハァハァ…だから落ち着けって。俺は最初から戦う気は…!」


ガンガン!キン!


「問答無用…!」


フェルローデは容赦なくケイズを責めたてる。


(まずいな、いよいよスタミナが切れてきた。

素早さは互角、おそらく腕力の値はこちらが上…、

じゃあ一体何がこの重たい剣を生んでいる…!?

きっとパラメーターの類じゃない…とすれば、一体何だ!?)


「はああああぁぁぁぁ!!」


ガンガン!キン!ガキィィン!!


いよいよフェルローデがラッシュをかける。


「グッ…!!!

しかしさっきからいやに気合が乗ってるな、

大事なのはイメージだぞ。何もそんなに力まなくても…!」


ガンガン!キン!ガキィィン!!


「…よく喋る。力の使い方もわからない男が…!!」


(力の使い方…?)


ガンガン!キン!ガキィィン!!


ザッ!


「ぐっ!?」


ついにフェルローデの一撃がケイズを捉える。

ケイズのライフは敗北判定ギリギリのラインだ。


「すげー!あのヒーラー勝っちまうぞ!!」


「やれやれー!そのまま倒せー!」


一段と盛り上がるギャラリー。

その中で、ザリアも何かを思案しながら見入っていた。


「ほう…。これは興味深い…案外良いものが見られたかもしれん…」




「ハハ……そうか、そういう事か…」


満身創痍のケイズが小さくつぶやく。

もはや、そう何撃も攻撃を繰り出すスタミナは残っていない。


フェルローデが剣を構え、走り出す。


「終わりだっ!!はぁぁぁぁぁぁっ!!」




ガキィィィィィィン!!!!




その場にいる全員が、息をのんで括目する中、剣が一つ、高く宙を舞った。


システムによるアナウンスが流れる。



 <<  Winner!! Name:ケイズ Lv8  >>






バトルシーン難しいなぁ。素人なりに悪戦苦闘…。

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