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夢のようなハロウィン魔女

今回もトリを務めさせていただきます、狂風師です。


ハロウィンといえばカボチャ。カボチャといえば魔女。

という短絡的な思考で書き上げたものです。

では、内容スッカラカンの微コメディをお楽しみください。


キーワード:「微コメディ」「魔女」「カボチャパンツ」「会話文多め」

友人「3…」


俺「2!」


友人「1…」


俺&少女「ハロウィーン!」


俺「いぇーい!」


少女「いぇーい!!」


友人「…」


 軽やかに両手ハイタッチ!


 友人と二人きりの、とても楽しいハロウィン。


 これから24時間、決して寝かせないぜ!


俺「ではまずお菓子を食べよう!」


少女「お菓子!」


俺「お菓子好きか? たくさんあるぜ!」


少女「お菓子すきー!」


友人「…」


 おや? 友人はあまり楽しくなさそうだ。


 なぜだ?


 ああ、分かった。


 きっと、楽しすぎて気持ちが悪いんだな。


俺「安心しろ。まだ始まったばかりだからな、ハロウィンは」


少女「はっぴー はろうぃん!」


友人「いや、違和感なく混じってるようだが、その子は誰だ」


 俺と友人の間で、袋からお菓子を取り出してかじっている少女いる。


 黒い魔女の帽子に、パンプキン色のかぼちゃパンツ。


 ダークグリーンの瞳に金髪の髪。


俺「だ、誰だこの子は!?」


少女「私はオリグレンス・ナギドット・ニレンサー!」


友人「オ…何?」


俺「オ、オリグレンス・ナギドット・ニレンサーだって!?」


友人「いや、何で言えるんだよ」


俺「略してナギだ」


友人「お前、適応能力高すぎだろ」


ナギ「お菓子あげるからイタズラさせろー」


俺「お菓子ならたくさんあるぞ! 好きなだけ食うがいい!」


友人「騒ぐな。時間を考えろ」


 現在時刻、午前0時。


 外は真っ暗で、他の部屋からの騒ぎ声は聞こえない。


俺「パーティーやんないの?」


友人「こんな時間にやる奴は少ないだろうな」


 すでに床は菓子のカスと空き袋で汚れていた。


 小さな体のどこに入るのだろうかというほど、尋常ではない速さで食べていく。


 このペースだと、朝までには買っておいた分は無くなってしまいそうだ。


俺「買い足すぜぇ! 3食菓子だぜ!」


ナギ「お菓子、お菓子!」


友人「…」




 そんなテンションのまま、朝日がこんにちは。


 朝なのに「こんちには」とは、これ如何に。


俺「やばい…気持ち悪い…」


友人「そりゃ一睡もしてないし」


ナギ「ほら魔法! 魔法!」


友人「こんな魔法使いが現れたんじゃ…」


 現代に魔法使い。


 こんな不思議な事が起こるものなのだろうか。


 夢。


 そう。夢として片付けるのが最も適当だ。


ナギ「魔法使いじゃなくて魔女!」


 突然、ライターほどの火が友人の前髪を焦がした。


友人「おいっ!」


俺「あー…もうダメだわ…。一旦…吐くわ…」


友人「やめろ! ここはお前の家だけど、それはやめろ!」


ナギ「次も魔法使いって言ったら、もっと強い炎出すんだから!」


友人「殺す気か!」


 ベッドに力なく座って目を瞑り、腹の調子が治まるのを待つ。


 その間に友人はナギに質問をしているようだ。


 だが今は、それどころではない。


 口を開けば出そうなほどヤバいところにいる。


友人「…それで、お前は何なんだ」


ナギ「魔女!」


友人「なんで魔女がいるんだ…?」


ナギ「イタズラするぞー」


友人「質問に答えろ」


 質疑応答の時間は9時ごろまで続いた。


 途中で口を挟もうと思ったのだが、吐き気には波がある。


 口を開けて喋れそうになっても、再び大波がやって来る。


 そういう場合は、また力なく、燃え尽きたように俯く。





友人「昼飯は米を食う」


ナギ「お菓子を食えー」


俺「あー…俺パス…」


 レンジが働く音と、新たに菓子の袋を開ける音が聞こえる。


 一応俺も腹は空いているはずなのに、食欲がない。


 原因は分かっているのだが。


ナギ「大丈夫?」


 俺の茶碗の上には温められた米が。


 さらにその上に、大量の甘いチョコレート菓子。


俺「…」


ナギ「食べないの?」


俺「食べない」


ナギ「だって魚嫌いなんだもん!」


 友人を見ると、すでに調理されている焼き魚をレンジから取り出していた。


 俺は菓子だけ買ったつもりだったのに、いつの間に。


 魚に米か。


 いいな…。


 菓子は食い飽きた気がしてきた。


ナギ「食べて、食べて!」


俺「いや、これはさすがに…」


 友人に出すヘルプサイン。


 が、テーブルに座った友人は、一切こちらを見ようとしない。


俺「…ナギは魔法が使えるんだよな?」


ナギ「使えるよ!」


 友人に向かって手を伸ばすナギ。


 止める事もできたのだが、なんかいろいろ面倒だった。


 助けてくれなかったしな。


 突如、火を上げ始める机の上。


 吐き気が吹き飛びそうなほど驚いたが、大した火ではなかったため放置。


友人「…」


ナギ「魚嫌い!」


友人「まだ一口も食ってないのだが」


 どうやら燃えたのは焼き魚のようだ。


 俺には関係ないな。


友人「…その体、十分に罰を受けることは出来るよな」


ナギ「何言ってるか分かんなーい」


友人「こういう事だよ!」


 ナギに向かって飛びつこうとした友人だったが、簡単に避けられてしまっている。


俺「まぁ、これ食って落ち着けよ」


友人「食えるか! こんなもん!」


ナギ「…」


 あ、何かヤバい空気。


 今にも泣きそうなナギの顔。


 これはこれで…イケる気がする。


 じゃなくて、俺は…悪くないはずだ。


 友人は困り果てた顔で俺にヘルプサインを出してきた。


 …助けてやるとでも?


ナギ「食べれるもん…。おいしいもん…」


友人「…」


 さっきまで軽かったはずの空気が一変、重力が増えてしまったのだろうか。


 これはもうアレだ。食うしかない。


 「頑張れよ」と友人に囁いて助け舟を出してやり、物を食べるジェスチャー。


 さぁ、もう逃げ場はないぞ。


友人「…」


 手が震えているぞ、友よ。


 すっかり溶けてしまったチョコレートは、中身を露わにしている。


 これ以上時間はかけられない。


 飯的な意味でも、空気的な意味でも、ナギの限界値的にも。


 食え。早くそれを食べて、片付けてしまえ。


 どこかこの状況を楽しんでいる自分がいた。


友人「…ウマい! すごくおいしい!」


ナギ「ホント…?」


友人「ああ、今まで食った中で一番ウマい料理だよ!」


 まぶたが痙攣しているぞ。


 相当マズいのだろう。


 食べなくてよかった。


 そもそも「ホント」っていうことは、おいしいかどうか分かってなかったんじゃ…。


 まぁ二人の仲はこれで保たれただろう。





俺「再び聞こう。なんで魔女がうちに?」


 昼食は終わらされ、友人はダウン中。


 何も食べてない俺と、お菓子しか食べてないナギだけが生き残り。


ナギ「ハロウィンだから!」


俺「もう何回もハロウィンを過ごしてきたが、こんな事は初めてだ」


ナギ「ハロウィンだからだよ!」


 全く話が通じていない。


 これ以上どうしろというのだろうか。


 俺には分からない。


俺「楽しければそれでいいか」


ナギ「お菓子あげるからイタズラさせろー♪」


俺「イタズラはもうお腹いっぱいだよ…」


 予定していた友人の二人きりハロウィン企画は、残り10時間となった。


 とんだ妨害で、かなり長く感じてしまうが。


 その友人は眠ってしまったようだ。


 おかげでソファーが使えない。


俺「…どこから来たの?」


ナギ「魔女の国!」


俺「魔女の国?」


ナギ「魔女がいっぱい住んでる国なの!」


俺「へぇ…」


 どうしよう。あんまり興味がなかった…。


俺「…一緒に寝ない?」


ナギ「やだー」


俺「もう24時間以上起きてるんだよね…眠くって…」


ナギ「…」


 やばい。泣かせるわけにはいかない。


 だが眠たい。


 これを一気に解決する方法は…。


俺「寒くない?」


ナギ「寒くない!」


俺「そうですか…」


 どうしよう。


 スリープモードになりつつある頭では、これ以上考えることが出来ない。


俺「一緒に寝てくれたら、あとでお菓子買ってあげる」


 どこの変質者だ、俺は。


 まるで子供を誘拐しているみたいじゃないか。


ナギ「分かった!」


 帽子を脱ぎ、すでに用意しておいた布団に潜りこみ始めた。


 方法は少し危ない気がするが、結果が良ければ何だっていい。


 とにかく今は眠いんだ。


 後の事は、後から考えよう。


 もちろん、すぐに眠りに落ちた。






友人「おい、起きろって」


俺「…求婚か? やめろよ…男同士だろ…」


友人「これ見て目覚ませ」


 一枚の紙。


 これが何だというのだろう。


 ボケろってことなのか?


俺「…離婚届か?」


友人「いいから読め」


 『2人とも寝ていたので、手紙を残しておきます。


  今日は楽しかったです。お菓子ありがとう。


  時間になっちゃうので帰らないといけません。


  また来年会おうね。 オリグレンス・ナギドット・ニレンサーより』


俺「…」


友人「…」


 起きた時間は11月1日。午前1時過ぎ。


 10時間近く寝ていたことになる。


 夢のようなハロウィンは、また来年やって来るらしい。


 今度は、きちんと祝ってあげよう。


 あいつの好きなお菓子をたくさん買って。

本当は恋愛系になる予定でしたが、これはこれでいいか、と路線変更しました。

これも続編に繋がりそうな、そんな予感。


魔女の名前は「友人K」より頂きました。

何やら考えがあって、この名前にしたそうですが…。

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